ニュージーランド南島にあるハウロコ湖(Photo by Tyler Lastovich on Unsplash

 

国連は2017年を「開発のための持続可能な観光の国際年」と定めました。これを契機として「観光業にもサステナブルな視点を取り入れて発展させていこう」という機運が世界的に高まってきています。しかし、そもそもサステナブル・ツーリズムとは何なのでしょうか? 観光とサステナビリティは相容れないように見えますが、本当に両立できるのでしょうか?

 

そこで本稿では、エコ意識の高いニュージーランドで近年話題となっているホテルを紹介。その事業内容は日本人にとってもどこか親近感があり、何か大切なことに気づかせてくれます。

 

サステナブル・ツーリズムとは?

一昔前まで観光といえば、大型商業施設やホテルなど、開発を伴うマスツーリズムが主流でした。それらの大型施設は一見華やかなものに見えますが、同時に環境破壊や自然破壊をもたらすという負の側面も持ち合わせています。また、観光客からの収入に頼った結果、多くの地域で経済が低迷し、若者がいなくなるといった過疎化を生むこともありました。

 

そこで出てきたのが、サステナブル・ツーリズム。これは地域文化・環境の保全を第一ととらえた観光業のあり方です。この考え方では、元々地域に存在していた素材(自然や文化、歴史遺産)などに価値を見いだし観光資源として利用するので、大型の消費活動を伴いません。

 

また環境保全を目的にしているので、入場客や排ガスなどに関して制限を設けます。また地域の自然や現地の人々の雇用を生み出し、持続可能な生活が送れるようにすることもポイント

 

そのサステナブル・ツーリズムの成功例としても注目を集めているのが、ニュージーランド南部の都市・クイーンタウンにあるホテル「シャーウッド」です。このホテルはどのような取り組みを行っているのでしょうか?

 

まず、食事では地産地消を実施しており、レストランで提供される食材のなんと99%はニュージーランド産のもの。野菜の40%は敷地内にある畑で採れたオーガニックのものを使用しており、飲み物の60%は家族経営のワイナリーの商品が提供されていますが、これらは食材の輸送から生じる二酸化炭素を削減する狙いで行われています。

 

電力面は、施設内の248枚のソーラーパネルで電力を賄っており、無駄に発電することのないよう、余分な電力は送電網に返す仕組みになっています。

 

インテリアでは、リサイクル製品が活用されており、家具や調度品、室内の様々なものにリサイクル廃材を再利用しています。キッチンや風呂場の床はタイヤの廃材を、カーテンは軍隊の羊毛ブランケットを、カーペットには漁で用いられた網を再利用するなど、館内のあらゆるものがリサイクル廃材でできているという徹底ぶり。

 

また、地域のヨガインストクターアーティストを講師とした宿泊者向けのイベントを定期的に開催しています。「旅行先で特別な体験をしたい」という顧客のニーズに応えると同時に、地域で働く人々の収入源も生み出しています。

 

これらの取り組みに世界各国の旅行者が大きく共感。旅行サイトExpediaの「eco-friendly-holiday destination」ランキングでは世界のベスト10にも選ばれています。

 

値段ではなく値打ちを知る

ニュージーランド南島のクイーンタウンレイク地区にあるワカティプ湖

 

シャーウッドは、最初からその地域に存在している自然を守り、できるだけ環境負荷が少なく安らげる居場所を提供しています。さらに、ただエコなだけではなく、お金がきちんと地域のなかで循環していく仕組みも構築しているんですね。あるがままの良さを生かした観光業のあり方として、私たち日本人もシャーウッドから学べることは多いのではないでしょうか?

 

日本国内にもそれぞれの特色をもつ素晴らしい文化が各地にたくさんあります。現地に住んでいる人にとっては当たり前の風景であっても、ほかの地域や海外から訪れる観光客にとっては貴重な価値をもつ観光資源になり得るものばかり。

 

シャーウッドが行っていることは、日本人の「もったいない精神」と通じるところがありますよね。すでにあるものの価値に気づき、それを大切にしながら生かしていく。このような考え方が求められているのではないでしょうか?

 

サステナビリティ時代の新たなラグジュアリー。イタリアから広まる「森の高級マンション」

答えは足元にある。ニュージーランドから見る「サステナブル・ツーリズムへの道」