違法薬物を所持、使用することはもちろん犯罪だ。だがしかし、彼らに必要なのは果たして懲罰なのだろうか。沢尻エリカ、田代まさしの逮捕で指摘される問題点……欧米などと比べ、薬物依存対策後進国とも揶揄される日本の現状とは……
◆薬物依存に必要なのは懲役よりも治療である!
今月16日、女優の沢尻エリカが、合成麻薬のMDMAを所持した疑いで逮捕された。その10日前の6日には元タレントの田代まさしが東京都杉並区の自宅マンションにて、覚せい剤取締法違反容疑としては通算4度目の御用となった。同日には、冬季五輪代表だったプロスノーボーダーの國母和宏容疑者(31)が、大麻を密輸した疑いで逮捕されるなど、有名人の違法薬物事件が相次いでいる。
なかでも来年のNHK大河ドラマでの撮影が進んでいた沢尻エリカ容疑者に関しては、連日テレビのワイドショーで取り上げられ、彼女の責任を厳しく問う声で溢れている。これだけ社会的制裁を浴びた上で、さらに司法の裁きが待っている。司法関係者によれば、
「沢尻容疑者は初犯ゆえ懲役1年6か月(執行猶予3年)が相場で、過去に同じ罪で2度服役している田代容疑者と、営利目的の疑いがかかっている國母容疑者は実刑の可能性が高い」
イバラの道は続くのである。
◆薬物依存は病気という認識がこれからは必要
日本では著名人の薬物事件が起こるたびに、SNS上で「またか」「全然懲りないな」などの落胆やあざけりの声が飛び交う。そうした中で、著名人による極めて不見識な発言があったと指摘するのは、精神科医の斎藤環氏だ。
「夜回り先生として知られる水谷修氏が、『薬物依存を克服するにはそれまでの人間関係や仕事、家族すべてを失う“底つき体験”が必要。でも田代さんはそこまでたどり着いていなかった』と発言しています。しかし、底つきは10年くらい前にはやった古い概念で、当事者を追い詰めるだけ。周りの人から見放されて孤立すれば、依存症が悪化するどころか自殺のリスクすら高めてしまいます」
薬物依存は、人格批判やバッシングでは何も解決されないにもかかわらず、メディアには専門的な知識を持たないコメンテーターが登場し、意見を撒き散らしている。では、彼らにはどのような治療が必要なのだろうか。薬物依存症治療の専門家として国内外の事情に詳しい原田隆之氏に聞いた。
「今回、田代まさしさんの報道で気になったのは、フードをかぶせた状態で連行する姿を繰り返しテレビで映していたこと。’16年4月、国連総会の薬物問題特別セッションでは、薬物使用者の人権と尊厳を守ることが再確認されています。刑罰だけでなく社会的な吊るし上げを受けた田代さんのケースは、国連決議に反しています」
この国連総会決議では、刑罰を与えるよりも治療や教育、福祉を優先することが宣言された。各国ともに薬物密売を重罪としているのは同じだが、薬物使用者まで刑務所に入れているのは、いまや先進国では日本だけだ。
「欧米諸国も10年ほど前までは、日本と同様の考え方でしたが、その後の研究で、薬物については刑罰より依存症治療のほうが効果的だということが多くのエビデンスで明らかになりました。拘禁下で薬物依存症治療を実施した場合、再犯率は約15ポイント低下。社会内で治療するとさらに効果的となり、再犯率はおよそ30ポイント低下することが実証済みです」
コスト面でも大きな違いがあり、日本の場合、受刑者1人当たりにかかる年間刑務所関連経費は約380万円。一方、アメリカ保健福祉省の調査によると、入院治療が1万2000ドル(約129万円)、外来治療にいたってはわずか2700ドル(約29万円)との試算が出ているという。
