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ハイテク産業の中心地、アメリカカリフォルニア州シリコンバレーで今、「ドーパミン断食(Dopain Fasting)」なるものが流行っているそうだ。

 ドーパミンとは、中枢神経系に存在する神経伝達物質で、楽しいこと、うれしいこと、あんなことこんなことをすると脳内に分泌される脳内麻薬のことだ。

 ドーパミン断食の実践者によると、あえて楽しいことを慎み、ドーパミンの分泌を抑えることで、脳がリセットされ、人生をシンプルかつ深く味わえるようになるのだそうだ。

 実践者の中には、友達付き合いを一時なくしてみたり、他人と目すら合わせない人もいる。それもこれも、楽しくなってドーパミンが脳に放出されないようにするためだ。

 だが果たして、こんなことに本当に意味があるのだろうか?

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ドーパミンがもたらす作用

 まず覚えておいてほしいのは、ドーパミンは神経伝達物質であるということだ。脳内に信号を伝える化学物質であって、運動制御、記憶、覚醒、報酬系といったさまざまな機能に関与している。

 そのようなドーパミンが不足するとどうなるのか? たとえば筋肉の硬直や震えを症状とするパーキンソン病は、ドーパミン不足が原因で起きる病気だ。その治療薬である「レポドパ」は、脳内にドーパミンを届けることで症状を緩和する。

脳内の報酬系に大きく関与

 ドーパミンはまた脳内の報酬系にとっても重要で、おいしい食べ物や異性との交遊、楽しい経験、SNSでのやりとり、ギャンブル、あるいは薬といったものによって最初に放出され、報酬系を活性化する。

 ポイントとなるのは、報酬系は学習をするということだ。報酬を得られそうなサインを感じると、実際に報酬がなくてもドーパミンが分泌されるようになる。

 そのために、有名パティシエのお店を訪れたり、そこにならぶ可愛らしいお菓子の味を想像してみるだけでもドーパミンが分泌されてしまう。

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 このような報酬への期待のことを神経科学の言葉で「ウォンティング(wanting)」という。

 うつ病の主要な症状に快感消失(楽しさや喜びを感じられなくなること)があるが、これはウォンティングが欠如している状態で、ドーパミン制御の機能不全が関係している。

 よって、こうしたうつ症状の治療薬には、脳内のドーパミンを増加させるよう作用するものがある。

ドーパミン断食で不健康な欲求を緩和させる

 このようにドーパミンには大切な役割があるというのに、なぜあえてその断食をしようというのだろうか? それはドーパミンが中毒や依存症と関係していることが背景にある。

 たとえば薬物依存症の患者が、もう二度と薬には手を出さないと誓ったとするだろう。だが麻薬を連想させるサインがある場所に行くと、脳のウォンティング系が勝手に作動してしまう。するとその人は、どうにも抗いがたい薬の欲求を感じるようになる。

 ドーパミン断食の実践者がわざわざそれを行うのは、ドーパミンを断つことで不健康な欲求を緩和することができると考えているからだ。

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ドーパミン断食は効果があるのか?


 まず最初にはっきりさせておくべきなのは、仮にこれに効果があったのだとしても、脳の通常の機能に必要な化学物質を減らすなど望ましい行為ではないということだ。

 それを踏まえたうえで言うなら、ドーパミン活動を減少させることは可能だろう。ただしSNSに依存していると自覚がある人が、SNSをやらないといった特定の報酬を禁止しても、ドーパミンレベル自体は減らない。

 ドーパミンは環境からのサインによって分泌され、報酬を手に入れる行動を行いたいという欲求が呼び覚まされる。

 だから報酬から遠ざかったとしても、ドーパミンの分泌自体が止まるわけではない。つまり消し去りたいと思っている欲求がなくなることはないのだ。

 ついでに言うと、「脳のリセット」というのもあまり正しくない。そもそも、リセットされた初期状態とやらがどのようなものかすらわからない。神経科学的には、今のところはナンセンスとしか言えないという。

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 我慢のしすぎは体に良くない。と私のような凡人は思うわけだが、シリコンバレーのような最先端技術が結集する場所で働いている知的な人々は、ストイックこそが美徳であると考える人が一定数いるようだ。

 すっごくおいしい夕食を食べる時、朝と昼を抜くと更においしく感じる気がするとかはあるけれど、それをずっと我慢するとか想像するだけでつらすぎる。

 というかゴールはどこで、達成感とか味わえるのだろうか?達成感すらもドーパミンが関与するからダメなの?まさに究極の断食だな。

References:'Dopamine Fasting' Is Silicon Valley's Latest Trend. Here's What an Expert Has to Say/ written by hiroching / edited by parumo

全文をカラパイアで読む:
http://karapaia.com/archives/52285318.html
 

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