ジャパネットグループが2023年の開業を目指す“長崎スタジアムシティプロジェクト”。建設予定地は、長崎駅から徒歩10分のところにある約7ヘクタールの工場跡地で、敷地内の中心にはV・ファーレン長崎サッカー専用スタジアムが作られる。

 このプロジェクトを率いる、株式会社ジャパネットホールディングス代表取締役社長兼CEOであり、株式会社V・ファーレン長崎取締役の髙田旭人氏が20日、さいたまスーパーアリーナで開催された『スポーツビジネスジャパン2019 together with スタジアム&アリーナ2019』のコンファレンスに登場。プロバスケットリーグ、B1リーグに所属する富山グラウジーズの取締役・青井茂氏とともに「若手経営者からみたプロクラブ経営の魅力」について語り合った。

「なぜ、ジャパネットがスポーツ・地域創生をやるのか?」

 コンファレンスの冒頭、このシンプルな疑問に髙田氏はこう答えた。

「CSV(Creating Shared Value)の考え方から“感動とビジョンが両立した民間主導の地域創生モデルを確立し、平和のメッセージを長崎から世界に広げる”ことをやりたい。長崎の魅力を見つけて、磨いて、それを伝えていきたい」

 父である髙田明氏から経営のバトンを受け取ったのは5年前のこと。ジャパネットホールディングスは通信販売ジャパネットたかたを中心にサービス、メディア、コールセンター、物流センターなどの関連会社があるが、「いつかスポーツクラブ経営をやりたいという思いを持っていたが、3年前にV・ファーレン長崎が債務超過だったことで、少し早いかなという思いもあったが、『やるしかない』と100%子会社のグループ化しました。ですから今、全責任を持ちながらV・ファーレン長崎を引っ張っていこうと強い思いでやっています」。

 そんな中、今年1月にスポーツ・地域創生事業をもう一つの柱として株式会社リージョナルクリエーション長崎を立ち上げた。髙田氏がキーポイントに挙げたのは、「感動とビジネスが両立した民間主導の地域創生モデルを確立し、平和のメッセージを長崎から世界に広げる」というもの。「CSR(Corporate Social Responsibility)と言われてきた考え方から、最近はCSVと言われていますが、まさにビジネスと社会貢献の両立をやりたいんです」と明かした。

「正直、スポーツ・地域創生ってビジネスとして考えると割に合わないんです」

 では、なぜやるのか?

ジャパネットにはもともと、①いいものを見つけてきて、②自分たちで磨いて、③それを伝える、という我々が大事にしている3ステップがあります。ですから、長崎という魅力的な街のいいところを見つけて、自分たちで磨いて、それを伝えていく。そのためにはスポーツというコンテンツとスタジアム・アリーナ・商業オフィスといった箱が揃った時に、はじめてできるんじゃないかと。これは本当に難しいチャレンジだと思っています。一般的に自治体がやることを我々が先頭に立ってやろうとしているんですけど、シンプルにファン・サポーターやお客さんのために何をやるべきなのかを考え続けていきたい」

 熱い思いを口にした髙田氏。スタジアムと併せて、2021年には練習場とクラブハウスの完成を大村市とともに目指し、選手たちが育成から育っていく環境を作ろうとしているという。

「今のV・ファーレン長崎でそれができるのか?と数字を見ると、結果的に無理と言われるのですが、だからこそチャレンジして成功させたい。我々が成功事例となり、成功も失敗もプロセスを全部オープンにすることで、先々には民間主導でスポーツをやろうという企業が全国で出てくれば、日本中が元気になるんじゃないかなと思っています」

 今季での、V・ファーレン長崎のJ1昇格は叶わなかった。それでも県民の夢や思いを乗せた長崎と髙田氏の挑戦がこれから始まる。

※配信時、富山グラウジーズの所属リーグ(誤:B2リーグ、正B1リーグ)ならびにジャパネットグループの社名(誤:株式会社リージョンクリエーション長崎、正:株式会社リージョナルクリエーション長崎)に誤りがございました。訂正してお詫び申し上げます。(11月20日23時39分現在)

『スポーツビジネスジャパン2019』でスポーツ・地域創生をやる理由について語ったジャパネットの髙田社長(写真中央)