「#KuToo」呼びかけ人の石川優実さんが12月3日パワハラ指針に、事業主がヒールのある靴の着用を女性のみに命じることはハラスメントと明記するよう求める要望書を厚生労働省に提出した。

「#KuToo」は12月2日に発表された「『現代用語の基礎知識』選 2019ユーキャン新語・流行語大賞」のトップ10にも選ばれた。一夜明け、東京・霞が関厚労省記者クラブで行われた記者会見には、国内外から多くの報道陣が集まった。

会見に参加した石川さんは、「ここまでやっても国が動いてくれないなんて、という思いが強い」と嘆きつつ、流行語トップ10に選ばれたことについて「ネットで生まれた運動で、現実世界とネット上での温度差があったが、一つネットの枠を超えた。流れが変わっていくのではないか」と話した。

●石川さん「ヒールを否定する運動ではない」

「#KuToo」は、職場でヒールのある靴の着用義務をなくす運動。石川さんが2019年1月、自身のツイッターで「私はいつか女性が仕事でヒールやパンプスを履かなきゃいけない風習をなくしたいと思ってるの」などと投稿したことをきっかけに、「靴(くつ)」、「苦痛(くつう)」、「#MeToo(みーとぅ)」を合わせたハッシュタグが生まれ、運動が広がっていった。

石川さんは冒頭、改めて「#KuToo」の意図について説明し、「ヒールを否定する運動ではない」と強調した。

ヒールを履きたい人は履いてください。履きたがっていないのに、女性だからという理由で義務付けることに異を唱える運動であることをわかって欲しい」

●要望書で求めた内容は?

要望書では、以下の3点を求めている。

(1)厚生労働省の審議会が11月にまとめた、職場におけるパワハラ防止のための指針の素案(https://www.mhlw.go.jp/content/11909500/000559314.pdf)に、事業主が業務上必要のないヒール付きの靴など、特定の外見・服装などを一方の性別のみに指示することは、性別に関するハラスメントに該当し得ると明記する

(2)男女雇用機会均等法を改正し、一方の性別のみにヒール付きの靴の着用など外見・服装等を指示することは、性別に基づく差別として禁止する

(3)就職活動関連事業者や大学などの教育機関に対し、就活でヒール付きの靴の着用が必要といった偏った情報提供をしないようにし、性表現の多様性に配慮した情報発信をするよう注意喚起する

●靴の問題「本当に瑣末なことなのか」

インターネット署名サイト「change.org」では、3万1464人分の署名が集まっている(12月3日午前9時)。

石川さんの著書『#KuToo――靴から考える本気のフェミニズム』の編集を担当した現代書館の山田亜紀子さんは、「#KuTooを『たかが靴ごときで、瑣末なことで騒いでいる運動』と捉えている人が多い」といい、そうした意見に疑問を投げかけた。

「瑣末なことを瑣末なままにしておいたら、状況は一向に変わりません。みなさんが、瑣末に思っていることが、本当に瑣末なことなのか、女性の体験を聞かなかったことにせず、瑣末なことにこだわる政治を求めていきたい」

石川さんも「大したことがないと思われがちかもしれませんが、人生がこれで変わってしまう人もいることを分かってほしい」と呼びかけた。

「立場が弱く、『私は履かない』と言って履かないことを選べる状況じゃないんだと思う。ヒール付きのパンプスで足を痛めて仕事を辞めた人もいれば、最初からそうした仕事を選ばない人もいる。職業選択の幅が狭まっていて、これは女性差別の問題。同じ労働者なら、同じ労働条件で働ける権利があることを、みなさんに認識してもらいたい」

「#KuToo」発起者の石川優実さん「パンプス強制はハラスメント」 指針に明記求める