女優の沢尻エリカさんが11月16日東京都内の自宅で合成麻薬MDMAを所持したとして、麻薬取締法違反容疑で逮捕され、情報バラエティーなどで大きく取り上げられている。

TBSは逮捕後、独自映像として逮捕前日の沢尻さんの姿を放映。ネットでは「なぜ前日に自宅前で張ることが出来たのか」という疑問の声も上がっている。

●「捜査機関側は、地方公務員法違反」

芸能人の地位向上を目指す団体「日本エンターテイナーライツ協会」ERAの共同代表を務める望月宣武弁護士は、次のように指摘する。

「逮捕前の行動について詳細に取材が入っており、逮捕に向けた動きがマスコミに漏れていた可能性がある。これは現場の記者が頑張って調べた結果として獲得したというものではなく、捜査機関からの積極的な漏えいがあったという疑念が強い」

加えて、逮捕後も供述内容が報道されていることについて、望月弁護士は「逮捕直前の映像よりも、供述内容が漏れているほうがより深刻」という。

「逮捕前の行動は偶然に撮れる場合もあるし、公の場での行動なら、プライバシー侵害の程度も低い。しかし、供述内容については捜査機関しか知り得ないものであり、刑事訴訟法上の被疑者の権利を侵害している。逮捕に向けた動きや供述内容を漏らした捜査機関側は、地方公務員法違反(守秘義務違反)にあたる」

●「捜査機関も高を括ってどんどん漏らしている」

こうした捜査情報の漏えいは、なぜ起きるのか。望月弁護士は「具体的に誰が漏らしたのか特定ができないため、地方公務員法違反で刑事告発しても、立件される可能性は低い。だからこそ、捜査機関も高を括ってどんどん漏らしているのが実態だ」とよむ。

大麻取締法違反の罪に問われ、有罪判決をうけた「KAT-TUN」の元メンバー、田口淳之介さんと小嶺麗奈さんの件では、厚生労働省関東信越厚生局麻薬取締部が、2人の自宅を捜索した際の映像をテレビ番組制作会社に提供していたことが判明している。

小嶺さんの弁護人をつとめた望月弁護士は、国家公務員法違反(守秘義務違反)の罪で、担当課長ら2人に対する告発状を東京地検特捜部に提出。マスコミが撮影した映像ではない点でより悪質性が高く、映像の提供ルートが特定可能だったため、刑事告発に踏み切ったという。

「マスコミにとって、逮捕前の行動の映像は特ダネであり、飛びつくのは理解できる。しかし、捜査機関から撒かれたネタに飛びついてばかりでは、逆に捜査機関に批判的な報道はできなくなる。ジャーナリズムを掲げるマスコミとして、その矜持に照らし、そのような報道姿勢でいいのかと問いたい」

沢尻さん逮捕、過熱する報道 「警察からの積極的な漏えい」を問題視する声