働き方改革が声高に叫ばれるなか、日本の悪しき風習として「長時間の会議」「無駄な会議」が指摘されるようになった。ところが実は外資の会議もやたらと長いことをご存知だろうか。

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「グローバルスタンダードとは何か」を自身が作ったビジネスコミュニティ「人財アジア」で発信し続けているUBSアセットマネジメントの元社長、岡村進氏は、00年代後半を外資の金融機関で過ごし、リーマンショック時は経営者として辣腕を振るった。そんな岡村氏が説く外資流「会議」の作法とは――。

日本の宴会、外資のカラオケ

 日本企業に勤め始めた新人時代、親睦を深めるための宴会やら宿泊付き忘年会とやらが大の苦手だった。元々の性格に加えて、酒が弱かったので、そのノリについていくのにはエネルギーが必要だった。隙あらば、早く家に帰る機会を窺っていた。今の若手の気持ちはとてもよく分かるつもりだ。

 だが、バブルが弾けて以降、様相は一変した。コストカットニーズや、昨今はコンプライアンスの強化により、みなで集まり懇親する機会は大幅に減った。かつては夜の会合でならした商社ですら、二次会禁止との声も聞く。

 さて私が10年以上前に外資に入ってみて驚いたのは、熱海のホテルに一泊しながらの合宿会議だ。朝から晩まで翌年度の事業計画や新規プロジェクトアイデアを求めて議論し続ける。その後は、夜がふけるまで外国人も交じってカラオケ大会だ。まさかグローバル企業に来てバブル時代の日本の狂宴を繰り返すことになるとは思わなかった。

 リーマンショック後に予算の締め付けが厳しくなったものの、異なる環境にて徹底して議論することに、いまだ大きな価値をおいている。

 会議の仕方にも驚いた。世界各地を繋いでの電話やビデオ会議の時間が結構長いのだ。エグゼクティブの月例会議など、半日近くモニターと向き合うこともあった。

 外国人との長い会議や食事会を苦々しく感じた方も少なくないのではないか?

外資は「結論が決まっている」会議も長い

 参加者に自由に発言させ、首をかしげるような内容でも「なるほど!」と相づちをうったりするものだから、話はさらに長くなる。私も含め、日本人は英語が苦手な人が多い。だから議論が長びくと集中力が落ちてしまい、やりとりについていけなくなりがちだ。

 しかも、さんざん苦労したあげくにたどり着く結論は、多くの賢い日本人からしたら、最初から予想されたような内容だ。英語の分からない腹いせもあって、「みんなで話さなくたって結論は決まってたでしょ。あーあ、無駄な時間だった!」と自分もうそぶいていたものだ。

 しかしだんだん自身の立場があがっていくと、長い会議や合宿開催には、どうも違った目的があるのが見えてくる。必ずしも結論だけを求めているのではないのだ。むしろ侃々諤々の議論をするプロセスにこそ意味があったのだ。

 終身雇用で互いを見知っている日本企業人と異なり、転職文化で寄り集まったグローバル企業では互いを深く知らないケースも多い。だから、長い対話を通じて、相手の性格や考えを確かめる貴重な手段なのだった。合宿も同様だ。

〝あうんの呼吸″を失いつつある日本

 人となりを知った人と仕事をしたいのは、外資も同じ。そう考えるとすべての疑問に合点がいった。

 だから会議で意見を発しない日本人は不利だ。その素性を披露する機会を自ら捨てているわけだ。日本人は何を考えているのかよく分からないと言われるゆえんは会議との向き合い方にあった。余談となるが、関西人の方がグローバルに成功しやすいのではないか?などとふと思ってしまうのだ。

 つまり、実は外資といえども、何も実力だけで人事が決まっているわけではないのである。

 外資に身を置いていると「あの社長は見かけ倒れで中身がない。英語がうまいだけ」とトップを揶揄する若手の声をよく耳にする。「俺の方ができるんだ」と地団駄を踏む若手の気持ちはよく分かる。そんな登用を続ける企業は伸び悩みがちなのも事実だ。しかし、外国人エグゼクティブの立場に立てば、実力うんぬんの前に性格や癖が分かる人に任せたい、という気持ちは、今となれば分からなくはない。

 一方でこんな人間組織の本質的なコミュニケーションが置き去りになりかねないのが今の日本企業のような気がしている。

 本来、日本企業は、同期会やセクション内での議論や飲み会を重ねるなどして、互いを知り尽くした仲間と仕事するのが強みのはずだった。それはしばしば〝あうんの呼吸″と呼ばれ、「あれ、お願い」と一言でも発すれば、以心伝心されるという驚くべきコミュニケーションが成立していたのだった。ところが昨今、この〝強み″が著しく後退しているように見受けられる。

 自分をさらけださない若者、「パワハラになりかねない」という、コンプライアンス呪縛でつっこんだ質問をできない上司。中途採用が増え、外国人への依存度も高まっている。今、日本組織には、強さの象徴だった〝あうんの呼吸″なき後のコミュニケーションの仕組み作りが急務なのだ。

 そんなときに混成部隊で長年戦ってきた欧米企業からヒントが得られるはずだ。

 なかでも会議の持ち方にフォーカスしたい。

働き方改革を成功に導く「2つの会議」

 働き方改革真っ只中の日本では、時短のプレッシャーの強さのあまり、相手の真意が分からぬまま仕事を進めてしまっているように見える。

 企業のなかには、会議時間短縮のためにストップウォッチを持ち込むところもある。正直びっくりしたが、確かに会議運営の冗長さを減らすためには効果的なのかも知れない。ただし、本当の勝負はこの後だ。つまり、空いた時間をどう使うかである。

 今の日本企業が直面している課題は、時短ステージを超えて、次の生産性向上局面にある。私が運営している「人財アジア」では、「生産性=効率×効果」と定義している。時短意識は効率を向上させたが、その結果、効果が落ちてしまっては元も子もない。

 2種類の会議を持つべきだ。

 一つは「効率的な運営に徹した会議」。各社だいぶ努力し、慣れて来たのではないか?

 もう一つは、それぞれが思いの丈を語りきれる、「時間の制約をあえて取り払った会議」だ。外資では売上3倍利益5倍にするために「何をすべきか?」などという〝大きな議論″を好む。「前年比○%アップ!」の、号令だけでは生まれない本音の意見が引き出されやすいのだ。

大きな世界観を議論しよう!

 かたや日本人は大きな枠組みで議論することを苦手としている。しかし本音ではみんな現状の仕組みに対して強い不満や意見を抱えているのだ。社員一人ひとりが本音を語れる状態にするのがこれからの会議であり、また本音を引き出せるまでの距離をいかに短くできるかがマネジメントポイントとなる。すべてはそこにかかっているのだ。

 実は、本音を引き出す力と工夫こそがダイバーシティ経営の本質である。なぜならそれぞれが本音の意見を発信できる環境からこそ、思いがけず新規ビジネスが生まれるからなのだ。

 何事も訓練。かつては地に足のついたことだけを考えていた私も、外資で大きく考える強制訓練を受けた後は、新しいアイデアが尽きなくなった。

 日本企業の文化にはあまりなかったこうした素地を作ることに力を割けば、そのリターンは大きい。働き方改革を急ぎたい気持ちは分からないでもないが、今こそ、〝急がば回れ″なのだ。

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