統合型リゾート(IR)整備推進法案、通称「カジノ法案」が国会で可決されて間もなく3年。それ以前からギャンブル依存症の問題は、大きな懸念材料として挙げられていましたが、未だにその対策について議論されている状況です。

パチスロ
※画像はイメージです
 厚生労働省研究班は2017年、国内の320万人にギャンブル依存症の疑いがあると公表。当時、大きく報じられましたが、2014年に公表された推計値は536万人。その人数の信ぴょう性には疑問があるものの、依存状態の方が相当数いることに疑いの余地はないでしょう。

初パチスロで大儲け! すっかり虜に

 土木会社に勤める井村勇仁さん(仮名・28歳)もかつてギャンブル依存症で苦しんだひとり。ハマるきっかけは大学2年の秋、同じ学部の友人に誘われて打ちに行ったパチスロでした。

バイト代が入った直後でお金に余裕があったので、付き合うことにしたんです。私が好きだった『エウレカセブン』というアニメパチスロ台を見つけ、試しに打ったら3000円で大当たり。それからも順調にコインが増え続け、気がついたら8万2000円の大勝ち。たった1日で1か月分のバイト代を稼いでしまったんです。それで一気にのめり込んじゃって、最初のうちは大きく勝ち越して1か月で30万円以上儲けました。もう笑いが止まりませんでしたよ」

 大学の講義もサボるようになりました。1年のころは全単位取得していたのが、パチスロにハマった影響で2年生では半分以上の単位を落とす始末。なかには「連チャン(※ボーナスが何度も続く状態のこと)中だから」という理由で大事な試験をすっぽかすこともあったといいます。

 ところが、打ち始めて4か月も経つと負けが込み始め、月間収支もマイナスに。ここで止めることができればよかったのですがパチスロを打ちたい、そして勝ちたいという欲求には勝てず、ほぼ毎日お店に通っていたそうです。

自動車教習所の費用もパチスロ代に…

お金

「気がつくとバイト代だけでなく親からの仕送りもパチスロに使ってしまい、公共料金や家賃も滞納するようになっていました。それでも督促状が届いてから猶予があるので、その間に払えば大丈夫だと解釈していたんです。けど、期限までに払えず、止められることもありました。携帯電話は最優先で払っていましたが、毎月ちゃんと払っていたのはそれくらいでした」

 もはや歯止めが利かない状況で、ついには親から自動車教習所代としてもらった30万円もすべてパチスロ代でパーに。

「大学3年の1年間で200万円以上パチスロで負けて、首が回らない状態になっていました。最初は友達や彼女に金を借りていましたが、私が返さないものだから縁を切られてしまい、借りるアテがなくなって学生ローンにも手を出していました。数社から総額50万円程度でしたが、返済のメドすら立っていませんでした」

 そこで困った井村さんは、親に「自分で払うから」とウソをついて100万円近い大学の年間授業料を振り込んでもらうことに。当然、滞納となれば実家にも大学から連絡が行くはずですが、ローンの返済とパチスロ資金の確保しか考えていなかったといいます。

アポなしで母親が来てバレてしまった!

「学費は勝って払えばいいと考えていました。今なら普通の精神状態じゃない、おかしいって理解できますがこのときは本気でそう思っていたんです」

 最初のときにツキを使い果たしてしまったのかなかなか勝てず、100万円もわずか2か月半ほどで残り30万円程度に。このままだとお金がなくなるのも時間の問題でしたが、彼のパチスロ生活は突然終わりを告げることになります。

パチスロを打ちに行っている時、母がアポなしでアパートに来たんです。用事があってついでに立ち寄ったらしいのですが、部屋に放置したままになっていた公共料金の督促状を見られてしまった。家に戻ったら学費の支払いについて疑いを持った母親から追及され、最初は払ったと言いましたが『じゃあ、大学に確認する!』と言われ、使い込んだことを打ち明けました。当然、大学2年の途中から学校にもほとんど行っておらず、単位不足でこのままでは4年どころか5年でも卒業が危ういことも言わざるを得ませんでした」

 母親はその場で泣き崩れ、電話で話を聞いた父親は激怒。借金は両親に立て替えてもらいましたが大学は中退。実家に連れ戻されたそうです。

パチスロがしたくて仕方なかった

パチスロ

「地元で父親の知り合いの方が経営する今の土木会社に入れられ、給料はすべて親が管理。私が自由に使えるのは月3万円だけで、高い買い物をするときは近くに住んでいる兄が同伴したり、ネット通販なら兄や両親が見ている前で決済していました」

 今は自分でお金を管理するようになったそうですが、昔みたいにパチスロにつぎ込んでしまうのではと怖くなることもあるとか。

「地元に連れ戻されてからは一度も行っていません。最初のころは打ちたくで我慢できず、ネットパチスロゲームとかをやってましたが、しばらくするとパチスロ自体への興味も薄れてしまいました。ただ、何かの拍子で再びハマることも否定できませんし、お店のある道路を意識的に通らないように避けたりはしています」

 すべて自分の責任とはいえ、失ったものはあまりに大きかったはず。理性を持って趣味の範囲で楽しむならいいですが、それをできない人が多いのもギャンブルの怖さなのかもしれません。

― 特集・借金苦に陥る若者たち ―

TEXT/トシタカマサ イラストパウロタスク(@paultaskart)>

【トシタカマサ】

ビジネスや旅行、サブカルなど幅広いジャンルを扱うフリーライター。リサーチャーとしても活動しており、大好物は一般男女のスカッと話やトンデモエピソード。4年前から東京と地方の二拠点生活を満喫中