幅広い世代に人気のおかず「唐揚げ」。中でも「チューリップ唐揚げ」と呼ばれる骨付きの唐揚げは、かつて人気があり、お弁当のおかず、誕生日会やパーティーのメニューとして定番でした。しかし現在、このチューリップ唐揚げをほとんど見かけません。20代の若者の中には、チューリップ唐揚げを知らない人もいるそうです。なぜ見なくなったのでしょうか。一般社団法人日本唐揚協会(東京都渋谷区)専務理事の八木宏一郎さんに聞きました。

手羽元か手羽先を使用

Q.チューリップ唐揚げは、なぜ「チューリップ」なのでしょうか。鶏のどの部位をどのようにして成形するのですか。

八木さん「『チューリップ』と呼ばれる理由は、その名の通りチューリップの花の形に似ているからです。鶏の手羽元、あるいは手羽先のどちらかの部位を使って作ります。成形の方法ですが、たとえば手羽元の場合は、まず手羽元の下の部分を包丁やキッチンバサミで一周切れ目を入れます。そして、骨に沿って肉を上に持っていき、ひっくり返して完成です。手羽先の場合は、もう少し複雑な手作業が必要になります」

Q.そもそも、チューリップ唐揚げはどのようなことがきっかけで誕生したのですか。

八木さん「はっきりとしたことは分かっていません。ただ、肉の中でも鶏の手羽元はあまり売れない部位で、何とかして売ろうとした精肉店が、チューリップの形にきれいに成形して見た目をよくしたことが始まりといわれています」

Q.最近は、チューリップ唐揚げをお店の総菜コーナーや弁当のおかずでもほとんど見かけません。なぜ、見なくなったのでしょうか。

八木さん「成形するのに手間と時間、そして人件費がかかり、お店で作ることがほとんどなくなったからです。ちょうど、昭和時代の終わり、バブル景気が始まった頃から、徐々に見られなくなりました。景気のよい時代背景から、『手間をかけるくらいなら高いものを売りたい』という意識が働いたのでしょうか。そして、平成時代にはほとんど見られなくなりました」

Q.現在では、どのようなときにチューリップ唐揚げを見ることができますか。

八木さん「クリスマスなど季節のイベントの時期に、期間限定でスーパーマーケットなどで販売されるだけになりました。そうした時期でも、チューリップ唐揚げを見ないこともあり、結局は販売するお店の裁量次第というのが実情です」

Q.一般的な唐揚げよりも、チューリップ唐揚げの方が見栄えが良いように思います。例えば、ホテルの立食パーティーなど大人数が集まる場では、現在でもチューリップ唐揚げの方が好まれるのでしょうか。

八木さん「ホテルの立食パーティーなどからも、チューリップ唐揚げはなくなってきています。大きな原因は、先述したように成形するのに手間がかかるからです。しかし、子どもが多く集まるパーティーでは出されているかもしれません。これも、ホテルのシェフの裁量が大きいです」

Q.一般的な唐揚げチューリップ唐揚げを比べると、形以外で味などの違いはあるのでしょうか。

八木さん「手羽元のチューリップ唐揚げは肉に味がしみこみにくいため、フライドチキンのように、衣に味をしっかりと付けて揚げる必要があります。一方、手羽先は味がしみこみやすい特徴があります。一般的な唐揚げと同じ要領で味付けすれば大丈夫です」

Q.これから、クリスマスやお正月などパーティーを行う機会も多いと思います。家庭でチューリップ唐揚げを作る場合、うまくできるコツがあれば教えてください。

八木さん「なるべく大ぶりの鶏を選んでください。手羽先や手羽元もぎりぎりまで思い切って大胆に、肉をそぎ落とさない寸前まで丁寧に丸めてください。小さいものよりも大ぶりな鶏が扱いやすいです。目安としては、大きさが10センチ前後の手羽元や手羽先が適切です」

オトナンサー編集部

かつて人気だった「チューリップ唐揚げ」