小さな頃からの夢を叶え、14年間美容師として活躍し続ける榊さん。日々移り変わる流行の中で、常に最先端の情報を取り入れ、技術やセンスを磨き続ける必要がある美容師の仕事ですが、榊さんはどういった努力をしているのでしょうか? また「美容師あるある」も教えていただきました。

失敗から学んだカウンセリングの大切さ

―― このお仕事では、技術以外にも接客対応などのコミュニケーション力や細やかさも大切だと聞きました。実際のところはいかがですか? またその他にも「美容師あるある」があれば教えてください。

技術はもちろん大切ですが、カウンセリングは命です。今までやって嫌だったスタイルや、短くした時にクセが出たことがあるかなど、こちらがプロだと思って、わざわざ伝えないでもわかるはずと思われてしまうのは困りますから、必要なことは何でも聞くようにしています。
特に初めてのお客さんは未だに怖いですね。髪質もまだ分かりませんし、髪色が明るくなりやすいのか、その逆か、ご要望通りに仕上げられるか不安になるところはあります。今までの失敗で、カウンセリングの際にここ最近で黒染めをしたか、ということを確認し忘れていて、カラーが綺麗に入らなかったことがありました。その時は正直に謝って、もう一度やり直しをさせていただきました

「あるある」で言えば、美容師は立ち仕事なので、体力はもちろん必要なのですが、シャンプーをする時の姿勢が悪くて腰を悪くしてしまったり、薬品や水を常に使うため手荒れの悩みを抱えたりする人がとても多いです。コルセットをつけて仕事をしているスタッフもいますし、整体に通ったりシルクの手袋をして寝るようにしたり、各々ケアを工夫しています。私は、中学生の頃に陸上部だったこともあって走ることが好きなので、体力作りとダイエットを兼ねてジョギングをしています。

これからの時代に求められる自己プロデュース

―― 流行が移り変わる中、これからの美容師に求められるものはなんだと思いますか?

今の時代は、自己プロデュースをしっかりとすることが大切だと思います。これからはどんどん分野ごとにスペシャリストが求められていくのではないでしょうか。カット・カラーリング・接客……どれか1つだけでも自分の得意とする武器を持って、とことん追求してみるといいかもしれません。私の場合は、自分がカットが上手い方だと自信が持てなかったので、それなら自分の強みをどこに見いだすのか、たくさんいる美容師の中でどう生き残っていくのか、ということは常々考えていたように思います。そこで以前から周りからの評価も高かったカラーリングやヘアアレンジについて一層力を入れて勉強するようになり、自分のアピールポイントとしました。

また、技術はもちろんですが、情報が武器になる仕事だと思うので、インターネットのリテラシーが高いことは断然有利です。情報を得る他にも、新しいスタイルを自ら発信していくことも必要です。そこが得意か不得意かということは大きな差になると思います。


―― 日頃から情報収集やセンスを磨くために心がけていることがあれば教えてください。

美容師側から流行を発信していきたいという思いがあるので、できる限り、最先端の情報を仕入れるように心がけています。業界誌だけではなく、人気の美容院や美容師のSNSもチェックします。ただ、自分の年齢も上がっていく中で、10代や20代前半の子たちの間で流行しているスタイルなどは、どうしても疎くなっていく部分があり、後輩に情報を聞くこともありますね。またインプットした技術を実際に試して身につけることも大切。私の場合は新しいカラーリング方法など、理解のあるお客様に実際に試して経験を重ねることが多いです。

コンテストではクリエイティブなチャレンジができる

―― 今後の夢やチャレンジしたいことがあれば教えてください。

今後は今までの経験とキャリアを生かして、より質の高い仕事をしていけたらいいなと思っています。技術はもちろんですが、例えば扱うケア用品にしても、必ずしも流行っているものが良いものだとは言い切れないと思っています。今は、本当に自分も良いと思うものでないとお客様にお勧めしたくないという思いが大きくなっているので、より厳選したものを自信を持ってお勧めできるようにしていきたいと考えています。


―― 最後に、お仕事の中で、一番の思い出や達成感を感じたエピソードについて教えてください。

県の美容師協会が年に1回開催するコンテストに参加し、優勝をもらった経験です。出場前に夢中で練習していて、気がつけば夜中の3時だった時には、「私、この仕事が本当に好きなんだな」と思いましたね。そのコンテストでは、カットとセットの部門があり、2014年のヘアセットの部で優勝、その後も賞をいくつかいただいてきました。私は編み込みなど緻密な作業が得意なので、みんなが絶対にやらないような細くて面倒な技術を必ず取り入れるようにしていたのが評価につながったのかもしれません。

こうした特別な場面では、実際のお客様にはなかなかできないようなクリエイティブなことに挑戦することができるので、普段の仕事とはまた異なる興奮や楽しさを経験することができます。自分を高めたいというモチベーションにもなりますし、賞をいただけたことは美容師としての自信にもつながりました。

持ち前の手先の器用さを武器に、コンテストで優勝する経験も得た榊さん。この仕事が本当に好きだという思いと、日々の努力の積み重ねがあったからこそ華やかな実績と確かな自信を得ることができたのでしょう。流行だけにとらわれることなく、その経験と技術、榊さんの武器を生かして、今後も新たな夢に向かってチャレンジを続けたいと笑顔で語ってくれました。

 
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スタイリスト兼アイリスト 榊 風子
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