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  あるものが同時に複数の場所に存在しうる――それが量子の世界であって、人類が知る現象としてはおそらくもっとも驚くべきものであろう。

 もし、それがミクロの領域やシュレーディンガーのネコにとどまらず、この宇宙自体がひとつの量子物体で、他の宇宙と相互に作用しているのだとしたら?

 ちょっと何を言っているのかわからないかもしれない。だが、それがロシア、イマニュエル・カントバルト連邦大学の研究グループが導き出した結論だ。

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リビングで寝そべりながら、キッチンで餌を食べる猫

 あなたのお家の猫はリビングのソファでゆったりと寝そべっている。それでいて、キッチンではボウルに盛られた餌を食べている。

 そんな場面を想像することができるだろうか。猫はどちらかにいるのでなく、同時にソファとボウルがあるところに存在しているのだ。

 しかし、それはあなたが猫を観測する前の話だ。あなたがその姿を目撃した瞬間、猫の居場所はソファかボウルかどちらかに限定されてしまう。これが量子の世界だ。

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David D from Pixabay

 もちろん、猫でこのことを証明しようとしてもむずかしいかもしれない。だが、電子のようなミクロの世界では、確かにそのような振る舞いを計算から導き出すことができる。

 電子を観測すれば、それは1ヶ所にあり、それを記録することもできる。だが、観測していないときは、同時に複数の場所に存在する。その様子を「電子雲」という。常人の脳では容易に理解できない摩訶不思議な世界だ。

物体が瞬時に1ヶ所に崩壊、量子デコヒーレンス効果

 つまりは猫は電子とは振る舞いが違う。だが、なぜなのか?

 猫は、電子・陽子・中性子といった素粒子で構成されている。いずれの素粒子も量子の世界では先ほど述べたような奇妙な振る舞いをする。それなのに同時に複数の場所に存在するなんて猫は、いくら探したって見つからないだろう。

 もうひとつ不思議なことは、「観測」の不思議な効果だ。私たちが「観測」していないとき、物体はそこかしこに「シミ」出す。それなのに、それを見るや否や、認識不能なほど刹那の瞬間でぱっと1ヶ所に集まってしまうのだ。はたして、一体なぜそのようなことが可能になるのか?

 ちなみに科学者は「集まる」などとは言わず、「波動関数の崩壊」と表現する。また、量子の非局所性などが失われてしまうことを「量子デコヒーレンス」効果という。

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この宇宙はひとつの量子物体であり、さまざま宇宙と相互作用している


 これらの疑問に答えるために、アルチョーム・ユーロフ氏らが『Theoretical Physics』(9月18日付)で発表したのが、小さな1粒の素粒子と同じように、この宇宙自体もまたひとつの量子物体であるという仮説だ。

 それによると、私たちが暮らす宇宙は理論上、同時に複数の場所や状態で存在することができる。そして、宇宙それ自体が量子物体であるのなら、別の何かと相互に作用していなければならない。その何かとは、隣にある別の宇宙=世界かもしれないというのだ。

 ユーロフ氏らによれば、先ほどのデコヒーレンスなどそもそも存在しない。あらゆる量子関数は、別の世界において物理的に顕在している。つまり、ある世界では猫がソファで寝そべっており、また別の世界では猫が餌を食べている。

 この「多相互作用世界論」を用いれば、波動関数の崩壊という概念など完全に回避することができる。

 どんな量子の現象も、隣り合った「世界」の位置によって決まる。ふたつの世界が十分に近ければ、量子ポテンシャルが生まれる。反対に離れれば、量子ポテンシャルは下がり、私たちが普段体感している古典的な物理の世界に戻る。

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量子コンピューターの類推


 多相互作用世界では、私たちは目で見ることで波動関数を崩壊させる神秘的な観測者などではない。むしろ、宇宙という機械の単なる歯車に過ぎないのかもしれない。それは、量子コンピューターのような超最先端の機械だ。

 ユーロフ氏らは、彼らの宇宙モデルが、まるで量子コンピューターの量子ビットを思わせる理由を説明していない。もしや、私たちは何者かが作り出した量子コンピューターの住人なのではないだろうか? いや、どこかの世界にそのような現実があってもおかしくはない。

References:Study: Our universe may be part of a giant quantum computer/ written by hiroching / edited by parumo

全文をカラパイアで読む:
http://karapaia.com/archives/52285228.html
 

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