◆「桜を見る会」招待枠における、首相の地元・下関での差別的対応

田辺よし子下関市

桜を見る会問題」を野党が連日追及する中、安倍政権の支持率が5~7%下落した。公金投入のイベントに安倍後援会関係者が850人も参加、「お友達優遇」「税金私物化などと批判されているのだ。

 安倍首相地元下関からも批判の声が出ている。首相関連企業の談合疑惑など地元の優遇政治を追及してきた田辺よし子市議(無所属)は、「桜を見る会」における“差別的対応”について怒りを露にしていた。

「税金を使った『桜を見る会』への招待で、自民系下関市議に声をかけ、私を含めた非自民系市議は排除した。国政選挙や地方選挙で実働部隊となる系列市議への明らかな利益供与に当たり、選挙民への寄付(買収)を禁じた公職選挙法違反の疑いが濃厚です。下関市民を差別したことにもなります。選挙で市民の代表として選ばれたのが市議会議員なのですから」

 2017年3月の下関市長選では、安倍首相の秘書を7年半務めた元下関市議の前田晋太郎候補(市長)と、林(芳正・元農水大臣)派で3選を目指した中尾友昭候補(前市長)が激突。安倍首相が全面支援をした前田氏が初当選したが、下関市議も安倍派と林派に分かれて田辺氏は中尾氏支援に回った。

「地元下関では安倍首相と林元大臣がライバル関係にありますが、両者の代理戦争のような下関市長選で汗をかき、首相直系(元秘書の)前田市長誕生に貢献した安倍派市議へのご褒美、論考褒章のように見えます。林派の中尾氏を応援した私には、『桜を見る会』の案内は来なかったのです」(田辺氏)

◆各種選挙で首相に協力した地方議員への“お礼”!?

地元下関で安倍首相(左から2人目)と林芳正・元農水大臣(右から2人目)はライバル関係にあり、下関市議会は安倍派と林派に分かれている。写真は2012年山口県知事選

 地元・下関での差別的対応については『毎日新聞』も11月19日に、「桜を見る会 下関市議枠 安倍事務所から申込書」と銘打った記事を一面トップで出した。

「首相の地元・山口県下関市の複数の自民系市議が、安倍事務所名の参加申込書で自身の支援者を招待していたことが18日に判明(中略)。一方、共産や公明など非自民の複数の市議は『用紙をもらったことがない』と話す。野党の市議は『自民が公的行事を支持固めに使っている』と批判した」

「桜を見る会」には下関市議だけでなく、下関を選挙区とする友田保・山口県議ら安倍派県議も参加していた。彼ら安倍派地方議員が動くのは下関市長選だけではない。国政選挙や、山口県知事選・山口県議選などの選挙でも実働部隊になる。「桜を見る会」への招待は、選挙でお世話になった地方議員への首相からの“お礼”のように使われているのだ。

◆内閣総辞職につながる公選法違反、政治資金規正法違反!?

「桜を見る会」追及チーム(座長・黒岩宇洋衆院議員)は11月15日、安倍事務所への公開質問状提出について記者会見した

 この問題に関する野党追及チーム黒岩宇洋衆院議員(座長、立憲民主党)らは11月15日、安倍事務所への公開質問状提出について記者会見。質疑応答で筆者は黒岩議員にこう質問した。

――内閣総辞職、あるいは議員辞職につながるような案件だと認識しているのでしょうか。

黒岩議員:少なくとも、公選法違反や政治資金収支報告書不記載の疑いがかけられた。事務所の人間が法に触れた場合でも大臣が辞任しています。これは総理自身、内閣総辞職に当然つながることだと思っています。

杉尾秀哉参院議員:まずはあれだけ説明責任を繰り返しているわけですから、説明責任をまず果たしてほしい。それができないのであったら辞職していただくしかない。

――下関市議会議員の約半数が「桜を見る会」に参加していたという情報を地元から聞きました。呼ばれたのは安倍派の人が中心で、敵対する林(芳正・元農水大臣)派の人は呼ばれなかった。こんな差別的対応をするというのは、「選挙で応援してくれそうな人を呼ぶ」という意味合いが強いように思いますが。

黒岩議員:(統一地方選後半戦の)下関市議選は「桜を見る会」の後ではなかったのですか。(統一地方選前半戦の山口)県議選が終わった後ですから。そうなると、山口の県議のツイッターに「前夜祭の場で安倍総理統一地方選挙について触れた」とありますので、これは「(下関)市議選でよろしくお願いします」と言ったら典型的な選挙買収ですね。自分の陣営に有利不利というのも著しく不公平な話だと思いますが、あからさまな選挙違反だと思います。

◆選挙の前の利益供与、選挙の後のご褒美

下関市内の安倍首相事務所

 実際、島田教明山口県議会議員は4月12日のブログで「桜を見る会」についてこう明記していた。

「朝イチ、島田のりあき事務所で所用を済ませて、東京へ。夕刻からは安倍晋三総理後援会のパーティに。統一地方選と参議院議員選挙のこと。そして秋からの幼児教育無初夏にも言及される。幼児教育無償化は関係者はもとより保護者にとっても悲願のこと。幼稚園保育園の理事長として、どの政権も幼児教育無償化には踏み込んでくれなかったことを思い浮かべながら、感慨深く総理のスピーチを拝聴」

 黒岩議員が紹介した島田議員のブログは「事前買収疑惑」に当たるが、先の下関市長選は「事後買収疑惑」に相当する。選挙の前と後という違いはあるが、選挙民に対する買収(利益供与)を禁じた公選法違反濃厚ということでは同じだ。

 投票前に利益供与をして支援要請をしも、投票後に選挙でお世話になったことでご褒美をプレゼントしても、どちらも法律違反でアウトということだ。

◆公的行事を私物化、税金を使った「選挙対策」!?
 黒岩氏が「事前買収疑惑」に関する動かぬ証拠を示したので、筆者は「事後買収疑惑」に該当するように見え下関市長選について質問を続けた。

――その前にも『下関市長選(2017年3月)があって、林派と安倍派がバトルをして安倍派の人(安倍首相の元秘書の前田晋太郎・現下関市長)が勝ったのですが、安倍派(市議や県議)への恩返しのようにも見えます。要は、(下関)市長選で汗をかいた(安倍派)市議会議員に対するご褒美なのではないでしょうか。

黒岩議員:地元で長年続く政治抗争に勝利したことへの恩返しだと。「桜を見る会」が恩返し、プレゼントだとすると、はなはだ私物化だと思います。

 これは「公的行事の私物化」「公金流用による選挙対策」ではないのか。安倍首相は公金(税金)投入をした「桜を見る会」を利用して、地元の各種選挙で実働部隊となる地方議員に対してご褒美を与えたことになる。

 下関市議枠の発覚で公選法違反の可能性がさらに高まった安倍首相は、次第に危機的状況に陥りつつある。野党が追及チームを70人体制へと陣営強化、山口県現地調査を予定するなど徹底追及の姿勢を強める中、安倍政権は内閣総辞職に追い込まれていくのか、それとも疑惑一掃を狙った禊解散に打って出るのか、あるいはズルズルと死に体状態になるのか。緊迫度を増す永田町から目が離せない。

<文・写真/横田一>

【横田一】
ジャーナリスト小泉純一郎元首相の「原発ゼロ」に関する発言をまとめた『黙って寝てはいられない』(小泉純一郎/談、吉原毅/編)に編集協力。その他『検証・小池都政』(緑風出版)など著書多数

下関市内の安倍首相の事務所