現在、世界で1日に1410億リットルもの水がトイレの水洗に使用されています。水不足に悩む地域では満足に水洗ができず、衛生問題も深刻化しています。
こうした事情から、水洗量を節約しながら、同時にトイレをクリーンに保つ画期的な方法が求められていました。
そこでペンシルベニア州立大学(米)の研究チームが、特殊なスプレーで便器をコーティングすることで、汚れが残らない新技術「LESS」を開発したのです。
研究の詳細は、11月18日付けで「Nature Sustainability」に掲載されています。
https://www.nature.com/articles/s41893-019-0421-0
スプレーを散布してたったの5分
水不足の多い発展途上国では、便器に悪臭を伴ったバクテリアなどが蓄積しやすく、衛生面に問題を抱えています。
発展途上国のトイレについて研究していたチームは、そこで、便器表面の滑りを高めることで水を使わなくても汚れが残らないコーティング方法「LESS(Liquid Entrenched Smooth Surface=液体定着型の滑性表面)」の開発を進めました。
LESSコーティングは、特殊なスプレーを2層に分けて重ねる仕組み。
1層目のスプレーは、便器表面に人の毛髪の10億倍も細いナノヘアをコーティングし、はっ水作用を保つ土台を作ります。次に、そこへシリコンオイルでできた2つ目のスプレーを散布します。
ナノヘアがシリコンオイルをしっかりとホールドするので、流れ落ちることはありません。2層のコーティングが馴染むまでには5分もかからないといいます。
これで準備完了です。
水洗量を90%削減可能
実証テストでは、45度に設置したLESSコーティング・プレートに、水滴および排泄物を再現したサンプルを落としました。
コーティングを施していないプレートと比較すると差は歴然で、LESSプレートには水滴や排泄物が一切残らず、水なしで自然に流れ落ちていきます。また、水洗量も従来の便器から90%も減らすことに成功しました。
LESSコーティングは、およそ500回の水洗に耐える強度を持ち、効果がなくなれば再度スプレーを散布するだけで元に戻ります。さらに、水滴や尿、排泄物のすべてが勝手に滑り落ちるので、便器に雑菌が溜まらず、衛生的な状態を保つことも可能です。
研究チームは「LESS技術により、世界で消費される1日の水洗量を半分に減らすだけでなく、水不足に悩む地域の衛生問題も解決することが期待される」と指摘します。
すでに「LESSコーティング」は商品化されており、約1500〜2200円で購入できるようです。
詳しくは「spotLESS Materials Website」から。
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