高山本店の高山肇さんにご紹介いただいたのは、古書センター2階の「夢野書店」だ。

もともと2階には40年以上「中野書店漫画部」が店を構えていたが、その後2015年から、そこに勤めていた西山友和さんが店主となり、後を継ぐ形で「夢野書店」を立ち上げた。取り扱うのは、主に漫画雑誌や単行本、関連書籍やグッズだ。

カラフルで心躍る店内はまるで子どもの夢

古書センターの階段を登ると、たくさんの漫画本やグッズが所狭しと並ぶ、賑やかな空間がひろがる。最初に目に入るガラスケースの中には手塚治虫作品の美しい古書が宝物のように大切に飾られている。

さらに足を進めると、天井までギッチリと漫画本が詰まった棚が立ち並ぶ。少女漫画、少年漫画、漫画雑誌アニメや漫画の解説本。壁にはセル画やポスターがあちこちに貼られ、天井まで見飽きることはない。

取り扱われる商品の時代は幅広く、昭和初期のものから最近のものまでが混ざり合っている。グッズも豊富で、どれもきのうまで子どもが大切に使っていたような、美しい状態のものばかりだ。

古書店といえども「新しい出会い」を期待せずにいられなくなる、店名に違わぬ夢のような店内の様子である。

サラリーマンが真剣な表情で探す一冊は......

本を探して棚とにらめっこをするお客さんは、男性サラリーマンが多い。取材中にも、多くを見かけた。背広をキッチリ着て、大人の装いをしているが、漫画を探す表情は子どものように真剣なのだ。

誰もが子どもの頃に戻ったような、純粋な物欲をかき立てられる。夢野書店で販売されているのは、消費する娯楽としての商品ではなく、「モノ」として価値のある品ばかり。世代を超えて、読者を楽しませ続けた漫画本の息吹を感じることができる。

たくさんの本の山の中から、お目当ての本や探し求めていた一冊を、まさに「発掘」する楽しさがある。

「テーマパーク」のような本屋さん

店主の西山さんは若い頃から中野書店に勤め、たまたま漫画部に配属されたことからその面白さに引き込まれたと言う。パソコンのない頃はワープロを駆使。その後のネット販売との付き合い方にも格闘した。中野書店での試行錯誤が、夢野書店にも活かされている。

「昔なじみのお客さんも多く、その人たちにとっての懐かしさを大事にするように心がけている。一方で、若いお客さんは昔の漫画を手にすることで、学びや発見があるはず。そういった出会いの手助けができれば」

と、西山さんは話す。

店内のレイアウトには日々頭を悩ませるそうだ。

「入っただけで楽しめるような、テーマパークのような空間を目指したい。けれどごちゃごちゃさせるのも見づらいし、今は分類分けの目印をどうわかりやすくするか考えている」

雑誌のコーナーには天井から吹き出しの形をしたプレートが下がり、「あ雑誌だ」とある。このようなお茶目な工夫は、お客さんを楽しませたい西山さんならではの発想だろう。

夢野書店は、漫画やグッズが人の手から人の手へ移る、中間地点だ。西山さんは、そのことを楽しんでいるようであった。

「綺麗な本、珍しい本との出会いがうれしいのはもちろんだが、持ちこんでくれたお客さんのエピソードを聞くのはとても楽しい。漫画は幼少期に触れることがほとんどなので、お客さんも自然と頬を緩めて『昔、おじさんからもらってね』『父親のおみやげで』と、懐かしそうに話してくれる。そういった話を聞くと、一冊の漫画に重みを感じると言うか、大切に売りたいなと思える。大切に扱ってくれるお客さんに引き渡したい、って思うんですよ」

ガラスケースから出して紹介してくれたのは、水木しげる著「化烏」(桜井文庫1、昭和50年・東考社)。西山さんは、「個人的に好きな作品。不気味さと虚しさの表現がなんとも面白く、新鮮な驚きがある」と、選んだ理由を話す。復刻版は出回っているが、状態のよい文庫版は、古書としても人気が高いそうだ。

こちらは平積みの一冊。巨匠・手塚治虫が絶賛したとされるものの、若くして結核で亡くなった漫画家、河島光広著(1961年7月号以降は矢島利一作画)の「ビリーパック」(少年画報 昭和36年12月号~同37年7月号より復刻)だ。手塚治虫アメコミの影響が色濃く見られる本作は、そのクオリティの高さに今でも根強いファンが多いそうだ。(なかざわ とも)

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