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AUTOCAR JAPAN sponsored by アウディ ジャパン
text:Kazuhiro Nanyo(南陽一浩)
photo:アウディ ジャパン

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もくじ

TTに魅せられ、伝統を継ぐデザイナー
AWD化、21世紀のスポーツカーの要件
クリアでタイムレスなデザインとは何か

TTに魅せられ、伝統を継ぐデザイナー

デッサウからアウトバーンで数時間、インゴルシュタットのアウディ本社すぐ隣のミュージアムにて、TTの原型となった1995年発表のプロトタイプ「Audi TT Roadster」の前で、われわれを迎えてくれたのは、エクステリア・デザイナーのダニー・グラントだった。

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ダニー・グラント

カナダ出身で英国のロイヤル・カレッジ・オブ・アートでデザインを学んだ彼は、ホンダとボンバルディエで経験を積み、初代TTが世に出た直後の2000年に入社した。

「そもそもアウディに移籍した理由は、TT以降のデザイン言語に魅了されたから」と語る彼自身、その後の初代A8やQ7から先代A3やA1スポーツバックなど、アウディ独特のクリーンなラインと無駄のないプロポーション創りに関わってきたひとりだ。

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「これまで、初代TTがバウハウス的と評されてきた理由は、本質的な意味でアートとテクニックの共生が感じられたからでしょうね」

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「機能を美しくまとめる追求はダ・ヴィンチやミケランジェロといったルネサンスの時代から実践されてきたことで、デザインスクールでも芸術史や美学史でバウハウスについてひと通りは教わります」

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「現代的な意味でのデザイナーという職種そのものが、バウハウスの発明でしょうね。われわれも自動車のスタイリストではなく、デザイナーであることをつねに意識しています」

AWD化、21世紀のスポーツカーの要件

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グラントによれば、TTのスポーツカーとしての機能性やマン-マシン・インターフェイスが生み出す人間性や情緒を、初代(8N)が幾何学的に表現したとすれば、ワルター・デ・シルヴァの指揮下で描かれた2世代目(8J)は進歩的、彼が方向づけた3世代目(8S)はアイコニック、それが歴代TTのデザインという。

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Audi TT Roadsterのヘッドライト。

「バウハウス的デザインというと、無機質でカクカクした線かと思われるかもしれませんが、機能とテクノロジーを美しいカタチにしていくのにアーティスティックで自由な発想でもって、世に広く膾炙させるための大量生産を前提としつつも、職人的手法で取り組むこと、それこそがむしろバウハウス的なのです」

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そしてアウディのデザインチームにとって、バウハウス的アプローチは外側から意識するものではなく、日々の実践として内面化されたものと感じているという。

「エクステリアでもインテリアでも、まず素材をよく知ること、そしてどのようなテクノロジーに活かすか? つまり基礎研究から加工、デザイン、エンジニアリング的な実現まで、様々な職域がありますが、われわれにはアートと技術との共生を信じる、そういう背景があるんです」

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初代TTが生まれた頃にはquattro、つまり独自のAWDシステムがアウディの走りを裏づける決定的なテクノロジーとなり、TTはスポーツカーとしてquattroの動的クオリティを代表する存在だった、という捉え方だ。

クリアでタイムレスなデザインとは何か

初代TTと同時期のスポーツカーといえば、BMWはFRレイアウトのZ3、メルセデス・ベンツは電動ハードトップのSLK、ポルシェはミドシップの初代ボクスターを擁していた、そんな時代だった。

その後の、ハイパワー化とドライビングプレジャーの追求、そしてきめ細かな駆動力制御と走行中の安定性を確保するという方向性は、quattroが決定づけたものといえる。

エフィシェンシーの高さと安定感を、明快なプロポーションと意匠でまとめ、20年前に大胆で冒険的と評されたTTのデザインはいわば、必然の産物でもあったのだ。

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「建築とクルマの異なるところは、後者はモーション、つまり静的状態でのダイナミズムや、動きの中での安定感を表現する点でしょうね」とダニー・グラント。

「わたしたちは当然、デジタルツールも用いますが最初はスケッチありき。3Dデータはプロセスの1つというだけで、実物大のクレイモデルも早い段階から用います」

「視覚的な重心位置などは実際の目で見ないとわからないものですし、最新のTTにも初代のDNAが入っていると、結果的にいわれますね」

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アウディのデザイン・クオリティとは、「クリアでタイムレスであること」と、グラントはいう。そのアプローチを可能にする概念として、素材への知識と芸術的感性、そして人間の生活を豊かにするという意志、これらのシンビオーズ(有機的結合)に、今では環境への配慮という要素が加わりつつあるそうだ。

「クールといわれるものが、社会的に有害であれば、即座にカッコ悪いものに転じます。ソーシャル・アクセプタブルな、責任あるプロダクトであること、です」

ダイナミズムの中で安定感を発揮し続けること、人の感性に寄り添うインテリジェントなシステムであること。

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キャプション

TTにはバウハウスに連なる、芸術的感性の理性的アプローチが息づくからこそ、過去と未来の中立点に止まり続けるタイムレスな存在感がある。

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アウディTTに宿る「バウハウス的要素」とは? その100周年に現地を訪ねた インゴルシュタット篇