明石家さんまが約5年ぶりに主演を務める新作舞台「七転抜刀!戸塚宿」が、2020年1月10日(金)から東京・渋谷のBunkamuraシアターコクーン、2月20日(木)から大阪・森ノ宮のCOOL JAPAN PARK OSAKA WWホールで上演される。
【写真を見る】つばぜり合いを繰り広げる明石家さんまと中尾明慶
2000年に初演、2015年に再演された「七人ぐらいの兵士」をはじめ、「JOKER」(2004年)、「小鹿物語」(2006年)、「ワルシャワの鼻」(2009年)、「PRESS~プレス~」(2012年)でタッグを組んできた水田伸生が演出を務め、ドラマ「あなたの番です」(日本テレビ系)で注目を集めた福原充則が脚本を担当。
中尾明慶、山西惇、温水洋一、八十田勇一、犬飼貴丈、吉村卓也、加瀬澤拓未 粂川鴻太 佐藤来夏、佐藤仁美が出演し、幕末から明治へと移り変わる日本を舞台に、 “仇討ち”をテーマとした藩士たちの人間模様が繰り広げられる。
今回、WEBザテレビジョンでは、さんまと「七人ぐらいの兵士」(2015年版)、「PRESS~プレス~」に続き三度目の舞台共演となる中尾の対談インタビューを実施。
5年ぶりの舞台出演に向けての思いやお互いの印象、“七転八倒”にまつわるエピソードなどをたっぷり語ってもらった。
■ さんま「初日迎えるまでは生活の方が大事やから」
――本作は、さんまさんにとって5年ぶりの舞台ですね。
明石家さんま:今回も、まただまされました(笑)。
――「また」と言うのは?
さんま:水田監督がいろんなことをだますんですよ、ホン(脚本)の出来上がりとか。本当は9月に脚本が上がって、それを見てから出演するかどうかを決めるという約束だったんです。何せ、年末はオーストラリアに行かなきゃいけないので(笑)。
――行かなきゃいけないんですか?
さんま:いけないんですよ(笑)。年越しはオーストラリアやから稽古できなくなるので、早めにと言ったら「それでも結構です」って言ってくれたんでね。それなのに、待てど暮らせど上がって来なくて、やっと昨日(10月末)ですよ。
第1稿だからまだまだの段階ですけど、断るも何ももう間に合わない。世間には舞台をやるって出てるしな(笑)。脚本を見てからっていう判断やったのになぁ…。いつもの手口です、水田監督の(笑)。
まぁ、中尾とかいつものメンバーがそろうんで、楽しみではありますけどね。
――中尾さんも、さんまさんとの舞台共演は5年ぶりですね。
中尾明慶:もう何度か同じメンバーでやらせていただいているので、また集まれるんだっていう感じでした。すごくうれしかったです。
――出来たてホヤホヤの脚本を読んだ感想は?
さんま:昨日は麻雀だったんですよ(笑)。そっちの方が大事やから。
中尾:脚本よりも?(笑)
さんま:今のところはな(笑)。もちろん初日を迎えたら舞台の方が大事やけど、初日迎えるまでは自分の生活の方が大事やから。ただ、チラッと0号ぐらいの脚本には目を通しているから、こうしようああしようという意見は言っています。水田監督は「面白い」って言っていましたけどね。
――監督のお墨付きということですね。
さんま:いつもそう言うんですよ。稽古入ってから大変なんですけどね(笑)。
■ 中尾「今回は何時間になるのか楽しみです」
――今回は時代劇に挑戦されますね。
さんま:以前は、雪国で陽気に過ごすおっさんの姿を描きたいって言っていたんですけどね。突然時代劇になっていました。何かいつも俺に不似合いなところへ行かしたがるんですよ(笑)。ヅラとか着物とか、毎日これに着替えなあかんと思うとゾッとしますね。お前(中尾)、読んだ?
