「疲れてもがんばれ! 小中学生」というキャッチコピー栄養ドリンクのパッケージに入っていると、ネット上で話題になっています。8~14歳の小中学生を対象にした医薬品で確かに、ある通販サイトでは、まぶたが閉じ気味になりつつも勉強する子どものイラストとともに「疲れてもがんばれ!」と表示した商品写真が載っています。

 SNS上では「疲れたら休ませてあげて」「ブラック企業みたい」と批判の声が上がっていますが、実際に商品を取り寄せてみると、パッケージから「疲れても…」の文字は消え、別のコピーが入っています。一体何があったのでしょうか。

「子どもに栄養ドリンク」医師の見解は?

 話題の商品は大正製薬の「リポビタンJr.」(50ミリリットル入り瓶)3本パック。公式サイトによると、生薬やカルシウムなどを配合したミニドリンク剤とされています。まず、子どもたちが栄養ドリンクを飲むことについて、内科医の市原由美江さんに聞きました。

Q.子どもが栄養ドリンクを飲むことは問題ないのでしょうか。

市原さん「この子ども用栄養ドリンクに含まれている主な成分は、ビタミン、カルシウムタウリン、生薬です。ビタミンは代謝に、カルシウムは骨に、タウリンは肝臓にいいとされている成分ではありますが、食育の意味も含め、子どもは栄養バランスのいい食事をすることが基本です。ただ、栄養ドリンク自体は、アレルギーがなければ飲んでも基本的に問題ありませんが、食事が取れないときなど一時的に利用する程度にとどめておくことをおすすめします。

そもそも、栄養ドリンクは疲労回復の効果が医学的に証明されているわけではありません。今回の子ども用には含まれていませんが大人用の場合、カフェインの作用によって一時的にすっきり感じるというものです」

Q.大人と子どもで栄養ドリンクの体への影響に違いはあるのでしょうか。

市原さん「子どもは体の機能が未熟なので、生薬などによる副作用が出やすくなったり、有効成分や、含まれている添加物によるアレルギーも出やすくなったりする可能性があります」

Q.「子ども」の中でも、8歳の子どもと14歳の子どもとでは影響に違いがあるのでしょうか。

市原さん「もちろん、8歳と14歳の内臓の機能は大きく違います。年齢が小さいほど、先述のような副作用アレルギーの出る可能性が高くなると考えられます」

Q.疲れたときは、どうするのが一番よいのでしょうか。

市原さん「バランスのいい食事をしっかりと取って、睡眠時間をしっかり取ることが基本です」

Q.テスト前などで「疲れたけど休めない」場合、子どもにどのようにさせるのがよいのでしょうか。

市原さん「テストなどで休めないときは誰にでもあるので、無理のないように頑張って、やるべきことが終わったらしっかり休ませましょう。そういうときに栄養ドリンクを使うこともあるかと思いますが、アレルギーなどが出る可能性もゼロではないので、テスト前の大事なときに初めて飲ませるようなことはやめましょう」

Q.子どもたちの中には、大人用の通常の栄養ドリンクを飲む人もいるようです。この場合、体への影響は。

市原さん「大人用の栄養ドリンクは成分の量が多く、カフェインが入っているので体への負担が大きくなります。また、カフェインの影響で元気が出たように感じると思いますが、避けるべきです。どうしても必要で飲むのであれば、せめて子ども用を一時的にしましょう」

価値観の変化でコピー変更

 次に、大正製薬の担当者に聞きました。

Q.「リポビタン Jr.」は、いつ発売したのでしょうか。

担当者「2000年1月に発売しました。3本パックを含む全ての包装単位が同時期の発売です」

Q.特徴は。

担当者「『リポビタンJr.』は対象年齢の8~14歳向けのミニドリンク剤(第3類医薬品)となっています。滋養強壮に効果的な五味子(ごみし)と刺五加(しごか)の2種類の生薬をはじめ、カルシウムマグネシウムを配合しており、ノンカフェインとなっています」

Q.どのような人が購入しているのでしょうか。

担当者「お子さまが風邪や発熱などで体力が落ちたときの栄養補給などに、親御さんが購入されることが多いようです」

Q.3本パックに入っていたキャッチコピー「疲れてもがんばれ」について批判の声があり、あるドラッグストアの通販サイトでも、このパッケージで売られていした。しかし、取り寄せたところ、コピーが「かぜや発熱などで体力が落ちたお子さまの栄養補給に」となっていました。パッケージが変わったのでしょうか。

担当者「パッケージは2016年に変更しております。変更後は現行のコピー『かぜや発熱などで体力が落ちたお子さまの栄養補給に(8~14才)』で販売しています

Q.なぜ、変更したのですか。

担当者「まず、お伝えしたいことは、『疲れたら休息する』というのが、疲労に対する弊社の基本的な考え方ということです。しかし、中には、勉強、部活動、習い事…と毎日忙しい日々を過ごされているお子さまが多くいらっしゃるのも事実です。そこで、栄養ドリンクを上手にご利用して滋養を取っていただきたいという応援の気持ちを込めたメッセージとして、発売当時は『疲れてもがんばれ! 小中学生(8~14才)」というコピーを記載してきました。

しかし、時代も変わり、世の中の価値観も変化していることから、2016年から現在の新しいコピーに変更しております」

Q.10本入りパックもありますが、そちらのキャッチコピーも変わったのでしょうか。

担当者「10本入りは発売当初から『いそがしい現代社会がんばれジュニア!!』のキャッチコピーのままで変更はありません」

Q.かつてのコピー「疲れてもがんばれ」について、「子どもに酷では」といった声はあったのでしょうか。また、変えたことへの反応は。

担当者「お客さまからの直接のお声については、回答を差し控えさせていただいております」

Q.通販サイトでは、旧来のコピーが残っているようです。新しいパッケージへの変更などは要望しているのでしょうか。

担当者「弊社の通販サイト内では、当該商品は販売しておりません。ネット販売をされているドラッグストアなどの通販サイトでは、旧商品画像のままの場合があるようです。ネット販売に関して弊社が関与することはできないとの考えから、掲載内容についての要望はお伝えしておりません」

Q.医師に子どもの栄養ドリンク飲用について意見を求めたところ、「生薬などによる副作用の懸念」「有効成分や添加物によるアレルギーの恐れ」を指摘されました。そもそも、なぜ子ども用の栄養ドリンクを作ったのでしょうか。健康や成長の面で懸念はないのでしょうか。

担当者「弊社はリポビタンJr.を通じて、お子さまの頑張りを応援したいと考えております。また、お子さまが風邪や発熱などで体力が落ちたときの栄養補給にもご使用いただければと考え、販売しております。リポビタンJr.は、お子さまの成長に合わせた処方となっています」

オトナンサー編集部

「リポビタンJr.」3本パック、「かぜや発熱などで…」の部分が「疲れてもがんばれ!」だった