世田谷パブリックシアターと倉持裕による2017年の『お勢登場』から3年、テキストキャストを新たに第2弾『お勢、断行』が上演される。取材班が訪れたのは都内某所スタジオ。女優たちは、圧巻のド派手メイクで登場した。というのも本作のビジュアル撮影の合間に、取材がおこなわれたからだ。悪女集いし昼日中、出演陣の倉科カナ江口のりこ池谷のぶえ千葉雅子、そして作・演出の倉持裕座談会のために集まった。

■出演者と演出家の「微妙」な関係

――本作『お勢、断行』の出演オファーを受けて、どんなことを感じましたか?

倉科 最初は「私でいいんですか?」という気持ちでした。『お勢、登場』を拝見していて、黒木華さんがすごく素敵だったので。倉持さんとは2回目の舞台です。私、嫌われていると思っていたんで(笑)

倉持 そんなことないのになあ(笑)

倉科 倉持さんって、感情を出さないでしょう。前の稽古場ではアドバイスをたくさんいただけて、私は好きなんですけど(笑)。オファーをいただいて嫌われてなかったという喜びがありますけど、大きな役へのプレッシャーもあります。

――千葉さんは『お勢、登場』に続いての出演です。

千葉 倉持さんのことを意外に思ったのは飲み会でお話ししたときですね。楽しくて飄々としていて、誰も傷つけないけど辛辣なコメントもあって……。稽古場でも接しやすいけど、多くを語らないほうだと思うんです。飲み会で本当に話しやすかったのが印象的です。今回も楽しみです。

池谷 私は「酒とつまみ」というユニットで作・演出を倉持さんにお願いしたのが2013年でした。そこからなんのオファーもなかったので、私も嫌われているのかなと(笑)。ものすごい集中してやっていたので、倉持さんからどんな演出を受けたのか記憶があいまいなんですよ。だから今回、あらためて初めてやるような気持ちがありますね。

池谷のぶえ

池谷のぶえ

倉持 前回は観ていますか?

池谷 観られなかったんです。今回は資料映像も観ないで稽古に入ろうかなと。何も知らないまま参加することで生まれるものがあればいいなあと思って。

倉持 それでいいと思いますよ。前回は乱歩作品のコラージュでしたけど、今回はほとんど関係ないから。もはや江戸川乱歩ではない(笑)

江口 倉持さんと前に一緒にやったのは『ネジと紙幣』です。私にとって、芝居以外でどうでもいい話をできる初めての演出家が倉持さんだったんです。演出家って怖い存在だけど、しょうもない話ができたので。でも次のオファーまで10年かかっているから、私も嫌われているなあと(笑)

倉持 オファーって、タイミングですよ。断れることもあるしね。あのときはみんなで花火に行ったよね。

江口 そうそう。出演者のみんなで花火大会に行ったんです。その帰りの電車のなかで、しょうもない話をして楽しかったなという思い出があって。

池谷 すごい素敵な夏の思い出(笑)

倉持 F1レーサーと付き合いたいと言ってたのを覚えてる。

江口 あのとき佐藤琢磨さんが好きだったんですよ。で、倉持さんが「明日稽古休みだから、鈴鹿に行ってくれば?」ってアドバイスをくれました(一同笑)。

江口のりこ

江口のりこ

――千葉さんは俳優と演出家の双方の立場をご存じですよね。

千葉 演出家として稽古場にいるときは、出演者に距離を置かれる感じがしないでもないです。稽古が終わったら「ここからは別々で」という雰囲気になりますね。もちろん、みなさん敬遠しているということではないと思うんですけど。

千葉雅子

千葉雅子

■それぞれの悪女のさまざまな見え方

池谷 プロットを読んで、「ホントに悪い人がいっぱい出てきて面白そう」というのが最初の感想でした。ただの悪い人でなくて、それぞれの事情がありそうで……。登場人物たちがうごめいているように見えました。

倉科 私、ラストが気になります。

倉持 みなさんにはそれぞれの悪女をやってもらうんです。話が前後したり、視点が変わったり、それぞれの悪女のさまざまな見え方ができるといいなと。そもそも、悪女にはすごく興味があったんですよ。迷いがあっても判断が早く、衝動的に悪行をしてしまう。で、のちのち後悔する。すがすがしいほどに悪事を働いておきながら揺れている人物に興味をそそられています。

倉持裕

倉持裕

――みなさんのまわりに悪女はいますか?

池谷 尊敬できる悪女ってあまりいませんね。「この人、悪いなあ」くらいの人はいるけど、お勢みたいな人はいないかな。会ってみたいですね。

倉科 何を悪とするかですね。私の場合、ただのひがみなんですけど、うまく立ち回れる女性に対してうらやましいと思うと同時に悪女だなあと思いますね。「監督、次も出してくださいよー」って言えちゃう人に、私もなりたい(笑)

江口 私のまわりにはいないなあ。もし知り合いが人を殺しちゃったとしても、何かの理由があっただろうから、その人を悪女とは感じないだろうし。全然知らない人の事件をニュースで見たら「悪いやっちゃなあ」と思いますけど。

――先ほどの花火大会のように、何か稽古以外で集まれるといいですね。

倉持 現場がプロの集団になると、そういうことがむずかしくなってきますよね。みんな別の仕事も抱えているし。劇団のノリみたいなことができなくなってしまう。多少、稽古場以外で話し合うことはあってもいいと思いますね。

千葉 稽古場だけだとコミュニケーションできないこともありますよね。本格的な稽古はいつからでしたっけ。

倉持 1月の終わりくらいからですね。

池谷 じゃあ節分に豆まきましょうよ(笑)

千葉 初共演の人もいるし、やっぱりもっとコミュニケーションが親密になる機会があるといいですよね。

■仰々しく、グロテスクに

――今回の出演、演出上でみなさんが考えていることはなんですか?

倉科 素敵なキャストのみなさんとご一緒なので、みんなで失敗してもいいから共同作業したいです。失敗から出てきたことを大切にしながらやりたい。役者としての正攻法だとか技術というよりも、これだけ力のある人たちなので、みんなでやりたいです。

千葉 前回はみなさんを待たせてしまったというか、稽古での出遅れ感があったのが反省点なんです。もっとみなさんをお待たせせずに稽古でパフォーマンスできるようにしたいです。

池谷 私はこれまで江戸川乱歩に縁のない人生でした。今回の機会で乱歩に触れてみて、世界観を味わいたいと思います。

江口 プロットを読んだら死体を運ぶシーンがあるんです。これまであんまり舞台で身体を動かすことをしてこなかったので、足腰をちゃんと鍛えようと思います。1月からの稽古でしょ。風邪やインフルエンザに気をつけて、真面目に、ちゃんとやろうと思います。

倉持 江戸川乱歩はすごく書き方が過剰なんです。なんでもないことを大仰に描写します。前回と共通することですが、仰々しく、グロテスクに演出したいです。

取材・文=田中大介  写真撮影=敷地沙織

(左から)倉持裕、江口のりこ、千葉雅子、池谷のぶえ、倉科カナ