中尾:はい、読みました! 今回は脚本家が福原さんで、この脚本がこれからどうなっていくのか。今いただいているものは割と短めなんです。これがさんまさんによって何倍ぐらいになるのか、演じながらどこまで長くなっていくのか。
それが楽しみですね。たぶん、今の段階だと普通にやったら1時間ちょっとで終わるような感じです。
さんま:今のところはそうだと思いますね。
――その脚本をベースにさんまさんがアイデアを盛り込んでいくわけですね?
中尾:それが、このチームの楽しみなところなんです。稽古場でも日々増えていきますし、公演が始まってもどんどん足されていきます。
さんま:今回の舞台は2時間半ぐらいで終わる予定です。舞台は2時間ちょっとでいいと思うんですよ。自分で見ていてもそう感じます。ただ、自分がやる側になると、どうしても3時間を超えちゃうんですよ(笑)。
――大体、いつも3時間ぐらいなんですか?
さんま:今までの最長記録は4時間やったかな? 「七人ぐらいの兵士」の大阪公演でしたけど、終電が間に合わへん言うて、帰ったお客さんがいました(笑)。
中尾:今回は何時間になるのか楽しみです(笑)。
――前回の舞台の時に、さんまさんは「お笑い芸人の明石家さんまとして役を通じてお客さんにサービスをする」と仰っていましたが、そのスタンスに変化は?
さんま:それは変わらないです。それしかできないし(笑)。僕の場合、ドラマでも舞台でもみんなあて書きですから。中尾とかと比べたら芝居という観念が少ないと思う。
お芝居は他の役者さんたちに任せて、こっちはその中でどうやるか、何ができるのかを考えています。
――今作は“仇討ち”がテーマということで、中尾さんはさんまさんを追い掛けるという役どころですが…。
中尾:楽しくて面白いシーンはさんまさんにお任せして、僕はお芝居を一生懸命やるだけです。
――お芝居で見せていくということですね?
中尾:そんなかっこいいものではないですけど(笑)。
さんま:結構、お見せになるんですよ(笑)。
中尾:そんな、見せていくっていうほどじゃないです。
さんま:中尾もそうですけど、山西(惇)、八十田(勇一)、ぬっくん(温水洋一)たちが、かなりコントっぽく演じてくれるので。お笑い芸人たちとやる時とは違う新鮮さがありますね。
――共演者としての中尾さんの印象は?
さんま:「PRESS~プレス~」っていう舞台の時に、冒頭のシーンで中尾の一人しゃべりがあったんですよ。それが非常に軽妙で、5分ぐらいの長ゼリフをひょうひょうとやっている姿を見て安心したんです。
その後、2人で絡む芝居をやってみて、「あ、こいつジミー(大西)いける」って思ったんです(笑)。
中尾:(笑)。
――舞台本番中に思ったんですか?
――「PRESS~プレス~」は7年前の作品ですから、結構前からドラマ「Jimmy~アホみたいなホンマの話~」の構想はあったんですね?
さんま:もともと映画でやろうと思ったんですけど、Netflixさんとのご縁でドラマ化することになったんです。「七人ぐらいの兵士」の時も、中尾が狼にかまれて死ぬというシーンがあったんですけど、そこは僕が遊ぶシーンでもあるんです。
その時の中尾の芝居を見て、「コイツ、ジミーできるわ」っていう確信を持ちました。
中尾:あの瞬間にですか?あんなにたくさんお客さんがいたのに?(笑)
さんま:いや、もう分かるやないか。こことここで笑いが来るっていうのは。
中尾:そんな余裕があるんですか?
さんま:初日ちゃうぞ(笑)。何日か経った時に思ったんや。
中尾:僕はもう、あのシーンが来るたびにヒヤヒヤしていました。
さんま:あのシーンは、普段の僕とジミーのやり取りがそのまま出ている感じだったんですよ。僕が好きなことをやって、ジミーが「それ何ですか?何を仰っているんですか?」っていう関係性が中尾ともできていたような気がしたんです。
ずっとジミーの役を誰にしようか悩んでいたので夢がかないました。やっぱりドラマなのでお笑い芸人じゃなくて、ちゃんと演じてほしいという気持ちがあったんです。
■ 中尾「僕も明石家流に乗ります!」
――中尾さんがぴったりだったわけですね。
さんま:これは好き嫌いがあると思うんですけど、中尾の芝居は“やっている感”が出ないから好きなんです。僕の趣味で言うと、(チャールズ・)チャップリンと(バスター・)キートンだったらキートン。ピーター・セラーズあたりの芝居も好みです。
――“やっている感”を出さないように意識しているんですか?
