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MacBook Pro 16インチ2019) 筆者撮影

 自動車にはよく「レギュレーション」が意識されます。レースでも、エンジンを決まった排気量で作らなければなりませんし、乗用車だって軽自動車におさまるかどうかは、車のサイズや排気量の基準があります。その中で、動力性能や居住性を競いながら発展していきます。

 今回は、同じようなことが、今後のMacBook Proにも起きていくのではないか、という話です。

●お楽しみは先送り

 前回、MacBook Proの最新/最高峰モデルである16インチキーボードについて触れました。バタフライキーボードも嫌いではなかったのですが、新しいシザーメカニズムのMagic Keyboardはコツをつかむと自然と指が進んでいくような感覚でタイピングできる、ハマればどんどん早くなるタイプキーボードです。

 しかしMacBook Pro 16インチモデルの面白い点は、まだまだ他にもあります。昨今のアップル製品でこだわりが強いオーディオ技術を活用した6スピーカーステレオシステムや、8TBまで搭載することができるSSDストレージなどは、いずれもアップルクリエイターとの対話を通じて吸い上げたニーズだったと言います。

 その一方で、ディスプレーは単純に1インチサイズアップしただけでしたし、内蔵しているアップル独自のT2チップも従来から変更がありませんでした。個人的に注目していた2つの技術だけに、お楽しみは先送り、というところでしょうか。

●新デザイン「排熱」がゴール

 今回のMacBook Pro 16インチは、15インチからボディサイズが拡大しながら、ベゼル(ディスプレー周辺の額縁領域)は上部で25%、両サイドは34%小さくなり、特に左右については、縁なし液晶のLiquid Retinaを標榜するiPad Proよりも狭いベゼルを実現しています。

 ギリギリまで液晶を敷き詰めることで画面サイズの拡大に対してボディサイズの拡大を抑える方法は、スマートフォンタブレット、そしてノートパソコンでも同じ考え方と言えるでしょう。

 しかし内部は大きく変化しました。今回の新デザインの最大のゴールは、サーマルデザイン、つまり排熱性能を高めることにあります。

 コンピュータのプロセッサやグラフィックチップは、処理をする際に発熱します。MacBook Proに限らず、ハイパフォーマンスコンピュータのボディが熱くなってしまったり、パソコンを置いていた机の上に熱が残ったりしていることに気づく方も少なくないはずです。

 処理によって発生する熱によって、実は処理性能が左右されてしまいます。コンピュータ内部の温度が高まることで起きる暴走を防ぐため、処理性能にストップをかける仕組みです。そのため、コンピュータの排熱設計は、コンピュータの性能に直結する重要な要素なのです。

 今回のMacBook Proでは、ヒートシンクサイズを35%拡大させたほか、ファンサイズ拡大と羽を増やすことで空気の流れを28%向上させました。これによって、以前のモデルに比べて、高付加時に12W多くの電力をプロセッサやグラフィックスの処理に充てられるようになりました。

 今後、ますます排熱性能がコンピュータパフォーマンスに関わってくることを考えると、今回の16インチで余裕を持った設計を施すことで、今後さらに競争力をつけていける体制を整えた、といえます。

●リミッターに当たった電源周り

 熱対策に余裕がある一方で、制限にぶつかったのが電源周りです。

 MacBook Proはこれまで、Webブラウジングと動画視聴10時間という基準でバッテリーを搭載してきました。今回のマシンではこの数値は11時間に伸びましたが、サイズの割に重量増加が大きく、170gも重たくなっていました。ディスプレーももちろん大きくなれば重くなりますが、やはりそれ以上にバッテリー増量分の重量が加算された結果とみるべきでしょう。

 そのバッテリーですが、今回の16インチモデルには100Whを搭載しました。この100Whと言う数字は、米国連邦航空局(FAA)が定める、航空機内に持ち込めるバッテリーサイズの上限に当たります。つまり、出張で飛行機に乗る人は、今回のMacBook Pro以上のサイズバッテリーを搭載したマシンを持って行けないことを意味します。まずここが、1つ目の上限です。

 もう1つは給電/充電周りです。MacBook Pro2016年モデルからUSB-Cコネクタを接続する充電アダプタが付属してきました。13インチモデルには61W、15インチモデルには87Wが用いられ、USB-Cケーブルを通じて給電される仕組みでした。

 今回の16インチモデルでは、96Wというさらに大きな容量を持つ充電アダプタへと切り替えられました。ちなみに61Wのものも含め、16インチモデルで利用はできるそうです。ただし充電効率は単純計算2/3になってしまう点は注意が必要です。

 さて、この96Wという数字にもレギュレーションがあります。それはUSB-Cポートを通じた給電/充電はPower Delivery(PD)という規格を用いますが、その上限が100Wと定められています。つまり、アップルUSB-CポートでのUSB-PD規格での充電を続ける限り、基本的にはこの96Wを超える充電器を付属させることは難しそうです。

アップルが考えるMacBook Proモバイル

 電源周りで、バッテリー100Wh、充電アダプタの100Wという2つのレギュレーションが加わったMacBook Pro。今後は、先述の熱設計とこれらの電源周りの制限の中でMacBook Pro 16インチを成長させていくことになります。つまり、IntelAMDのプロセッサ/グラフィックスの進化による性能向上に期待していくということです。

 今後、Intelチップは第10世代への移行で、熱設計次第で引き出すことができるパフォーマンスを左右することになります。また第9世代の段階でも、フル回転状態のターボブーストを持続できる時間の長さという点で、性能に影響を与えています。

 今回のMacBook Pro 16インチが、向こう3〜4年間、どれだけ通用するのか、今から楽しみですね。


アップルMacBook Pro“制限”にぶつかる