GKは“権田一強体制”へ突入 植田が伸び悩み、吉田の相棒争いは冨安がリードか

 森保ジャパンは19日、キリンチャレンジカップベネズエラ戦に1-4で大敗を喫した。12月に韓国で開催されるE-1選手権は国際Aマッチウィーク期間ではないため、国内組のみで臨む予定。欧州組中心では2019年ラストゲームを終えたが、初陣から25試合(17勝4分4敗)を戦ってきたなかで、各ポジション内のパワーバランスに変化は生じたのか。招集全73人をポジション別に分け、序列を見ていく。

【序列内の記号/上から下へ序列高い順】
↑=2019年評価アップ
→=2019年評価据え置き
↓=2019年評価ダウン
―=2019年出場なし

■GK
↑ 権田修一ポルティモネンセ
↓ シュミット・ダニエル(シント=トロイデン
→ 川島永嗣(ストラスブール)
↓ 東口順昭(ガンバ大阪
― 中村航輔(柏レイソル
→ 大迫敬介(サンフレッチェ広島
― 小島亨介(大分トリニータ

 体制発足当初は権田、シュミット、東口の3人がしのぎを削っていたが、アジアカップ以降は権田とシュミットの“直接対決”へ。権田がシュミットの怪我で急遽先発した9月のパラグアイ戦から5試合連続でクリーンシートを達成し、ワールドカップ(W杯)予選でのファインセーブ連発で正守護神の座をがっちりとつかんだ。川島はコパ・アメリカ南米選手権)以来の出場となったベネズエラ戦で4失点。今年3月以来の招集だった24歳の中村は出場機会がなく、“権田一強体制”が顕著に。周囲の奮起が期待されるところだ。

■センターバック
→ 吉田麻也サウサンプトン
↑ 冨安健洋(ボローニャ)
↓ 昌子 源(トゥールーズ)
↓ 植田直通(セルクル・ブルージュ)
↑ 畠中槙之輔(横浜F・マリノス
↑ 三浦弦太(ガンバ大阪
↓ 槙野智章(浦和レッズ
→ 立田悠悟(清水エスパルス
― 進藤亮佑(北海道コンサドーレ札幌
― 荒木隼人(サンフレッチェ広島

 吉田が軸なのは変わりないが、全体的にポジション争いは停滞気味だ。もう一枠のレギュラーに定着しつつあった冨安は10月のモンゴル戦で左太ももを痛めて離脱。W杯予選2試合を含めて代役を任された植田は連携面で不安を覗かせ、前半だけで4失点を喫したベネズエラ戦で負傷交代しており、不在だった冨安の価値が上がる形となった。今季故障に苦しんでいる昌子の復帰、畠中や三浦のさらなる突き上げが待たれる。

長友と酒井を脅かす存在は依然不在 橋本がA代表デビューからレギュラー候補に台頭

【序列内の記号/上から下へ序列高い順】
↑=2019年評価アップ
→=2019年評価据え置き
↓=2019年評価ダウン
―=2019年出場なし

■左サイドバック
→ 長友佑都ガラタサライ
↑ 安西幸輝(ポルティモネンセ
↓ 佐々木翔(サンフレッチェ広島
↑ 杉岡大暉(湘南ベルマーレ
→ 山中亮輔(浦和レッズ
→ 車屋紳太郎(川崎フロンターレ
― 菅 大輝(北海道コンサドーレ札幌

 依然として長友を脅かす存在は現れず。システムのミスマッチや劣悪ピッチのエクスキューズがあったとはいえ、W杯予選キルギス戦では相手にターゲットにされて苦戦を強いられ、後継者不在の懸念は一層大きくなった。伸びしろがあるとすれば、ポルトガル移籍で成長を見せる安西と、コパ・アメリカでA代表デビューを飾った杉岡か。特に杉岡は1対1の強さ、精度の高いクロス、サイズと3拍子揃っており、代表定着の足掛かりをつかめれば全体のポジション争いも活性化しそうだ。

■右サイドバック
↑ 酒井宏樹マルセイユ
↑ 安西幸輝(ポルティモネンセ
↑ 冨安健洋(ボローニャ)
↓ 室屋 成(FC東京
→ 西 大伍(ヴィッセル神戸
↑ 岩田智輝(大分トリニータ
→ 原 輝綺(サガン鳥栖

 酒井は2019年に12試合出場で4アシスト。対人の強さと得点を演出するクロスで存在感を放った。ただ、初陣から継続招集されていた室屋は、9月と10月のシリーズで選外(10月は冨安離脱で追加招集)となるなど、2番手の座も危うい気配だ。森保監督は9月のパラグアイ戦でセンターバックの冨安を後半から右サイドバックで起用する采配を見せた。対戦相手によっては、最終ラインの大型化を図るうえでも“SB冨安”はオプションとして定着するかもしれない。両サイドに対応できる安西のバックアップ定着が濃厚か。

ボラン
→ 柴崎 岳(デポルティボ)
→ 遠藤 航(シュツットガルト
↑ 橋本拳人(FC東京
↑ 山口 蛍(ヴィッセル神戸
↑ 板倉 滉(フローニンゲン
↑ 井手口陽介ガンバ大阪
― 大島僚太(川崎フロンターレ
↑ 塩谷 司(アル・アイン
↓ 青山敏弘サンフレッチェ広島
↓ 守田英正川崎フロンターレ
↓ 小林祐希(ワースラント=ベベレン)
― 三竿健斗(鹿島アントラーズ
↓ 中山雄太(PECズヴォレ)
― 渡辺皓太(横浜F・マリノス
― 松本泰志(サンフレッチェ広島

