日弁連は12月4日の定例記者会見で、児童相談所にある児童虐待についての情報を警察に全件一律に提供するという取り決めは問題があるとする意見書をまとめたことを明らかにした。意見書は11月21日付。厚生労働省や全国の児童相談所約70カ所に届けられた。

2018年3月に東京都目黒区で発生した虐待死事件をきっかけに、児童相談所から警察へ情報を提供する内容の協定を締結する動きが全国的に進んでいる。

日弁連は、児童相談所と警察の連携は重要であるものの、全件一律の情報提供が虐待防止に効果的とは考えにくく弊害が大きいとし、「全件一律」という対応について警鐘を鳴らす。

児童相談所は相談機関でもある

磯谷文明弁護士(日弁連・子どもの権利委員会事務局長)は、児童相談所が、自ら虐待してしまうことに悩む親や虐待の被害者であり非行にも関わるような子どもから相談を受けることも想定されている機関であることを指摘。

その児童相談所が保有する情報が全て警察に把握されるとなれば、そういった親や子どもが児童相談所へ相談する意欲を失いかねず、その結果として児童虐待の発見や対応が遅れるおそれがあるという。

また、児童虐待に分類される事案であっても、虐待の程度は様々であって、たとえば「ついつい子どもを怒鳴ってしまった」だけの事案などについては、警察に情報提供することが事案の解決に結びつくとは考えられないという。

●事案の内容に応じて、真に効果的な質の高い連携を模索するべき

日弁連は、調査権限・能力が限られている児童相談所は、事案の内容に応じて警察と連携することが有益であり、警察から児童相談所に対する情報提供が適時適切に行われることが望ましいとしている。

その上で、児童相談所から警察への情報提供について、児童相談所が児童の福祉の観点から提供の必要性を個別に判断し、援助の要請などをするべきとしている。

奥国範弁護士(日弁連事務次長)は、「児童相談所と警察の連携そのものが重要であることは、十分承知している」としたうえで、「児童虐待対応の要は児童相談所であって、警察ではない。『全件一律』のような安易な対応ではなく、まずは児童相談所そのものの機能強化を進め、児童虐待防止を図るべき」と語る。

児童相談所で進む「虐待情報はすべて警察に提供」 日弁連が「弊害もある」と警鐘