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 地球の生命は35億年以上の間繁栄し続け、多様な生態系を築き上げてきた。だが、生命が爆発的に誕生する裏で、絶滅が起きていたことも事実だ。

 このふたつの現象はいつも同じペースで起きていたわけではなく、種の絶滅が新しい種の誕生を大幅に上回ったとき、両者のバランスは著しく崩れる。

 これが「大量絶滅」と呼ばれる現象である。

 厳密に言うと大量絶滅は、地質学的な短期間において地球全体に存在する全種の約4分の3以上が絶滅することを指す。この文脈での ”短期間” とは280万年未満のことだ。

 さまざまな生物が爆発的に誕生した5億4000万年前から始まるカンブリア紀以降、こうした意味での大量絶滅はこれまで5度しか発生していない。

 いわゆる「ビッグファイブ」と呼ばれるこれらの大量絶滅は、はたして私たちが今6度目の大量絶滅の時代を生きているのかどうか判断するための基準となる。

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約1億年ごとに発生している5度の大量絶滅「ビッグファイブ」

 5度の大量絶滅はカンブリア紀以降、だいたい1億年ごとに発生しており、いずれの場合も5万~276万年続いた。

 最初の大量絶滅は4億4300万年前のオルドビス紀に生じたもので、当時地球上に存在していた全種の85パーセントが姿を消した。

 その原因は地球全体が氷河期を迎え、次いで急速に温暖化したことであるようだ。

 2度目は、3億7400万年前のデボン紀後期のもの。74パーセントが絶滅したが、その大半は熱帯の海底で暮らす無脊椎動物だった。

 この時期の地球は海面の高さが大きく変動し、寒冷化と温暖化が交互に急激に起きたという特徴がある。

 また植物が乾燥した陸地に進出し始めた時期でもあり、二酸化炭素濃度の世界的な低下が見られる。これらによって土壌が変化し、酸素も減少した。

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化石は先史時代の絶滅率を推定するのに役立つのだという
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破壊的な3度目の大量絶滅、そして恐竜を一掃した5度目へ


 3度目の大量絶滅はビッグファイブの中でも最も破壊的だった。2億5000万年前のペルム紀末に発生して、当時の生物のじつに95パーセントが絶滅している。

 一説によると小惑星が衝突し、これによって粉塵が舞い上がったことで、生物にとって過酷な気候に変化したことが原因だという。粉塵によって日光が遮られ、激しい酸性雨が降り注いだ可能性もある。

 また別の説は、現代のシベリアで見られるような大規模な火山活動によって大気中の二酸化炭素が増加したり、海底から酸素に乏しい海水が噴出したりしたことで、海の毒性が高まったことが原因だと説明する。

 このペルム紀末の大量絶滅からさらに5000万年後、三畳紀末に4度目の大量絶滅が発生。およそ80パーセントが地球上から消えた。

 おそらく原因は、今日の大西洋のような巨大な地質活動によって大気中の二酸化炭素が増加し、気温の上昇や海洋の酸性化が生じたことだ。

 最後の、そしてきっと一番有名であろう大量絶滅は白亜紀末に起きたもの。全種の76パーセントが絶滅したが、そこにはあの恐竜が含まれている。

 しかし巨大な捕食者の退場は哺乳類にとっては進出のチャンスとなり、ここからやがて私たち人間も進化することになった。

 5度目の大量絶滅の最も有力な原因としては、メキシコユカタン半島に落ちた隕石、インド西部に広がるデカン高原での火山活動、あるいはそれらの組み合わせが挙げられている。

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予測されるよりも速く絶滅が進行中か?


 オックスフォード大学のフューチャーオブヒューマニティインスティテュートの研究者は6度目の大量絶滅の時期を試算した。

 地球上では今、主に人間の活動によって数多くの生物が絶滅している。だがこれを6度目の大量絶滅と言うには、現在の絶滅スピードが大量絶滅のときのように背景絶滅率を凌駕するものでなければならない。

 背景絶滅率とは、人間がいなかった場合に種の絶滅がどのくらいの速さで進むのかということで、化石を調べ、大量絶滅と大量絶滅の間に絶滅した種の数を数えることで割り出す。

 最も有力な推定値によれば、種の寿命はおよそ100万年であるとされる。つまり100万年ごとに1種が絶滅するということだ。

 ただしこの値ははなはだ不確実なもので、100万年に0.1種から2種まで幅がある。現在が6度目の大量絶滅であるかどうかは、この範囲にもよる。

 過去のビッグファイブとは違い、現在起きている種の絶滅は生息地の破壊・細分化、漁業・狩猟、化学物質による汚染、侵入種の拡散、人為的温暖化など、人間の直接的・間接的活動によって引き起こされていると考えられている。

 これらによる絶滅を100万年単位の絶滅率に換算するなら、背景絶滅率の10~10000倍も高い。

 100万年に2種という保守的な背景絶滅率で考えたとしても、前世紀中に絶滅した種の数は普通なら800年から1万年はかかったはずのものだ。

 このことだけでも、今の地球では背景絶滅率から予測されるよりもずっと速く絶滅が進行しているという説を裏付けることができる。

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1970年以降の50年間で全脊椎動物の6割が喪失したという事実


 通常の進化による多様化によって人類が地球を激変させる前の種の状態に回復させるには、おそらく数百万年はかかることだろう。

 1500年以降、陸上の脊椎動物については322種の絶滅が記録されているが、これは2年に1.2種が消えている計算になる。

 これが大した数に思えないのなら、絶滅の前には必ず個体数の大幅な減少と分布域の縮小が起きることを知っておくといい。

 国際自然保護連合のレッドリストに記載されている脊椎動物生息数の減少記録によると、全生態系およびグループに属する既知の種の32パーセントが個体数も分布域も共に減らしている。

 1970年以降、全脊椎動物の総個体数のじつに60パーセントが失われたのだ。

 状況が特に酷いのオーストラリアだ。5万年前に最初の人類がこの大陸に到達して以来、100種以上の脊椎動物が絶滅し、現時点では動物300種と植物1000種が今すぐにでも絶滅する恐れがあると考えられている。

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ドール(アカオオカミ)も個体数を減らしている種のひとつだ

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 今日の絶滅率が背景絶滅率をどのくらい上回っているのかについては諸説あるが、一番保守的な推定であってすらも大量絶滅に典型的な並外れた生物多様性の喪失を明らかにしている。

 事実、いくつかの研究は、加速する温暖化、産業に起因する大気構成の変化、資源の消費による異常なまでの生態系へのストレスといった状況の相互作用は、絶滅を引き起こす完璧な嵐であると伝えている。

 これらの状況を総じて考えれば、私たちはまさに6度目の大量絶滅の時代を生きていることが指し示されているという。

References:Ifl science / The conversationなど / written by hiroching / edited by usagi

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http://karapaia.com/archives/52284716.html
 

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