(李 正宣:ソウル在住ジャーナリスト

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 曺国(チョ・グク)前法相のスキャンダルは「オープン戦」だったのかもしれない。韓国検察の刃がついに文在寅ムン・ジェイン大統領府を真っ向から狙い、「大統領府vs.検察」の、ともに退くことができない最終決戦がいよいよ始まろうとしている。

 現在、韓国検察は、曺国氏が大統領府の民情首席秘書官として勤務していた時期にあった2件の「職権乱用」の容疑を取り調べている。1つは「監察もみ消し事件」、もう1つは「選挙介入事件」だ。検察はこの2つの事件で、曺国の背後に控える大統領府の最高位層を狙っていると思われる。

 まず、監察もみ消し事件から説明しよう。

高官の疑惑をもみ消し

 事件は2018年12月に遡る。

 大統領府・民情首席室所属の特別監察班の元捜査官キム・テウ氏は、ユ・ジェス金融委員会金融政策局長(当時)の不正を見つけて監察を行ったが、曺国民情首席(当時)の指示で監察をもみ消されたと暴露した。

 これに対して当時、曺氏は国会に出席し、「(不正容疑に対する)根拠が弱いと判断した。ただ、捜査をしていく中で、不正情報とは関係のないささいな私的問題点が出てきたので、辞表をもらうことにした。(問題点は)プライバシーなので詳しいことは言えない」と述べ、キム氏の主張を否定した。

 だが今年2月、キム氏は曺氏をはじめとする関係者らを「職権乱用」の疑いで検察に告訴。その結果、11月27日、ユ・ジェス氏は金融業界から約5000万ウォン(約460万円)相当の賄賂を受け取ったなどの疑いで検察に逮捕されたのだ。当然、検察の次のターゲットは、この問題のもみ消しに動いたとされる曺国氏になる。

 韓国メディアが伝えた検察の調査によると、当時民情首席室は、金融委員会所属のユ・ジェス金融政策局長が多数の企業から賄賂をもらっているという情報をつかんだ。曺氏の許可の下で関連捜査が始まり、ユ氏が子どもたちの留学資金や航空券、ゴルフクラブなど5000万ウォン相当の金品を授受し、その見返りとして企業に対し、金融委員会名義の表彰状まで発行していたという。もちろん多数の証拠も押さえられていた。

 ところが、突然、曺氏が捜査の中止を指示。ユ氏は急いで辞表を提出して75日間行方をくらました。数カ月後、ユ氏は与党の国会政務委員会の首席専門委員に昇進して華やかに復帰した後、今度は釜山市の経済副市長という要職に起用された。  

 そのユ・ジェス氏を逮捕した検察が「次」を狙うのは当然なのだが、もしかするとそれは曺国氏に止まらない可能性も出てきている。韓国メディアによると、検察は曺氏が監察中断を決める過程でさらに上層部からの圧力があったのではないかと疑っているというのだ。ユ・ジェス氏の後ろ盾として親文(文大統領派閥)核心と呼ばれる人物の名前が多数取り上げられているのだ。果たして検察の捜査の手はどこまで伸びていくのか——。青瓦台関係者も息を殺して事態を見守っている。

「容疑なし」の候補者を選挙戦中に大々的に捜査

 さらに深刻なのは、2018年6月にあった地方選挙に大統領府が介入したという疑惑だ。

 今年3月、元蔚山(ウルサン)市長のキム・ギヒョン氏(自由韓国党所属)は、2018年6月にあった蔚山市長選挙の際に、警察から偏向的な捜査を受けたせいで落選したとして、ファン・ウンハ蔚山警察庁長を選挙妨害、公務員の選挙関与禁止違反、職権濫用などで検察に告訴した。

 2018年3月、当時のキム市長が6月に開かれる市長選における自由韓国党の候補に決まった当日、蔚山警察庁はキム氏の事務室に対する大々的な押収捜索を行った。側近や家族の不正に関する告発があったとの理由からだ。それから5月までの3カ月間、警察はキム氏に対する捜査を派手に行い、その様子はリアルタイムメディアで連日報道された。5月になると、警察は「起訴意見」で検察に事件を送致し、6月19日に行われた選挙でキム氏は落選してしまう。

 ところが、2019年3月、検察はキム氏に対して「容疑無し」の処分を下した。このとき検察は、99ページに及ぶ理由書を公表するという異例の措置をとったが、そこには、警察の不十分な捜査と無理な起訴意見に対する批判がぎっしりと書かれていた。

 こうした事態を受けて、キム氏は捜査責任者のファン・ウンハ警察庁長を職権濫用などの疑いで検察に告訴、検察は捜査に着手した。そうした中で検察は、キム氏に対する蔚山警察庁による捜査が始まったのは、大統領府の民情首席室から下りてきたキム氏関連不正疑惑報告書がきっかけだったことを明らかにした。

 大統領府の人事行政機関である民情首席室は高位公務員大統領の親戚に対する監察権限があるが、選出公務員に対しては監察が禁止されている。つまり、民情首席室が市長選で選ばれたキム氏の不正情報を収集して警察庁に送ったのは「職権乱用」ということになる。さらに、選挙運動が始まるタイミングに合わせて行われた蔚山警察庁の捜査については、選挙に影響を与える目的があったのではないかとの疑惑の目も向けられている。加えて、キム氏に対する捜査中に蔚山警察庁が捜査状況を9回にわたって大統領府に報告していた証拠や、民情首席室の職員が蔚山まで出向いて捜査状況をチェックしたという証言などがぞろぞろ出てくるに及んで、「大統領府が選挙介入していたのか」という論議が激しくなっている。

遺体で発見された大統領府元職員

 最も興味深いのは、キム氏を破って蔚山市の新市長に当選した宋哲鎬(ソン・チョルホ)氏が文在寅大統領の親友だということだ。過去に文在寅大統領は彼のことを「一生の同志」と表現し、民主党代表時代だった2014年には無所属で出馬した宋氏の選挙応援にも駆け付けている。

 こうして2018年の蔚山市長選挙は、大統領の親友を当選させるために大統領府が警察を動かして無理に捜査させたという疑惑と、それを裏付ける情況証拠がメディアを通じて次々と伝えられている。

 むろん大統領府は「(キム氏の)不正疑惑情報を収集したのではなく、大統領府に送られてきた苦情内容を警察庁に送っただけ」「民情首席室の捜査官が蔚山に行ったのは、他の業務のためだった」と、警察の捜査に介入したという疑惑を強く否定している。

 ところがここでも急展開があった。キム氏の不正疑惑情報を流すという行為に関わっていたとみられる大統領府の元職員が、検察による事情聴取を目前にして、遺体で発見されたのだ。現在のところ、死因は自殺とみられているが、事件はついに死者が出るまで広がり始めている。

民主主義の花」ともいえる選挙に警察の公権力を利用して大統領府が介入したという疑惑が、万が一事実と認められれば、文在寅政権は、曺国スキャンダルとは比較にならない打撃を受けることになるだろう。逆に、検察の捜査が不発に終われば、司法改革の名の下に、検察の権限は大いにそがれることになる。いずれにしても、大統領府と検察、互いの生存をかけた闘いになるだろう。

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