10月に初の単独大型音楽イベント「にじさんじ Music Festival 〜Powered by DMM music〜」を大成功させたバーチャルライバー(VTuber)グループ「にじさんじ」が早くも2度目の音楽イベントを実施。「にじさんじ冬の陣2019-2020」プロジェクトの一環として、「Virtual to LIVE in 両国国技館 2019」12月8日に開催される。

エキレビ!では、初めて投稿した歌動画「RE:I AM/Aimer covered by 戌亥とこ」の再生数が125万回を越えるなど、VTuber界屈指の高い歌唱力で知られる戌亥とこにインタビュー。この前編では、ライバーデビューからの約8か月間を振り返りつつ、初めての音楽イベント出演に対する思いや、デビュー配信から注目を集めるきっかけにもなったリゼ・ヘルエスタアンジュ・カトリーナとの同期リレー企画などについて語ってもらった。

この8か月は何年分の経験したんかなってぐらい濃い時間
──3月22日のデビューから約8か月が過ぎました。戌亥さんにとって、この8か月はどのような時間でしたか?

戌亥 とにかく時間経つのが早くて。気持ち的には8か月も経ってる感覚は全然ないし、もう年末が迫っていることにびっくりしています。この8か月で何年分の経験したんかなって思うぐらい濃い時間でした。デビュー当初は本当に右も左も分からないままやっていたし。あれこれ勉強しなきゃって思いながらバタバタしてたら、もう12月みたいな。

──自分で配信するためには、配信用ソフトの操作など覚えることも多そうです。

戌亥  めちゃくちゃ多かったですね。 YouTubeの配信設定もそうだし、配信をするためのOBSというソフトの設定とか、あれこれ分からないことだらけで。にじさんじの先輩方にいろいろと教えていただきながら、なんとかやっていました。

──勝手なイメージですが、戌亥さんは機械やパソコンなどに詳しいタイプではなさそうな気が……。

戌亥 全然、駄目ですね。機械音痴もいいところで、線を差したらすぐに使えるものくらいしか無理みたいな。設定が必要だったり、ドライバーを入れてとか言われると、「わー!」ってなります。

──スマホの機種変もできるだけしたくないタイプですか?

戌亥 全然したくない(笑)。そういう、データを移すとかもすっごい苦手です。

──そんな戌亥さんがにじさんじバーチャルライバーに興味を持った切っ掛けを教えてください。

戌亥 たまたま、ネットでにじさんじ樋口楓さんのライブ(2019年1月開催の「KANA-DERO」)の情報を見つけた時、「バーチャルライバーってなんぞや?」と思って。ちょっと調べてみたら、ちょうどその日からにじさんじのオーディションが始まっていて。別に落ちたら落ちたでいいし、受かったら楽しそうやし、なんとなく受けちゃった感じです(笑)。

──オーディションに合格した時は、主にどのような配信活動をしてみたいと考えていましたか?

戌亥 正直、バーチャルでどういったことができるのかも、まったく想像がついていなくて。デビュー前もデビュー直後も、やりたいことはぼんやりしてました。ただ、歌うことは前から好きで、バーチャルでも歌はできるやろと。だから、何ができて、何をやったらリスナーさんに楽しんでもらえるのかとか、まったく分からない状態の時、やりたいと思っていたのは歌でした。

──でも、歌配信や歌動画の投稿は、権利の確認や音源の手配などで意外と手間がかかるそうですね。

戌亥  そうなんですよ(笑)。デビューしてから、いざやろうと思ったら、歌も案外大変でした。

──最近は、深夜に人気ゲーム「マイクラMinecraft)」で釣りをしながら雑談する「夜釣り配信」も多いですね。

戌亥 私、けっこうシングルタスクなタイプで。ゲームに集中しちゃうと、リスナーさんのコメントをあまり上手に拾えなかったりするんです。でも、釣りやったら、何も考えずにできるので。

──マウスをクリックするだけでできますね。

戌亥 私、(匿名メッセージサービスの)マシュマロとかで、「とこちゃんの声は聴いてると眠くなる」とか、「寝る時によく聴いてます」と言われることが多くて。じゃあ、夜にあんまり騒がずにできることないかなと思った時、夜釣りは、めっちゃぴったりやなと思って。コメントも読めるし、釣りは楽しいし。

──「マイクラ」の釣り自体も好きなのですか?

戌亥 どんなレアアイテムが釣れるかなって、ガチャみたいな気持ちでやってます。ガチャを回すのは大好きなので、コメントを拾って話しながら、無料ガチャをずっとやってる感じです。

「RE:I AM」の歌動画に対する反響は、自信につながった
──戌亥さんといえば、やはり高い歌唱力が注目されることは多いと思います。4月に公開した初めての歌動画「RE:I AM/Aimer covered by 戌亥とこ」の再生回数は125万回を越えました。自分の歌声が、それだけ多くの回数、聴かれていることに関しては、どのような感覚ですか?

