19日の衆議院本会議で賛成多数で可決された、日米貿易協定の承認を求める議案。協定では、アメリカから輸入される牛肉や乳製品の一部など農産品にかかる関税をTPP(=環太平洋経済連携協定)並みに引き下げることが盛り込まれている。

 一方で、日本の工業品の関税を引き下げられることも含まれているが、野党側は自動車関税の交渉内容が不平等ではないかと批判。安倍総理は今年9月のアメリカ側との最終合意の際、「両国にとってウィンウィンの合意」と語っていた。しかし、今回の交渉内容について、貿易政策に詳しい明治大学農学部の作山巧教授はこう評価する。

 「私も6年前まで政府で交渉をしていたが、非常にがっかりしている。こういうものをあっさり可決していいんだろうかという疑問がある。畜産分野への影響は非常に大きい。消費者は値段を重視するし、加工食品に使われたり外食に使われたりするものもあるので、国産か輸入かわからないところは多い。“国産を応援します”といっても、それで全部カバーできるわけではない」

 また、「自動車自動車部品については関税撤廃がなされる」という茂木外務大臣の発言について、撤廃の前提がアメリカ側の認識と食い違っていると指摘するのは元経産官僚で中部大学の細川昌彦特任教授。

 「合意文書を読めば、『関税撤廃について今後交渉する』としか書いていない。この文章から、関税撤廃を前提にしているというのは強弁に過ぎない。そんな解釈は、アメリカ側はしていないのは明確。日本政府の答弁は苦しく、国際的に通用しないと思う」

 日米貿易協定が衆議院を通過した19日、インターネット上では「秘密裏にFTA締結が可決された」「国民皆保険制度がなくなる」「これで主権は完全に終わるんだよ」といった、今後の日本を危惧するコメントが相次いだ。FTA交渉によるアメリカ側の要求が強まることを懸念した書き込みのようだが、細川特任教授はまずは目の前の問題に向き合うべきだと強調する。

 「一言で申し上げれば、過剰アレルギーの『FTAお化け』。同じような懸念が7~8年前、TPP交渉に入るかどうかという大議論の時に起こっている。当時、TPP交渉に入れば『アメリカから要求されて日本の国民皆保険が壊滅的打撃を受ける』とかあることないことを指摘する人がいて、みんな過剰反応してわざと懸念を巻き起こすような人もいた。TPPの交渉の時、アメリカは一切そういうことは言っていない。『お化けが出るぞ、お化けが出るぞ』と言って、不安をあおりたてる論調が蔓延していた。当時は『TPPお化け』と呼ばれていて、根っこは同じ」

 これらの懸念は全てデマだといい、今回通過したものにサービス分野(保険など)や為替条項も入っていない。『ニューウィーク日本版』の長岡義博編集長は「『FTA=損』という思い込みが一部の国民の中にある。今回の協定は『日米貿易協定』で、FTAという言葉を使っていない。ネットにFTAという記事は見当たらず、そうするとメディアも加担した陰謀論だという流れもある」と説明する。

 一方、貿易のメリットデメリットを冷静に議論することが必要だとし、「昔は高かった外国産の牛肉が関税の引き下げで安く手に入るようになったように、生活の質が上がる部分もあると思う。桜を見る会も大切だが、野党はここを追求してほしい」と述べた。
AbemaTV/『けやきヒルズ』より)
 

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