「EUの薬物政策においても、薬物使用の罪を犯した者には、教育、治療、リハビリテーション、アフターケアなどを提供すべきと規定されています。EUの多くの国では、薬物の自己使用を刑事罰や拘禁刑の対象外にする『非刑罰化』や、それだけでは処罰されない『非犯罪化』の動きが進んでいます。いずれは薬物をやめたいと思っている人は多く、捕まらないとわかれば、みずから治療を求めやすくなります。非犯罪化することで依存症の人は減るんですよ」
◆5年間も薬物を絶った田代まさしは立派
だが、本当に治療は実績をあげているのだろうか。なにしろ田代は、’14年7月の出所以来、薬物依存症リハビリ施設である「ダルク」のスタッフとして働いていた人物。首をかしげてしまうのは当然だろう。
そうした疑問に、日本の依存症治療の現場はどう答えるのか。アジア最大規模の依存症治療施設である大森榎本クリニックで長年依存症の臨床に関わっている精神保健福祉部長の斉藤章佳氏に尋ねた。
「薬物依存症は、『クリーンで生きる』つまり回復が軌道に乗るまで平均4〜5回は再発を繰り返すといわれているので、田代さんの5回目の逮捕は、回復のプロセスの中ではさほど珍しいことではありません。それよりもむしろ、これまで5年間も薬物をやめることができていたことを評価すべきです。ふつう、最初の治療の場合、治療を始めても数か月で再発する人が多いので、田代さんはよく継続できたなと思います。再発は回復のプロセスであるという考え方をすれば、むしろ逆に治療はうまくいっていると言ってもいいでしょう」
そんな斉藤氏は、田代容疑者が今後収監されてダルクのプログラムから離れてしまう可能性を考えると、残念でならないという。
「プログラムの成果が出ていたにもかかわらず、また刑務所に入ることになれば、一時期中断してしまいます。刑務所内でも特別改善指導としてプログラムが実施されてはいますが、社会内でのそれと比べると治療効果はあまり期待できません。薬物依存者が再発する場合、それぞれに特有の『引き金』があります。そうした誘惑を回避しリスクに対処できる力をつけることが治療の肝ですが、誘惑自体がほとんど存在しない刑務所に入ると薬物再使用のスイッチが入ることはなく、それで治った気になってしまうケースが大半です」
ある者は、覚醒剤を溶かす際に使っていたミネラルウオーターのペットボトルを見るとスイッチが入る。またある者は予防接種の注射器を見た瞬間に興奮を覚えるなど、その瞬間、彼らの脳はハイジャックされ、大切な家族や友人、恋人の悲しむ顔は吹き飛び、覚醒剤への渇望が起きるのだとか。
「田代さんは、『今日は多分やらないが、明日になったらわからない』と繰り返し言っていましたが、まさにその通りで、薬物依存症の完治はなく、やめ続けることで回復していきます。というのも、一度脳内に構築された条件反射の回路が根こそぎなくなることはないからです。たとえるなら、我々は梅干しを見ると唾液が出ますが、10年間梅干しに触れずにいたとしても、10年ぶりに梅干しを見ればおそらく唾液は出るでしょう。それと同じように、薬物依存症との付き合いは一生続くのです」(斎藤氏)
一生闘い続ける彼らに、社会はどう接していけばいいだろうか。答えはおのずと明らかだろう。
【斎藤 環氏】
筑波大学社会精神保健学教授、精神科医、批評家。専門は思春期・青年期の精神病理学、病跡学、「ひきこもり」の治療・支援や啓蒙活動など
【原田隆之氏】
筑波大学心理学域教授。専門は臨床心理学と犯罪心理学。法務省矯正局法務専門官、国連薬物・犯罪事務所アソシエートエキスパートなどを歴任
【斉藤章佳氏】
大森榎本クリニック精神保健福祉部長、精神保健福祉士、社会福祉士。専門は加害者臨床。20年以上、さまざまな依存症問題に携わる。『男が痴漢になる理由』など著書多数
<取材・文/福田晃浩・松嶋千春・野中ツトム(清談社)>
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