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 日本語の悪口の1つに「クソ野郎」という言葉があるが、実際の糞は役にたたない廃棄物ではなく、以外にも様々な利用価値があるようだ。

 大人の象は、一日に136キロ以上のエサを食べ、そのほとんどは草、小枝、葉、樹皮だ。そして、彼らは一日に16回から18回も排泄し、実に90キロもの糞を排出するが、スリランカの低湿地の小さな村ランデニヤでは、象の排泄物を再生資源として利用している。

 さまざまな工程を経て紙として生まれ変わるそうで、独特の魅力があるとして若者を中心に人気を博しているのだという。

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Poo Paper (Sri Lanka Sustainable Award Winning Technology)

できたてほやほやの糞がカラフルな紙製品に変身!

 象の排泄物に第二の生命を与えているのは、スリランカ初の象の糞ペーパー製造業者として知られるエコ・マクシマスだ。

 同社のブランドデザイナー、スサンタカルナラスネさんによると、きっかけは20年以上前。ツシタ・ラナシンゲというひとりの男が糞の山を見て「紙を作れるのでは?」とピンときたことだったのだとか。

 エコ・マクシマスの工場の作業台では、女性たちがさまざまなサイズノートの表紙を丁寧に作っている。また別の作業台では完成品が箱詰めされて、出荷の準備が整えられている。

 マクシマスは、今や紙だけででなく、文房具や土産物も作っていて、それらの製品は地元のマーケットや世界の30ヵ国でも販売されている。

 もちろん最初から糞ペーパーを上手く製造できたわけではなく、さまざまな試行錯誤を繰り返して徐々に製造工程を改良していったようだ。

 象の糞は近所のレスキューセンターによって持ち込まれ、できたてほやほやのブツは半分ドロドロの緑色をしておりもちろん臭う。だが熱帯の灼熱の太陽の元で乾燥させるとにおいは消えるのだという。

収集機で線維をたっぷり含んだ茶色の排泄物の山を蒸気ボイラーの中に入れて、1時間ぐつぐつ煮る。排泄物から細菌を取り除くんだ

と、工場長のヴィブハタ・ウィジェラトネ氏。

 工場の片隅にはしわくちゃの紙の束が積み重ねられている。色はさまざまで、土色、ブルートロピカルグリーン、ディープレッドなどがある。

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日干しした象の糞。茶色い色をしている

廃棄物をなんとか利用しようとしたスリランカの製紙法の歴史


 数千年前、スリランカの文字の多くは石に刻みつけられた。そののち、島民たちはヤシのような植物の葉に文字を書いた。ヤシの葉をボイルして日干しし、文字を書きやすくしたという。

 こうした"葉の紙"を「pus kola(古い葉の意)」と言うと、スリジャヤワルダナプラ大学・生物系統学のランディカ・ジャヤシンゲ氏は説明する。

 従来の製紙法は、スリランカポルトガルオランダイギリス植民地になって、セイロンと呼ばれていた時代の後で始まった。

紙のおもな原料は、リグニンとセルロースが豊富な木材パルプを使っていた。木材から化学的、機械的に繊維を分離することで下ごしらえをする。出た化学物質は、排水として放出される

とジャヤシンゲ氏は言う。

 問題は、紙を作るために毎年40億本もの木が伐採されることだ。紙は生物分解性があるのでプラスチックに比べて環境に優しいが、環境的には大きなコストがかかる。

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紙のパルプにはおもにふたつのものが含まれている。象の排泄物と大きな紙から出る切りくずだ

 1948年イギリススリランカを去った。1960年代に政府は12の工場を稼働させて、水田から出た廃棄物の藁を利用して紙を作ろうとした。

 だが、1993年までに残った工場はたったの2つ。そのひとつを、シラニ・フェアバンクスさんが経営していた。

 彼女はコロンボの輸出開発局に出向いたとき、バナナの線維から作った紙を偶然に目にして、そこでひらめいて「トリックダウン」という名のリサイクル会社を設立。

 この会社はのちに茶殻、バナナの皮、パイナップルの線維など廃棄物を利用して紙を作り始め、従来の製紙法を越えることになった。

 フェアバンクスさんの会社は現在、文具、工芸品、その他の製品のために、全国のメーカーから紙を調達しており、エコ・マクシマスもそのひとつだ。

フェアバンクスさんは

象の排泄物でできた紙は、市場でとても大きな需要がある。これらは多くの若者を惹きつける、独特な美的魅力がある

コメントしている。

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薄い金属の濾し器にパルプを注ぐ女性

象の糞と紙くずを再利用して製造されるエコペーパー


 さて、エコ・マクシマスの工場に話を戻すと、糞ペーパーを製造する際はまず「泡だて器」と呼ばれている1000リットルセメントタンクにゴムホースで水を入れる。

 そこに従業員が素手で湯気のたつ糞の蒸し煮を投げ入れるのだ。

 土色の線維でできた毛糸玉みたいに見えるが、

これは、ノートの中のページに使うパルプ。このパルプの3分の1は象の糞、3分の2は紙などの残りくずだ

とウィジェラトネ工場長

 紙などの残りくずは、コロンボの倉庫から出た紙の廃棄物や、エコ・マクシマスで一定の大きさにカットした紙から出た切れ端のこと。

 さらに、濃いマゼンタ色の液体を蒸し煮糞に加える。なお、エコ・マクシマスでは象の糞だけを使った紙も作っているが、その質感は文字を書いたり絵を描いたりするには適さないらしい。

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できた紙を日に当てて乾かす

象が排泄した翌日には早くも紙に生まれ変わるおもしろさ

 次に、女性ができたパルプを薄い金属の濾し器に注ぐ。濾し器を水に浸け、パルプを指で数秒混ぜて均一にする。

 その間に水分が下へしたたり落ちる。例えば150GSMの紙用なら、女性がふたりがかりで濾し器を持ち上げて少し大きなコットン布に押しつけ、それを3人目の女性がテーブルの上に平らに広げる。

 それから、布の四隅を折ってたたみ、布パルプシートをつくる。

 ちなみにGSMは製紙業界用語で平方メートルあたりのグラム数の略だ。普通のプリント用紙は100GSM以下、名刺用紙は400GSMとのこと。

 続いて、機械を使って圧縮して水を絞り出し、コットン地を取り除いて乾かす。

 それをきちんと積み重ね、太陽が直接当たる屋根の下で乾かすと、色が抜けてブルートロピカルグリーン、土色、ディープレッドなどのカラフルな紙になるのだ。

 最後は、ふたりの女性が大きなアルミシートアイロンシートのしわやでこぼこを一気にきれいにプレスしていく。

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アイロンをかける前の紙の束

 これが生製紙工程の最終ステップで、あとはカットして文房具に加工していくのみ。糞が紙に変わる行程はこれで完了だ。

 エコ・マクシマスの工場の外の庭では、象がゆったりと通り過ぎ、鼻で草をちぎっては食べ、移動しながら糞を落としていくようだ。

 それが明日には紙に変身するのだからまさにサステイナブル(持続可能)だなと感心するしかない光景である。

 ちなみにタイ北部にも、象の糞で作る紙工場があり見学することができる。


Elephant Parade Poo Poo Paper
written by konohazuku / edited by usagi

全文をカラパイアで読む:
http://karapaia.com/archives/52284982.html
 

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