戌亥 いっぱい聴いてもらえたら嬉しいなと思いながら作ったけれど、実際にこれだけ聴いてもらえるなんて思ってなかったので、凄いびっくりしています。あまり実感がなくて、数字だけを見てると、自分の動画じゃないみたいです(笑)。でも、「RE:I AM」がきっかけで「とこちゃんのことを知りました」と言ってもらえたり、「今でも毎日聴いてます」と言ってくれたりする人もいて。数字のことだけではなくて、動画に対する反響を含めて、すごく自信につながりました。

──VTuberなどの配信者が歌う曲の中には、いろいろなチャンネルで目にする定番曲もありますが、「RE:I AM」は、そういうタイプの曲ではありません。戌亥さんが最初の歌動画に、この曲を選んだ理由を教えてください。

戌亥 すっごい単純な話なんですけど……。好きな曲ではあったのですが、この曲だけのすごく特別な思い入れがあって、「1曲目はこの曲じゃないと嫌だ!」とか思って決めた感じじゃないんです。そろそろ歌動画を作って上げたいなと思った時期に、たまたま頭の中でずっとループしていた曲で。その時は、この曲が一番気分も乗って歌えるかなと思って選びました。

──初めての歌動画を作る時、特に大変だったことはありますか?

戌亥 とにかく歌うのが大変でした! めっちゃ難しいので、「何で、この曲にしたんや!」って泣きながら歌ってましたね(笑)。自分が好きで選んだんですけど。

──誕生日の9月9日に公開された2本目の歌動画「Disney Medley|covered by 戌亥とこ」は、ディズニーソングのメドレーでした。ディズニーソングの歌動画を出すことは、活動の初期から考えていたのですか?

戌亥 初期はまったく考えてなかったです。ただ、家にいる時とか、いつも一人でずっと歌ってるんですけれど。歌ってるのは、だいたいディズニーの曲。だから、動画にしようと思ったんですけれど、好きな曲が多くて1曲に絞られへんから、メドレーにしちゃえって感じでした。

──この動画の作成には、非常に時間がかかったそうですね。

戌亥 好きな曲が多すぎて選曲でかなり迷ったのと。メドレーなので曲の繋ぎの部分が難しくて。あとは、動画のイラストも自分で描いたのですが、曲ごとにイラストを変えたので、絵の構図のセンスが無さすぎて気が狂いそうになりました(笑)。

──イラストも含めて素敵な動画です。先日のお悩み相談企画で、歌の上達法を知りたいというリスナーの質問に、好きな曲や歌手の真似をすると答えていました。戌亥さんがよく真似をしていた歌手や曲などを教えてください。

戌亥 特定の「この人!」とか「この曲!」みたいなのはあまりなくて。わりとバラバラだったりするんですけど。比較的多いのは三浦大知さんですね。歌い回しとか、語尾の締め方とかすごいお洒落なので、よく真似しています。

急に夢の方から「バン!」ってやってきたみたいな感覚
── 10月に戌亥さんら8組のVTuberが参加しているカバーコンピレーションアルバム「IMAGINATION vol.2」が配信され、11月27日にはCDでも発売されました。自分の歌が収録されたCDが発売されて、店頭にも並んでいることへの感想を教えてください。

戌亥 私、まだCDの現物を見ていなくて、若干、実感が薄かったりもするんですけれど。Twitterでエゴサしてると、「CDが届いた」とか呟いてくれている人がいて。「その中に私の歌も入ってるんや!」みたいな(笑)。それに、普段の歌動画は家で自分で録ってるんですけれど、ちゃんとしたスタジオで録らせていただけて。プロのスタッフさんたちの前で歌うのは緊張もしたけれど、いろいろな意見ももらえるし貴重な経験ができました。

──戌亥さんがソロで歌ってるのは、いきものがかり「気まぐれロマンティック」ですが、選曲も戌亥さんが?

戌亥 まず「2000年前後のヒット曲」というお題があったので、その頃にどういう曲がヒットしていたのかなって調べて。私から何曲か候補のリストを提出したんです。その中から、この曲が選ばれました。

──ヒット曲の中から、この曲を候補にいれたポイントを教えてください。

戌亥 その頃のヒット曲って、けっこうバラードが多くて。他のVTuberさんもバラードを歌われる方が多かったので、私はアップテンポな明るめの曲が良いなと思って。元々、聴いたこともある曲だったし、少しパワーもある感じなので、バラードの中にこの曲が入っているとパキっとして良いかなとか、全体のバランスも考えながら選びました。明るめの曲の中にはアイドル曲もあったのですが、私、そういう曲は、ちょっと合わないので(笑)。

──12月8日「Virtual to LIVE in 両国国技館 2019」では、初めての音楽イベント出演を果たします。ライブイベントへの出演は、夢や目標でもあったのでしょうか?

戌亥 「いつかできたら嬉しいな」みたいなぼんやりした夢ではあったけれど、具体的な目標にするには、まだまだ遠い感覚でした。歌動画の本数も少ないし、もしそういう機会があるにしても、もっと先のことかなって。だから、急に夢の方から「バン!」ってやってきたみたいな感覚です(笑)。

──出演が決まった時には驚いたのでは?

