(古森 義久:産経新聞ワシントン駐在客員特派員、麗澤大学特別教授)

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 11月13日、米国議会においてトランプ大統領の「ウクライナ疑惑」に関する弾劾公聴会が始まった。弾劾の是非を巡って政府高官が次々に証言したが、公聴会が始まってからトランプ大統領の支持率が上昇するという意外な現象が起きている。

 同時に、一般米国民の間で「主要メディア民主党と一体になり、トランプ大統領を攻撃している」という認識が増えたことを示す世論調査結果も報道された。民主党トランプ大統領攻撃は、図らずも自らを傷つけるブーメランになってしまっているようだ。

皮肉な結果を示した全米世論調査

 大手世論調査機関、米ラスムセンは、11月13日から始まった米国連邦議会下院でのトランプ大統領に対する弾劾調査の公聴会に合わせて、同大統領の支持率を測る世論調査を実施した。

 ラスムセンの発表によると、11月13日トランプ大統領の支持率は46%だったが、公聴会が終わった翌14日は48%へと上昇した。さらに15日は50%、週明けの17日も50%を維持した。

 この間、下院の公聴会では11月13日ケント国務次官補代理(ウクライナ問題担当)とテイラーウクライナ臨時代理大使がそれぞれ証言し、15日にはヨバノビッチ前駐ウクライナ大使が証言した。証言内容は、トランプ大統領に対する批判的な発言が多かった。

 これら公聴会の模様は、全米にテレビで放映された。ラスムセンの世論調査タイミングは、米国の一般国民テレビで公聴会の模様を見たり、その論評などを読んだりした時期に重なる。そのため、調査結果は今回の弾劾公聴会への一般米国民の最初の反応と捉えることができる。

 ラスムセンは数ある米国の世論調査機関のなかで、大統領の支持率、不支持率を週末を除いて毎日調査する唯一の機関である。2年ほど前までは米ギャロップ大統領支持率を毎日調査していたが現在はラスムセン1社となった。調査を継続しているラスムセンが発表する支持率は信頼度が高いと言われ、2016年大統領選挙期間中は、ラスムセンによるトランプ候補やヒラリー・クリントン候補の支持率調査結果が最も正確だったことが明らかにされている。

 そのラスムセンの全米世論調査によって、弾劾で攻められる側のトランプ大統領の支持率が下がらず逆に上がるという皮肉な結果が示されたのだ。

米国民の多数派がメディアに不信感

 1998年には民主党ビル・クリントン大統領に対する弾劾裁判が行われた。その際も、攻める側の共和党が支持率を減らし、次の上下両院議員選挙では大幅に負けたという実例がある。

 米国の一般国民大統領の弾劾を必ずしも好まない。その理由としては、民主主義の究極の執行手段である一般選挙で選んだ大統領を、選挙ではなく「弾劾」で解任する異常事態や手続き自体に抵抗を感じる人が多いからと指摘されている。

 同じラスムセンが11月14日に実施した全米世論調査では、米国民のニュースメディアへの不信も明らかになった。

 調査対象となった米国の有権者のうち53%が弾劾調査に関して「各メディアのほとんどの記者たちは、民主党側によるトランプ大統領弾劾を支援する報道をしていると思う」と答えた。「記者たちは単に事実を報道しているだけだと思う」と答えた有権者は32%に過ぎず、米国民の多数派がメディアへの不信感を抱いていることが改めて明らかとなった。

 ちなみに「ほとんどの記者たちは民主党支援の報道をしている」と答えた人は共和党支持者のなかでは76%、民主党支持者では36%、無党派層では48%だったという。

 同じ調査では、有権者の86%が「下院での弾劾調査についての報道を詳しく追っている」と答え、一般国民の弾劾への関心の高さを裏づけた。しかし、その関心の高さが必ずしもトランプ大統領への批判とはなっていない流れが、今回の世論調査結果で示されたというわけだ。

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米下院公聴会で証言したヨバノビッチ前駐ウクライナ大使(2019年11月15日、写真:AP/アフロ)