中尾:そんなこと考えていないですよ(笑)。
さんま:いや、意外とやっているんですよ(笑)。
中尾:僕は一生懸命やっているだけなんです(笑)。
さんま:「PRESS~プレス~」を見た関根勤さんが、「冒頭の中尾くんいいよね」って言っていたことを覚えています。いろんなお芝居を見ている関根さんがキャッチされていたわけですから。あの時が初めての共演だったので印象に残っています。
中尾:「PRESS~プレス~」の冒頭のシーンは、長ゼリフということもあって結構いろいろ考えましたし、緊張していたんです。でも、楽屋では開演30秒前ぐらいまでみんなで盛り上がっているんですよ。
だから、その盛り上がりをそのまま持って舞台に出て行く感じ。もしかしたら、あのシーンに関しては何も考えていなかったかもしれません(笑)。
さんま:だから良かったのかもな。
中尾:芝居をしてやろうというより、「あ、もう行かなきゃ」っていうノリで行ったのが良かったのかもしれないですね。
――さんまさんと共演して刺激を受けたところは?
中尾:以前舞台をご一緒した時に「脚本をどうやって崩していくかを考えている」という、さんまさんのインタビュー記事を読んだことがあったんです。僕はどうやって成立させるかということしか考えていないので、それはすごく勉強になりました。今まで壊す作業をしたことがなかったので。
さんま:役者さんはそうでしょうね。僕の場合は明石家さんまとしてキャスティングされていますから。さんま流にやるというのが正解なんです。だから、壊したいですし、笑わせたいんです。
――中尾さんも“中尾流”で…!?
中尾:中尾流?明石家流があるのに?何を言っているんですか(笑)。いくら何でもそこに被せたりはしないですよ。もちろん、僕も明石家流に乗ります!
さんま:舞台を一緒にやっている時は明石家一門なんですよ(笑)。でも、役者さんはいろいろ考えてきてくれるんです。ぬっくんなんて人一倍考えるタイプなんですよ。
稽古場でどんどん変わるセリフや動きなんかを台本にびっしりメモって、もともとの自分のセリフが読めなくなっている(笑)。
中尾:あれはすごいですよね。
さんま:次の日に自分なりに考えた芝居をしてくれるんだけど、「あ、ぬっくん、ゴメン。昨日やったやつなしでいいから」って言ったら、いきなり毛根から汗がブワーッと出てくるんですよ(笑)。
でも、そこまで考えて芝居をしてくれているってことですからありがたいですよね。
■ さんま「七転び八起きすんなって言いたい」
――「七転抜刀!」というタイトルにちなんで、最近“七転八倒”したエピソードを伺いたいのですが…。
さんま:俺の場合は“八倒”だらけやけどな(笑)。ただ、ホントは七転び“一起き”でいいんですよ。八つも起きなくても転んだままで最後に一起きすれば。
俺の経験から言うと、七つ転んで七つ起きて、その後の八つ目はしんどい(笑)。今の小学生や中学生には七転び八起きなんてすんなって言いたい。
七転び最後に一起きに変えた方が楽だと思います。(中尾を見て)お前も“八倒”だらけやろ?
中尾:そうですかねぇ…。
さんま:結婚したから分かるやろ。
中尾:ちょいちょい“八倒”しますよね(笑)。
さんま:もう結婚は仕方がない。七転びせえへんもんな。“七死”やもんな(笑)。
中尾:確かに七回死にますね(笑)。
さんま:七回、瀕死するよな(笑)。だから“七瀕死八倒”や。もちろん夫婦によって違うと思いますけど、夫婦は納得いかないままでいいんじゃないですかね。納得しようとするからおかしくなるような気がしますね。(ザテレビジョン・取材・文=月山武桜)
コメント