11月26日、東京・立正大学で学園開校150周年プロジェクト発足イベントが行われ、お笑いコンビ・キングコングの西野亮廣さんが講演を行いました。講演テーマは「新時代の若者の生き方について」。「挑戦したい人のことは応援したいけれど、無責任に背中は押せない」という西野さん。ご自身の経験をもとに、お金に関わる話を展開されました。

社会に出て挑戦する人に知っておいてほしいこと

西野さんはお笑い芸人として人気を集め、2016年に『えんとつ町のプペル』という絵本を制作されました。絵本は40万部売れ、映画化が決定。現在は制作作業の真っ最中だそうです。絵本以外にも美術館を造ったり海外に小学校を建てたり、エンターテインメントを中心に事業を拡げられています。

今回の講演にあたり、挑戦する人に対して社会で何が待っているかを伝えないまま背中を押すのは無責任なので、その話をしたいという西野さん。社会に出て活躍する上で挑戦を阻むのは「お金」だそう。お金が尽きてしまえば、どれだけパフォーマンスを出しても、その後の活動は難しくなってしまいます。

日本では義務教育の中で「お金」の勉強は行わないため、お金音痴のまま社会に出てしまう。お金の集め方が分からず、失敗する確率を上げられた状態で社会に出されることになるため、お金のことを知っておく必要があるとして、講演をスタートさせました。

『えんとつ町のプペル』からお金の集め方を学ぶ

西野さん曰く、お金の役割はここ1~2年で大きく変わっているそうです。『えんとつ町のプペル』は40人のスタッフと一緒に分業制で制作されたそうですが、そもそも絵本を一人で作るというこれまでの流れに疑問を持ったことから、絵本制作はスタートしたとのことでした。

「絵本業界は市場が小さく、5,000部・10,000部売れればヒットと言われるような世界です。売上が見込めないから制作費が用意されず、スタッフさんを雇うことができない。だから一人で作るしかない状況でした。
クリエイターの本分はお客様を感動させること。『えんとつ町のプペル』は色を塗るプロ・キャラクターデザインのプロなど、40人で作ることで喜んでもらえる作品ができるのではないかという採算が取れたので、最初にクラウドファンディングで資金調達することにしたんです。」

クラウドファンディングとはインターネット上で自分の活動や企画を発信することで、その思いに共感した人・応援したいと思った人から資金を募るサービスのことです。これを使って資金を集め、新しい方法で絵本制作を行った西野さん。ここで大切なのは、自分が叶えたいことを達成するための手段を知っておくべきということです。

「”知らない”という感情と”嫌い”という感情が極めて近いところにあり、嫌いなものを嫌っているのではなく、知らないものを嫌っていることがほとんど。日本では20代前半で勉強を辞めてしまう人が多く、お金リテラシーを失ってしまいます。いくつになっても勉強を辞めたらダメなんです。」と西野さんが仰るように、知らないことは、“より良いものを作りたい”という挑戦を自ら放棄せざるを得ない状況に追い込んでしまいます。

お金とは? 信用である!

これまでクラウドファンディングを使って約2億7,000万円ほど集めてきたという西野さん。お金とは信用を数値化したもので、クラウドファンディングとは信用をお金に両替するための両替機だと説きました。

西野さんは月額会費制のコミュニティを運営されていますが、事業がうまくいっているときは入会者数が伸びず、ピンチや挑戦しているときは入会者が増えるそうです。ファンを増やすために大事なのは来週どうなるかというカードを切り続けること。人気の少年漫画でも同じで、主人公にピンチが訪れてそこから這い上がるからこそ応援したくなるんだと説明しました。

ご自身もコミュニティで急にファンが増えたのは、ピンチのとき。芸人として成功した後に炎上芸人などと言われて一度落ちたものの、その後立ち上げたコミュニティでは1万人くらい集まったそう。ただ順調になってくると入会者の伸びは鈍化。自らピンチを作るために、総工費約15~20億かかる美術館を作ると発表しました。するとコミュニティの入会者が増えたそうです。つまりやらないといけないのは、お客さんが参加できる・応援できる余白を常に用意しておくことだと結論づけました。

最後に西野さんは、うそをつかないことで信用を獲得し、コアファンを作ることが大切だとまとめ、インターネットでさまざまな情報があふれている現代で、これからは信用度が大切になってくるだろうと締めくくりました。


芸人として活躍し、現在は絵本作家だけでなくさまざまな事業を展開されている西野さん。日本ではお金の話をすること自体がタブ―とされている傾向があると仰る通り、お金の稼ぎ方を直球で教えてもらえる機会はなかなかありません。いろいろな経験を経て一つずつ成功を掴みとっている西野さんから学び、自分は何に挑戦できるのか、考えてみると面白いかもしれませんね。