戌亥 ドッキリやと思いました(笑)。聞いて、2、3秒くらいは「私で大丈夫ですか?」と思ったんですけれど。声をかけてもらえたことはすごい嬉しかったし、誰が私を選んでくれたのかは分からないけれど、期待してくれている人がいるということなので、その期待を越えられるように頑張ろうと思いました。

──「Virtual to LIVE in 両国国技館 2019」の開催と出演者は、10月の「にじさんじ Music Festival」の終演後にサプライズ発表されました。最後に戌亥さんの名前が発表された時も大きな歓声が上がっていましたが、その光景は配信などで観ていましたか?

戌亥 観てました。そのタイミングで告知されることは聞いていて。順番に出演者が発表された時、みんなが「わー」ってすごく盛り上がっていたので、最後に自分の名前と顔が出て「シーン」ってなったらどうしようって、すごい怖かったです。でも、自分が出た時も、みんな同じようにペンライトを振りながら盛り上がってくれているのを観て安心したし、同時に楽しみにしてくれているみんなに、きちんと見せられるものにしなきゃという思いになって。背筋がスッと伸びたというか、改めて気合いがさらに入りました。

──「Virtual to LIVE in 両国国技館 2019」に向けて、戌亥さん自身が今、一番楽しみにしていることを教えてください。

戌亥 普段、(リスナーの)みんなとは画面越しにしかお話しできないじゃないですか。同じ空間でみんなと一緒に過ごせるのって、この先、またあるのかどうかも分からないくらい貴重な経験やと思うんです。「とこちゃんに会いに、初めてライブに行くよ」と言ってくれているリスナーさんたちもいるので。私のためにライブに来てくれた人たちがたぶん光らせてくれているであろうペンライトを見るのが楽しみです。

「最後に歌ってもらえたら、良いのができそう!」みたいな流れに
──急に話題は変わるのですが、同じ日にデビューした同期、リゼさんアンジュさんとは非常に仲が良く、三人のユニット「さんばか」での活動も大人気です。三人でオリジナルソングを作るという初配信でのリレー企画も話題を集めました。なぜ、あのような企画をやることに?

戌亥 せっかく三人で一緒の日にデビューするし、三人で何かやろうって話をリゼはんとアンジュはんが提案してくれて。私も「楽しそうやね」みたいに言ってたんです。でも、実際に何をするか考え始めたのは、けっこうギリギリになってからで、「オリジナル曲を作ることくらいしか思い浮かばない」という話になって。私も他に思いつかなかったし、「じゃあ、それでいこうか」みたいな感じで決まりました。リゼはんがメロディアンジュはんがドラム私が歌っていう担当を決めただけで、どんな風に曲を作るのかみたいな詳しい打ち合わせは特にしていなくて。当日、二人の配信を見ながら、できあがっていくゴミ音源……あ、オリジナルソングを聴いて「こういう感じなんや……」って(笑)。その音源をもらって、本当にあの場で即興で歌いました。

──リレー企画の内容が決まるよりも先に三人の配信順は決まっていて。結果的に戌亥さんがアンカーとして歌うことになったのですね。

戌亥 そうです、そうです。デビュー前に初配信の打ち合わせとかで話した時、二人には「歌うのが好きやねん」みたいなことは伝えていて。そしたら、ちょうど私の配信が最後だったから、「最後に歌ってもらえたら、良いのができそう!」みたいな流れになって。「え? そう? 大丈夫なんかな?」と思いながら当日を迎えました。

(12月7日公開予定の後編に続く)

■イベント概要■
Virtual to LIVE in 両国国技館 2019」

2019年12月8日(日)
16:00開場/17:00開演
両国国技館

【出演】
月ノ美兎樋口楓、静凛、剣持刀也勇気ちひろ、える、鈴鹿詩子森中花咲椎名唯華笹木咲ジョー・力一鈴原るる夢月ロア御伽原江良戌亥とこ

【公式サイト】
https://event.nijisanji.app/vtlryougoku2019/

■「Virtual to LIVE in 両国国技館 2019」関連番組概要■

「『Virtual to LIVE in 両国国技館 2019』イベント直前突撃レポート」
12月8日(日)15:30〜16:45
出演者:青木佑磨ニュイ・ソシエール(にじさんじ)、早瀬走(にじさんじ)
放送ページ
https://live.nicovideo.jp/gate/lv323134207
※無料放送

「ライブ本編」
12月8日(日)17:00〜
視聴チケット価格:4,500ポイント(税込4,500円)
放送ページ
https://live.nicovideo.jp/gate/lv322887587

(取材・文=丸本大輔)

2019年3月にデビューしたにじさんじのバーチャルライバー戌亥とこ。普段はふんわり柔らかな口調で話すが、マシュマロ(匿名の質問)に対してズバッと核心を突く回答を返したりするなどのギャップも魅力。