家電量販チェーンヤマダ電機で全役員14人が降格処分となり、会長の山田昇氏が5年ぶりに社長に復帰するという異例の人事が行われることになった。上場後初めて2期連続で減収減益となったのを受けた措置だ。

 山田氏は会長になってからも経営会議や各種の委員会に出席しており、経営への影響はいまだに大きい。巷では「自分の経営責任を棚上げした責任のすり替え」と批判する声もある。

 しかし、経営の第一線から退いたところで、∨字復活する保証はない。気がつけば株主の過半数は外国法人や外国人個人株主が占めており、山田氏の持分は実質10%程度。株主から強いプレッシャーを掛けられて苦渋の選択をした山田氏の手腕を見届けるしかない。

 減収減益の原因は、大手総合電機メーカーの不調と同じだろう。家電エコポイントという麻薬的な補助金に溺れ、その後遺症に悩まされている。地デジ化による需要先食いと反動も容易に予想されたはずだが、業績予想にきちんと反映していなかったようである。

 キャリコネに寄せられた社員の口コミを見ると、もはやライバルは同業の大手家電量販店ではないらしい。20代の男性販売アドバイザーは、通販大手のアマゾンの名前をあげている。

 「アマゾンはとにかく値段が安い。配送料が無料でスピード配送。品揃えが豊富、人気商品がきちんと在庫があるところから考えても脅威である」

 ヤマダ電機は単体でも500を超える店舗を抱えているので、各店舗に商品を割り振ると在庫のムラが生じやすくなる。その点、アマゾンなどの通販は、在庫を一元管理できるので、品切れによる機会損失が起きにくい。

 お客の中には、ヤマダの店舗を完全にショールームとして扱い、現物を見て商品説明を聞きながら、結局は買わない失礼な人も少なくないそうだ。30代のカウンターセールス担当の男性は、お客の容赦ない態度に心を痛めている。

 「最近はスマートフォン片手に商品説明を求められ、説明すると『それだけ聞きたかった』と言って、ネットで買うからと(立ち去る)モラルのない人も増えてます」

 

 厳しい環境でもやりがいを見出そうとする若者たち

 ネット通販の攻勢にさらされる家電量販店に「明るい未来がない」とは、誰もが容易に言えることだ。しかしネットではなく店舗で現物を見て、生身の人間から買いたいという人は現に存在するのであり、そこには人間がすべき仕事がある。

 カウンターセールスを担当する20代の男性契約社員は、厳しい現場の中で自分なりに仕事のやりがいを見出そうとしている。

 「お客様視点で、いかにお客様に満足してもらえるかを常日頃から考えて業務をこなしていたので、その部分は非常にやりがいがあり、そこが面白みにも繋がる部分であったと感じる」

 30代の契約フロアスタッフも、店舗の品揃えなどを通じてマーケティングの仮説・検証を回すことに面白みを見出している。

 「市場動向から売れ筋を割り出し、地域の特質なども加味して、来店されるお客様の目を引くような売り場を作り、それが実際にいつもよりも売れたときはやはり嬉しいです。お客様対応はやり方を誤るとストレスにもなるところですが、私の言葉に納得されたときや、お客様の笑顔が見れたときは充実した気持ちになれます」

 20代の店舗スタッフも「他店も見てみたいと買われなかったお客さまが、後に(店に)戻ってこられたときは、『自分の対応が良かったんかな』って感じ、嬉しさも倍増します」と明かしている。

 もちろん、店舗や上司によっては、厳しいノルマや体育会系の締めつけ、お客からの理不尽なクレームもあるようだ。給与も他業種と比べて必ずしも高いとはいえない。

 一般的には「ブラック企業」と呼ばれる要素が満載だが、それでもそこにお客がいる限り、自分の力で稼ぎ、仕事を通じて成長しようとする人がいる。そんな人に対し、他人が軽々と「家電量販店オワコン(終わった業界)」と言うべきではないのではないか。

 

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