 2019年全ポジションにおいて、最も台頭した新戦力が橋本だ。外国籍選手に当たり負けしないフィジカルとダイナミックな飛び出しを武器に、W杯予選初戦のミャンマー戦ではスタメンに抜擢された。柴崎の相棒の座を巡る争いは、山口を含めて今後も続くだろう。コパ・アメリカ参戦組では、板倉がコンスタントに招集。リオ五輪世代の大島と井手口もベネズエラ戦で代表復帰を果たしており、森保監督にアピールを続けたい。

南野がエースとして不動の地位を確立 中島、堂安の“アンタッチャブル状態”は終焉か

【序列内の記号/上から下へ序列高い順】
↑=2019年評価アップ
→=2019年評価据え置き
↓=2019年評価ダウン
―=2019年出場なし

■左サイドハーフ
→ 中島翔哉ポルト
↑ 原口元気ハノーファー
↑ 浅野拓磨(パルチザン)
↓ 乾 貴士(エイバル
↑ 安部裕葵(バルセロナ

 森保ジャパンの攻撃を発足時から牽引してきた中島は、11月のキルギス戦で今W杯予選初のベンチスタートとなった。森保監督は相手の攻撃への対策で原口を起用したことを明かしており、“勝利至上主義”による10番外しは今後もあるかもしれない。キルギス戦で直接FK弾を決めて存在感を示した原口、10月のタジキスタン戦で意地のゴールを挙げた浅野はわずかに中島との差を詰めた。他のポジションに比べて対象選手が少ないのは、中島を常時起用してきた余波と言っていいだろう。

■右サイドハーフ
→ 堂安 律(PSV
↑ 伊東純也(ヘンク)
→ 原口元気ハノーファー
↑ 久保建英(マジョルカ)
↑ 古橋亨梧ヴィッセル神戸
↓ 宇佐美貴史ガンバ大阪
↑ 三好康児(アントワープ
― 伊藤達哉(シント=トロイデン

 2列目トリオはアンタッチャブルな存在だったが、UEFAチャンピオンズリーグを経験してひと皮剥けた伊東が堂安を猛追。10月のモンゴル戦で3アシスト、堂安不在のキルギス戦でスタメンを張って攻撃のオプションとなるなど、勢いを見せている。今年6月にデビューした18歳の久保は期待値が大きい反面、試合が決した場面で投入するW杯予選での起用法を見ると、さらなる信頼の獲得が必要だろう。神戸のシンデレラボーイである古橋は、ベネズエラ戦でまずまずの初陣を飾った。東京五輪世代の三好を含めて、タレントは揃っている。

■トップ下
↑ 南野拓実ザルツブルク
→ 香川真司(サラゴサ)
↑ 鎌田大地フランクフルト
↑ 久保建英(マジョルカ)
→ 北川航也(SKラピードウィーン
― 天野 純(ロケレン)

 森保ジャパンで最多の11ゴールを挙げている南野は、カズこと元日本代表FW三浦知良を超えるアジア予選開幕から4試合連続ゴール、52年ぶりの国際Aマッチ5戦連発とエースとして地位を確立した。攻撃陣では、大迫とともに替えの利かない存在だ。香川は今年3月にロシアW杯以来の代表復帰を果たしたが、以降は新天地サラゴサへ移籍したこともあって未招集。南野とのポジション争いは“休演状態”となっている。10月のタジキスタン戦で鎌田が持ち前のテクニックをアピール。久保も同じ試合で、浅野のシュートをお膳立てするなど短い時間で適性を見せた。

“ポスト大迫”の有力候補が不在 鈴木&浅野のリオ五輪世代コンビはアピールできず

【序列内の記号/上から下へ序列高い順】
↑=2019年評価アップ
→=2019年評価据え置き
↓=2019年評価ダウン
―=2019年出場なし

■1トップ
→ 大迫勇也ブレーメン
↑ 永井謙佑(FC東京
↑ 南野拓実ザルツブルク
↑ 鎌田大地フランクフルト
↑ 鈴木武蔵(北海道コンサドーレ札幌
→ 浅野拓磨(パルチザン)
→ 岡崎慎司(ウエスカ)
↓ 武藤嘉紀ニューカッスル
― 小林 悠(川崎フロンターレ
― 杉本健勇(浦和レッズ
↑ 上田綺世鹿島アントラーズ
→ 前田大然(マリティモ)
― 川又堅碁(ジュビロ磐田
― 鈴木優磨シント=トロイデン
― オナイウ阿道大分トリニータ

 大迫の“ハンパなさ”は言うまでもないが、絶対的な存在と周囲の格差が大きい。負傷の影響で大迫が不在だった10月、11月、永井と鎌田がスタメンを任されたが、新たなオプションを見出せたとは言い難い。トップ下の南野は、10月のタジキスタン戦で最前線にシフトして2ゴールを挙げており、CFとしてもプレーできる可能性を示した。鈴木や浅野は、1トップを任せるには心許ないのが現状だ。(Football ZONE web編集部)

日本代表最終序列【写真:高橋学 & Noriko NAGANO & 浦正弘 & AP】