fantasy-3186483_640_e

 物理学においては、これまで自然界は4つの力によって支配されていると考えられてきた。それらは太陽の熱生産からスマホの動作まで、目に見える宇宙で起きる神羅万象すべてコントロールしているはずだった。

 しかしハンガリー科学アカデミー核研究所(ATOMKI)の研究グループによると、それらに加えて第5の力が発見されたかもしれないそうだ。

 研究グループが励起したヘリウム原子が崩壊しながら光を放つ様子を観察していたところ、その粒子が115度という、これまでの物理学では説明不能な角度で分裂したのだ。

 ここ数年この研究に注目してきたアメリカ・カリフォルニア大学アーバイン校の物理学ジョナサン・フォン博士によれば、もし本当であれば、「文句なしのノーベル賞」である大発見だそうだ。

―あわせて読みたい―

自然界の第5の力を発見か?宇宙に対する認識が根底から覆える可能性も(米研究)
なるほど面白い。重力に関する謎めいた6つの事実
私たちの世界の見方に革命を起こした20人の物理学者
大型ハドロン衝突加速器(LHC)で新たなる粒子、”チャーミング”重粒子が発見される
「光を物質に変える」理論上の可能性に挑む研究者たち(英研究)

従来の標準モデルでは説明できない角度で分裂

 研究の中心人物であるアッティラ・クラスナホルカイ(Attila Krasznahorkay)氏が、この新しい粒子を発見したのは実は2度目のことだ。

 最初の発見は、クラスナホルカイ氏らによって3年前に『Physical Review Letters』(2016年1月26日付)で発表されている。その研究は、ベリリウム8同位体が基底状態に崩壊しながら光を放つ様子についてのものだ。

 もしその光に十分なエネルギーがあるのなら、電子と陽子に分裂し、予測された角度で飛び去るはずだった。エネルギー保存の法則によって、光のエネルギーが増大するにつれて、その角度が狭まることになっているのだ。

 しかし、このとき観察されたのは、140度という予想外な角度で分裂する電子と陽子だった。これは広く受け入れられている粒子物理学の「標準モデル」では説明できない現象で、まったく新しいボース粒子である可能性が示唆されていた。

はたして第5の力は存在するのか?

 これはただ事ではない。現在の物理学では、この宇宙には「重力」「電磁気力」「弱い核力」「強い核力」の4種類の基本的な力(基本相互作用)があるとされ、それらのうち3つまでが引力と斥力のメッセージを運ぶボース粒子を持っていることが知られている。

 しかし新しく発見されたボース粒子は、独自の質量を持ち(17メガ電子ボルト。電子の33倍)、寿命はほんのつかの間(10-14秒)であることから、これまでに知られている4つの力を運ぶ粒子ではない可能性があった。

 あらゆるサインが、新しいボース粒子は第5の力の担い手であることを指し示していたのだ。

 とは言え、物理学は慎重な学問だ。これが見つかったこと自体はビッグニュースだが、手放しで大喜びする前に、その真偽を確かめなければならない。

iStock-1072135686_e

Image by Girolamo Sferrazza Papa/iStock

3年前の結果を再現


 そして今回の紹介する『arXiv』(10月23日付)で閲覧可能なこの研究では、その再現に成功したことが報告されている。

 クラスナホルカイ氏らが、今度は励起したヘリウム原子が崩壊しつつ光を放つ様子を観察してみると、115度という、やはりこれまでの物理学では説明不能な角度で分裂したのだ。

 計算によってこの現象を過去へさかのぼってみると、ヘリウム核は、質量が17メガ電子ボルト以下のボース粒子をもまた作り出していたことがわかった。

 その粒子は質量にちなみ「X17」と呼ばれている。もしこの結果が実験誤差によるものではないのだとすれば、これがX17以外の原因で起きている可能性は1兆分の1というほとんどゼロに近い確率になる――つまり第5の力の存在が確定するということだ。

ダークマターの解明や大統一理論の完成へ向けて

 はたしてX17は実在するのか? すでにこの結果が実験誤差によるものではないか確認するべく動き出している研究グループもあるそうだ。

 結果が確定するまでもう少し時間がかかるとして、もし第5の力が存在したとすればどういうことになるのだろうか?

 まず物理学最大の謎とされているダークマターの正体が判明するかもしれない。これは、質量はあるが光では観察できないとされる仮説上の物質で、宇宙のどこにでも存在するが正体不明の物質である。クラスナホルカイ氏によると、X17はこの謎の物質とつながりがあるかもしれないのだそうだ。

 そして、きわめつけなのは第5の力を解明することで、かのアインシュタインですら成し遂げられなかった究極の物理学理論「統一理論」へ一歩前進できる可能性だ。それは銀河の形成からクォークの特異な行動まで、宇宙に存在するあらゆる力を一貫して説明することができる物理学の最終理論だ。

 もちろん、宇宙がそうやすやすとはその秘密を明かしてくれないことはわかっている。フォン博士によれば、自然界の力が5つで終わると考える理由はなく、第6、第7、第8の力と、まだまだ私たちに知られていない力が発見される可能性はあるそうだ。

References:Physicists Claim They've Found Even More Evidence of a New Force of Nature/ written by hiroching / edited by parumo

全文をカラパイアで読む:
http://karapaia.com/archives/52285003.html
 

こちらもオススメ!

―知るの紹介記事―

遺体捜索犬が大手柄!紀元前8世紀の墓を発見(クロアチア)
宇宙飛行士に銃が必要な理由(ロシア)
一撃職質。だが面白い、動くとファサーッ!っとなるシュールなフェイスニットマスク
トイレに流される金魚を救え!フランスの水族館が金魚の保護施設を作る
体内に入った精子により記憶力が向上するミバエのメス(フランス研究)

―自然・廃墟・宇宙についての記事―

アメリカの地下大陸間弾道ミサイル複合施設がナウオンセール(アリゾナ砂漠)
ワクワク地球外生命体、木星の衛星エウロパで水蒸気噴出を確認、液体の水の存在が明らかに(NASA)
ボイジャー2号が太陽圏を離脱し星間空間へ。太陽系と外宇宙の間にある壁の謎に迫る(NASA)
今日は満月、ビーバームーン!気分をリセットしたいなら夜10時半頃に夜空を見上げよう(2019年11月12日)
海が産んだ大量の卵?フィンランドの海岸を埋め尽くした氷球の珍百景、レアな自然現象
本当なら世紀の大発見!自然界に第5の力が存在する証拠を発見(ハンガリー研究)