1日に3分間だけ時間を止めることができる森谷美鈴と、なぜか止まった時間の中で動くことができる村上遙。2人の女の子の瑞々しい青春を描いた劇場OVA「フラグタイム」が公開。それを記念して、2019年11月23日(土)新宿バルト9で舞台挨拶が開催されました。

「フラグタイム」劇場公開記念舞台挨拶より

登壇したのは、森谷美鈴役の伊藤美来さん、村上遥役の宮本侑芽さん、小林由香利役の安済知佳さん。さらに、スペシャルゲストとして「フラグタイム」原作者のさと先生が舞台に上がります。

まずは、あらためて本編を見た感想を聞かれると、伊藤さんは「絵がかわいくて、きれい。ストーリーや音楽もふくめて、繊細な作品になりました。森谷や侑芽ちゃんが演じた村上との掛け合いを見ると、2人がちゃんと作品の世界で生きていることを実感できました。また、プレスコ(演技にあわせて映像をつくる手法)の部分もあったので、『こうやって動くんだ』という驚きもありました」と話します。

宮本さんはラストシーンについて「音楽担当のrionosさんの劇伴がすばらしかったです。疾走感もありつつ、せつなさもあって。音の繊細さが作品にマッチしています」とコメント。さらに、「あさがおと加瀬さん。」を見て収録に挑んだことに言及しつつ、「同じチームなのに、テイストが違っていて、こんなに幅広い作品をつくれるのかと感動しました」と率直な感想を述べました。

安済さんは「〝けっこう重い〟会話もありますが、(伊藤さんと宮本さんの)さわやかな声で、すっと入ってきて、自分もその場にいる感覚を楽しめました」とコメント。さらに、「いろいろな視点で楽しめる作品です。森谷や村上としてはもちろん、小林のような第3者としても!」と観客へ思いを伝えます。

原作者のさと先生は、「この作品を描いたのが2013年ごろなので、当時の記憶があいまいで……。だから、映像をあらためて見て、めちゃくちゃいい作品だなと、お客さんとして楽しみました」と返答すると、会場には驚きが。続けて、「後半のシーンは、描いていて辛かったというか、息苦しい気持ちがあったので、そのころの自分に、『映画になって、舞台挨拶もさせてもらえているよ』と伝えてあげたいですね」とはみかみました。

さらに質問は続きます。安済さんが「時間が止まる設定」が生まれた経緯をさと先生に尋ねると、「私も森谷みたいに、時間を止めてそこから逃げ出したいと感じていたときがあって。そのときに設定が生まれました」と裏話を披露。さらに、「ネームを喫茶店で描いていたのですが、村上の気持ちが入ってきて、ずっと辛かったのがもう辛くないんだって、ボロボロと泣きながら描いていました(笑)。」と、森谷と村上、両方の気持ちに寄り添いながら物語を考えた、クライマックスの制作秘話を語ってくれました。

ファンへの感謝の気持ちを込めた砂時計を会場に投げ入れるプレゼント企画の後、キャストへのサプライズが! さと先生からキャストの3人へ、それぞれが演じるキャラクターを描いた色紙が贈られました。興奮を抑えきれない一同は、「うわーっ!」と大歓声を上げていました。

楽しいひとときはあっという間に過ぎ、最後の挨拶の時間に。さと先生は「映像や音、演技などが合わさって、すばらしい映画になったと思います。原作マンガを読むと、細かな設定を補完できるので、ぜひ読んでください」とメッセージを送ります。安済さんは「小林を演じることで、時間の尊さを感じました。また、学校生活は誰もが経験したことのあるもので、森谷と村上の生活に共感しつつ、2人ならではの世界があることにエモさを感じました」と感想を述べつつ、「何度も2人の3分間を楽しんで、新たな視点で楽しんでください」とリピートをプッシュ。宮本さんは原作に言及し、「原作では映画にはない村上のモノローグがあって、より彼女のことがわかると思います」と語りました。最後に、伊藤さんは「森谷の気持ちを想像しながら、青春時代の楽しみや苦しみをもう一度経験しながらお芝居をしたので、やっと公開されて届けられるのがうれしいです」と公開の喜びを語り笑顔に。作品の雰囲気そのままの温かな拍手が鳴り響くなか、舞台挨拶は終了しました。(WebNewtype・【取材・文:星政明】)

「フラグタイム」劇場公開記念舞台挨拶より