―[あの企業の意外なミライ]―


 突然ですが、今から10秒だけ自分の部屋を思い浮かべてみてください。

 ベッド、ふとん、机、棚、カーテン……。その中に、ニトリの製品はありませんか?

 おそらく、「布団がそうだった」「カーテンがニトリだった」と、部屋の中に何らかのニトリ製品があったという方は多いのではないでしょうか。

「お、ねだん以上。」のコピーでおなじみのニトリは、ここ数年安定的に成長を続けている会社です。2020年2月期も、33期連続で過去最高益を更新する見通しです。

 現在、国内家具全体の売上高は約1兆2300億円。

 その中で、大手5社が売上の6割を占めています。さらに言えば、売上高の約44%がニトリホールディングス。まさに、一人勝ち状態なのです。なぜあなたの部屋にニトリ製品があふれているのか。その必然性を5分ほどで解説します。

◆5年で利益1.7倍!その背景は…

 まず、ニトリがどれだけ好調なのか解説しましょう。

 ニトリ損益計算書(略して“PL”= profit and loss statement)を見てみます。PLとは、企業に「出てくるお金」と「入ってくるお金」を示したグラフのことです。

 5年間でニトリの売上高は約1.5倍、利益は約1.7倍と推移(※売上:2014年約3870億円→2019年約6080億円、純利益:2014年約380億円→2019年約681億円)。

 株価を見ても、堅調な推移を続けています。消費増税の10月前後では少し調整をしていますが、その後はまた回復しています。

 それを後押ししたのが、10月前半期の増税前の駆け込み需要と、各キャンペーン。「ニトリFun!ウィーク」や「オーダーカーテンキャンペーン」により、ソファやマットレスはじめとした家具やカーテンなどのウィンドウカバリング、キッチン用品が堅調だったようです。

ニトリは「家具業界のユニクロ」だった!

 実はいま、家具業界は不況の波の中にあります。

 帝国データバンクの調査によれば、2019年10月までに倒産した家具店は26件。特に、地域密着型の「まちの家具屋さん」の経営が難しくなってきているのです。では、なぜニトリが家具業界の中でここまで成長を続けられているのでしょうか?

 同社の財務諸表(略して“BS”=Balance Sheet)を見てみます。

 以前、ライザップの記事でも言及しましたが、在庫は資産に計上されますが、売れなければ財務を圧迫する存在です。

 とはいえ、小売業は在庫を抱えながら運営しなければなりません。在庫は、店頭の欠品を防ぐために必要不可欠です。

 長い間売れ残った在庫が増えると、値引きセールをして処分しなければなりません。実際、ニトリと良く比較される大塚家具は2018年秋に大型のセールを行っています。これは在庫を減らすためであることは容易に想像できます。

 一方、ニトリは在庫の少なさが特徴です。

 これは、一定期間に在庫がどれだけ売れたのか示す指標です。2018年の大塚家具が在庫の回転が約3回転なのに対して、ニトリは11回転です。ニトリのほうが圧倒的に在庫の回転が早のです。

 ここでポイントとなってくるのが、柔軟に在庫の量を調整できるか。ニトリは企画から製造、販売を手掛ける製造小売業(SPA)を取り入れています。つまり、販売する家具や雑貨のほとんどが自社ブランドなのです。店頭の販売動向に応じて、生産量を増加させたり、減少させたり、柔軟に在庫を調整できるのが強みです。

 これ、どこかの企業を似ていますね?そう、あのユニクロのSPAシステムと一緒。ニトリは、家具界のユニクロといえるのです。

ベッドは買わなくても、食器は買いませんか?

 低迷を続ける大塚家具と比較すれば、ニトリが好調な理由がさらに見えてきます。大塚家具がソファーやベッドなどの高価格の大型家具がメインであるのに対し、ニトリは、キッチン用品やカーテンなどの低価格雑貨が店舗売上高の過半数を占めています。

 ここで考えてみてください。ここ3年で新たにベッドを買いましたか?

 質問を変えます。ここ3年で、食器を一枚でも買いましたか?

 もう答えは明らかですよね。

 キッチン用品や雑貨は、購入機会が多いのです。そのため、需要の把握も容易。膨大な消費者データにより、在庫の回転率を高めることができるのです。また、店舗を訪れる機会が増えるので、“ついで買い”も喚起できます。

 話をまとめます。ニトリ好調の理由は…

1:製造から販売まで引き受けるので在庫ロスが少ない
2:家具屋さんのふりをして、日用雑貨を売る
3:2により、需要予測がしやすい


 この3つと言えるでしょう。

 ユニクロニトリも強い理由はやっぱり一緒。効率化による在庫調整ができ、消費者のニーズに答えることができるSPAモデルの時代は、まだまだ続きそうです。

【馬渕磨理子】
日本テクニカルアナリスト、(株)フィスコ企業リサーチレポーター。日本株の個別銘柄を各メディアで執筆。また、ベンチャー企業の(株)日本クラウドキャピタルでマーケティングを行う。Twitter@marikomabuchi

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