優秀な人材をめぐる獲得競争は国内外で激化している

ソニーは2020年度から、人工知能(AI)開発などの専門スキルを持つ社員を対象に、年収1100万円以上を支払う制度を新設する。同社は11月20日、AIの基礎的な研究開発を推進する新組織「Sony AI」を設立すると発表。広報担当者はキャリコネニュースの取材に、

「制度の狙いは、特定の領域に秀でた人材を採用すること。今回立ち上げるSony AIでも活躍してほしいと考えている」

と期待感をにじませた。

新卒の場合は博士課程卒などを想定


「エクセプショナル・リサーチャー制度」と呼ばれる今回の新制度。対象となるには新卒、既卒を問わず、同社が経営戦略上、重要と判断した高度な専門知識を持つことが条件になる。対象者には、労働基準法の労働時間規制の対象外となる「高度プロフェッショナル制度(高プロ)」が適用される。

現在はAIのほか、ロボティクスなどの分野で募集している。論文本数などの詳細条件は設けておらず、新卒であれば、大学院の博士課程卒などを想定しているという。制度の適用可否は、その年ごとに役員や有識者によって判断される。「社への貢献度が低かったり、技術革新などによって専門性の必要度が損なわれた場合には、適用を外すケースもある」としている。

年収については、最低ラインを高プロの適用対象となる「1100万円以上」と定めながらも上限は設けていない。広報担当者は

「専門性の高さや人材の市場価値から判断し、弊社での仕事に興味を持ってくれる人に提示したい」

と話していた。

NECも10月から新卒対象に「年収1000万円以上」の新制度

ちなみに同社の係長・主任級の平均年収は800万円程度だという。若いうちから年収1100万円以上が狙える今回の制度は魅力的だが、制度導入の背景について、広報担当者は

「AIをはじめとした特定の領域における人材獲得競争は国内外で激化している。弊社としても、そういった優秀な人材を獲得する上で相応の金額を準備する必要があると判断した」

と説明する。AI人材の獲得競争をめぐっては、これまでも米国大手IT企業の頭文字を取ったGAFAグーグル、アップル、フェイスブックアマゾン・ドット・コム)や、国内メガベンチャーに優秀な人材が奪われているとして国内電機メーカーらが危機感を強めていた。

同社は今年6月にも、新卒を対象に、AIなど特定の領域で高い能力を持つ新入社員の基本給を最大730万円に引き上げたばかり。10月からは、NECが新卒の「年収1000万円」を掲げた新制度を導入しており、今後もこうした人材獲得競争はしばらく続きそうだ。