知らない人はいないであろう音楽番組『ミュージックステーション』を、音楽ブロガー・レジーが定点観測する連載コラム『月刊 レジーのMステ定点観測』。
【動画】Mステ出演アーティストのMV
2019年11月のMステの放送は3回。8日と29日には通常放送、22日には2時間スペシャルが放送されました。
ご存知の通り10月から放送時間が21時スタートと変更になって2ヵ月。徐々に全貌が見えてきた「新生Mステ」について、今月は前後編にて掘り下げていきたいと思います。まずは90年代から音楽シーンを牽引しているスターたちの話題からどうぞ。
■紡がれるJ-POPの歴史(1):小沢健二
2018年2月の「アルペジオ(きっと魔法のトンネルの先)」での出演以来、約1年半ぶりにMステに登場したのが、11月13日に久しぶりのオリジナルアルバム『So kakkoii 宇宙』をリリースした小沢健二です。番組から公式発表のある前にツイッターで出演をフライング発表するなど放送前から「オザケンらしさ」を溢れ出していましたが、この日もオープニングでスマホをいじりながら階段を降りてくるなど存在感を発揮していました。
前述の「アルペジオ(きっと魔法のトンネルの先)」では満島ひかりと、またその前にMステに出演した「フクロウの声が聞こえる」ではSEKAI NO OWARIと共演するなど、異なる世代の表現者との交流も活発な小沢健二。
この日の放送ではライブパフォーマンス自体は小沢健二本人のみのものだったものの(とはいえバックには若いミュージシャンを従えていましたが)、歌唱前には彼のファンの風間俊介がVTRで過去の曲の歌詞について熱く語るコーナーがあり、それに応えてオザケンも歌唱後「風間くん、ありがとう」とひと言。自身の影響を受けた俳優とのエール交換を楽しんでいました。
この日披露された「彗星」は、流麗なストリングスとファンキーなリズムセクションが絡み合う「往年のオザケンサウンド」に近い世界が展開されるインパクト大の楽曲。ラストの掛け合いパートでは、コーラスの際にこの日一緒に出演していた東京スカパラダイスオーケストラのメンバーが映し出されるナイスなカメラワークもありました。
過去に何度も共演している盟友とも呼ぶべきスカパラの面々がノリノリで“溢れる愛がやってくる”“高まる波近づいてる”と歌いまくる光景からは深い繋がりを垣間見ることができて、こちらまでグッときてしまいました。
「彗星」と『So kakkoii 宇宙』のリリースを皮切りに各種メディアに積極的に出演し、SNSでもちょっとした炎上騒ぎ(?)も含めてたくさんの話題を提供している最近の小沢健二。90年代のオザケンフィーバーを思わせる……と言うとさすがに大袈裟すぎますが、長年の沈黙を経ての現在のアクティブな活動スタイルの先にどんな展開が待っているのか楽しみに待ちたいと思います。
■紡がれるJ-POPの歴史(2):椎名林檎
その小沢健二とも交流があることを2014年10月24日のMステ出演時に明かしていた椎名林檎は、小沢健二登場2週間後の11月22日の回に出演。ディープなファンから集計した楽曲の人気ランキングの紹介からの流れで、1999年リリースの彼女のデビューアルバム『無罪モラトリアム』の冒頭を飾る楽曲「正しい街」を披露しました。ライブパフォーマンスとして演奏されたのは実に11年ぶりとのことです。
最近では宮本浩次やトータス松本らとコラボ楽曲を披露したり、またそのふたりとのが楽曲「獣ゆく細道」「目抜き通り」(どちらも紅白でも披露されました)がジャズっぽさやビッグバンド調が導入されたサウンドだったりと、“ロックシンガー”というよりは“広義の大衆歌謡の歌い手”とでも言うべきポジションをとっていたのがここ数年の椎名林檎のあり方だったように思います。
一方で、「正しい街」がまとっているのは正統派のロックサウンド。そんな楽曲に対して、椎名林檎は多少のアレンジは施しつつも基本的には原曲に近いテイストで真っ向勝負。ギターにNUMBER GIRLの田渕ひさ子、ベースにTOKIE、ドラムにBOBOという豪華なバンドとともにギターをかき鳴らしながら絶唱する椎名林檎の姿は、キャリアを経てもなお彼女にデビュー当時のような“尖った魅力”が備わっていることを存分に感じさせてくれました。
また、演奏前には、この日ソロで出演していたToshlの彼女に対する「(椎名林檎がシーンに登場してきたときは)こんな女性アーティストが日本にいるんだなと度肝を抜かれた」というコメントに対して恐縮しきり、というMステならではのひとコマも。椎名林檎とX JAPANというとだいぶ活躍のフィールドが異なるようにも思いますが、新しい才能の登場が様々なジャンルのミュージシャンを刺激していたんだなということがわかる貴重なトークでした。
最近では90年代の音楽は「ノスタルジー消費」の一種として扱われがちですが、小沢健二や椎名林檎のようにあくまでもリアルタイムの生き様を見せている人たちがちゃんと存在するというのは日本の文化全般においても意味のあることなんじゃないかなと思います。今後もMステがそういうシーンを切り取っていってほしいですね。
[前編]はここまで。[後編]では11月のMステを彩ったお笑い芸人の活躍についてお届けします。12月6日(金)の配信をお待ちください!
TEXT BY レジー(音楽ブロガー/ライター)
【2019年11月8日放送分 出演アーティスト】
[ALEXANDROS]「ワタリドリ」「あまりにも素敵な夜だから」
東京スカパラダイスオーケストラ×習志野高校吹奏楽部「風のプロフィール」
小沢健二「彗星」
E-girls「Easy come, Easy go」
Kis-My-Ft2「Edge of Days」
【2019年11月22日放送分 出演アーティスト】
Toshl「真夏の夜の夢」&視聴者生投票で名曲カバー!
TWICE「Fake & True」
heysayjump「獣と薔薇」
GENERATIONS from EXILE TRIBE「DREAMERS」「One in a Million -奇跡の夜に-」
山崎まさよし × 北村匠海「影踏み」
映画『アナと雪の女王2』公開当日!名曲特集 May J.、武内駿輔、中元みずきが「レット・イット・ゴー ~ありのままで~」からTV初歌唱の最新曲「イントゥ・ジ・アンノウン~心のままに」を披露
椎名林檎「正しい街」
ジェニーハイ「シャミナミ」
秦 基博「Raspberry Lover」
【2019年11月29日放送分 出演アーティスト】
三浦祐太朗「さよならの向う側」
Perfume「再生」神木隆之介と浜辺美波が応援に駆け付ける!
木梨憲武「GG STAND UP!! feat. 松本孝弘」
中元みずき「イントゥ・ジ・アンノウン~心のままに」
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