ピジョン株式会社(本社:東京都、社長:北澤 憲政)は、一般社団法人 日本母乳バンク協会(代表理事:水野 克己)の早く小さく生まれた赤ちゃんの健やかな成長を支える活動に賛同し、日本における母乳バンクの普及のため、積極的に活動を支援していきます。その1つとして、2020年春、国内2拠点目となる「東日本橋 母乳バンク」のピジョン本社での開設をサポートします。

当施設では、年間200人以上の赤ちゃんに提供できる量の母乳を扱う計画です。母乳バンクの運営は日本母乳バンク協会が行い、ドナー登録は日本母乳バンク協会のHPから申し込みいただけます。ドナーの募集は2020年7月以降から開始する予定です。

東日本橋母乳バンクの完成イメージ


■母乳バンクとは

母乳バンクでの作業イメージ
母乳を必要な早産・極低出生体重児(出生体重1,500g未満の赤ちゃん)が自分の母親から母乳を得られない場合に、寄付された母乳を処理した「ドナーミルク」を提供する施設が「母乳バンク」です。施設では、国際的な運用基準に基づき、寄付された母乳の検査や低温殺菌処理を行い、安全に保管、保存することが求められます。また、ドナーミルクは赤ちゃんの医学的な必要性に応じて利用すべきという考えに基づき、無償で提供されています。国内では、2018年からドナーミルクを利用するNICU(新生児集中治療室)の施設が増加しており、国内の需要に見合うだけの母乳バンクの整備と経済的サポートが必要とされています※1。 ■母乳・ドナーミルクはなぜ必要なのか
母乳には、赤ちゃんにとって必要な栄養素がバランスよく、消化しやすい形で含まれており「最適な栄養食」と言われます。特に、様々な感染症、病気に罹るリスクが高い早産児においては、「母乳は薬」とも言われ、母乳には、赤ちゃんの生死にかかわる壊死性腸炎(腸の一部が壊死する病気)に罹患するリスクを、人工乳に比べ、およそ1/3に低下させる効果があることがわかっています※2。また、早産児が罹りやすい未熟児網膜症や慢性肺疾患などの予防に役立つ物質が含まれているほか※3・4、長期的な神経発達予後を改善する効果についてのエビデンスも出てきています※5・6。しかし、全ての母親が、出産直後から充分な母乳が出るわけではなく、早産となった場合には、必要量の母乳を母親が与えられないこともあります。そのような際に、ドナーミルクを提供することで、上記のような疾患の罹患率と重症度を低下させ、長期的予後の改善を図ることができます。

■世界の母乳バンクの現状と日本における母乳バンクの課題
2002年にWHO(世界保健機構)より「母親の母乳が得られない場合は、ドナーミルクが第一選択である」と推奨されたことをきっかけに、今では世界50カ国以上で600カ所を超える母乳バンクが開設されています。日本では、2017 年に一般社団法人 日本母乳バンク協会が設立され、現在日本に唯一の昭和大学江東豊洲病院内の母乳バンクでは、2018年9月から2019年8月までの1年間において80 例に対応しました。しかし、日本においてドナーミルクが必要な赤ちゃんは年間3,000人と想定され、施設が圧倒的に不足しているのが現状です。一方で、2019年7月には、日本小児医療保健協議会栄養委員会から「自母乳が不足する場合や得られない場合、次の選択肢は認可された母乳バンクで低温殺菌されたドナーミルクである」との提言が出され、母乳バンクの普及が期待されています。

【参考資料】
※1 日本小児科学会雑誌 第123巻 第7号 日本小児医療保健協議会栄養委員会 早産・極低出生体重児の経腸栄養に関する提言
※2 Quigley MA. Henderson G. Anthony MY. et al. Formula milk versus donor breast milk for feeding preterm or low birth weight infants. Cochrane Database Syst Rev. 2007; (4):CD002971.
※3 Patel AL et al. Influence of own mother's milk on bronchopulmonary dysplasia and costs. Arch Dis Child Fetal Neonat Ed. 2017;102(3):F256-F261.
※4 Zhou J et al. Human milk feeding as a protective factor for retinopathy of prematurity: a meta-analysis. Pediatrics. 2015;136(6):e1576-1586.
※5 Lewandowski AJ et al. Breast milk consumption in preterm neonates and cardiac shape in adulthood. Pediatrics. 2016;138(1):pii:e20160050.※6 Vohr BR et al. Beneficial effects of breast milk in the neonatal intensive care unit on the developmental outcome of extremely low birth weight infants at 18 months of age. Pediatrics. 2006;118(1):e115-123.

■赤ちゃんにドナーミルクが届くまでの流れ
赤ちゃんに母乳が届くまでの流れ

■母乳バンク協会概要

日本母乳バンク協会は、日本の新生児医療において「母乳」の活用を促進することを主な目的として2017年5月に設立された一般社団法人です。本協会は「母乳提供者の善意」を基盤に、以下を主な内容として活動をされています。

・提供者の健康チェック
・提供母乳の各種検査(血液検査によるスクリーニング検査を含む)
・提供母乳の安全な保管、保存、その方法の開発
・低出生体重児への母乳の提供
・低出生体重児の母親への母乳育児支援
・周産期医療における効果的な「母乳活用」の研究
 日本母乳バンク協会URL: https://jhmba.or.jp/

■一般社団法人 日本母乳バンク協会 代表理事 水野克巳先生のコメント
2017年5月に一般社団法人日本母乳バンク協会を設立し、2年半が経過しました。ドナー登録に申し込みいただいた方は200名を超えました。しかし、残念ながら、ドナー登録のための母乳提供者の面接場所が限定されていること、また現在の豊洲バンク(昭和大学江東豊洲病院)のキャパシティが小さいため、一部の方のドナーミルクのご提供をお断りせざるを得ませんでした。せっかく小さな赤ちゃんたちのために役立ちたいと思ってくださったのに、申し訳ない気持ちでいっぱいでした。今、少しずつドナー登録のための面接を担当してくださる施設が増えてきました。今回開設する「東日本橋母乳バンク」が今までの3倍のキャパシティで運用できるようになれば、お母さま方の善意の母乳をより多くの小さな赤ちゃんに届けられると期待しています。お母さまの母乳が赤ちゃんにとって一番大切な栄養であることは言うまでもありません。もしもお母さまが頑張っても十分な母乳が出なかったとき、セカンドベストは認可された母乳バンクから提供するドナーミルクです。これから日本で活躍していく赤ちゃんたちが“よりよい人生のスタート”を切れるよう、この活動を発展させていく所存です。
水野克巳医師
一般社団法人 日本母乳バンク協会 代表理事
昭和大学医学部 小児科学講座小児科学部門 教授
公益社団法人 日本小児科学会 理事

配信元企業:ピジョン株式会社

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