理系の大学生掛田氏(小瀧望)が食堂で働く飯島さん(馬場ふみか)に恋し、距離を縮めるために科学を利用しながら奮闘する「よるドラ」『決してマネしないでください。』NHK総合、毎週土曜23:30〜、再放送毎週金曜25:10〜)。
原作3巻『決してマネしないでください。』蛇蔵


前夜の記憶を辿る『ハング・オーバー!』な展開
第6話は有栖(今井悠貴)の誕生日パーティーが校舎の屋上で行われるところからはじまる。翌日、ひどい二日酔いから目を覚ました掛田氏と有栖。前夜の記憶が朧げな中、仲間の一人、いつも着ぐるみを着ている女の子・ゾンビちゃんの着ぐるみだけがそこに残されていることに気づく。傍らには泥のついたシャベル。掛田氏は自分がゾンビちゃんを土に埋めてしまったのではないかと恐れる……。

原作の該当回にも小さく「なんかこんな映画あったような……」「二日酔い(ハング・オーバー)だ」と書かれているとおり、友人の結婚前夜に酔っ払って記憶をなくし、知らぬうちにいろいろやらかしているという、まさに映画『ハング・オーバー!』的展開だ。

毎回、原作の複数の話からエピソードやシーンを細かくピックアップしては再構成しているこのドラマ。今回は珍しく、1話分の原作に忠実に物語が進んでいく。ただ、パーティーの内容が違う。原作ではこの前にロボコンに参加していて、その打ち上げという名目。それを有栖の誕生日パーティーにしたことで、有栖が家族以外に誕生日を祝われたことがなく、パーティーを催してくれた掛田氏との友情が深まるという心温まる展開となった。有栖がサブリミナル効果を利用して掛田氏に自分の誕生日を刷り込むというかなり強引で非現実的な方法でパーティー開催へと誘導しているのはご愛嬌だ。

第6話の脚本を担当したのは、第3話で延々手を洗うシーンを描いたことでおなじみ、鎌田順也。意外にも(といっては失礼だが)、彼らの友情や掛田氏を信じる飯島さんとの関係の深まりを表現するすてきな回となった。

余談だが、ゾンビちゃんを埋めるという恐ろしい想像の中で掛田氏がなぜかドラキュラ的な扮装をしているのがなかなかにかっこよく、「そうだ、小瀧さんはアイドルだ」と思い出す時間があった。あまりに掛田氏がハマっているので、彼がふだんキラキラした存在だということをついつい忘れてしまう。

Mr.マリックの圧倒的な違和感
当然、いい話というだけでは終わらない。今回の目玉はなんといっても科学とは反対の(?)立場にあるMr.マリックだ。テレス(ラウール)がお祝いのため、有栖の大好きなマリックに扮して登場するのだが、それをMr.マリック本人が演じているのだ。「Mr.マリック本人にしか思えない」と悩む掛田氏と有栖だが、昨夜撮影した写真を確認するとそこには確かにMr.マリックに扮したテレスが写っている。そういう記憶の曖昧さってあるよなあと妙に納得してしまう。いやでもMr.マリック本人って!

ここでテレスが毎週、文字が書かれたTシャツを着ていることが生きてくる。いつもは「暗黒物質」「電気泳動」など科学用語が書かれているそこに、今回は「テレスです」とある。だから視聴者は「テレスなんだな」と思いながら見ることになる。出てるのはずっとMr.マリックなのに。
なぜMr.マリックなんだろう。私たちはなぜMr.マリックの演技を見せられているのだろう。なんだかうっかり受け入れてしまう瞬間と、やっぱり違和感がぬぐえず、いちいちなんだこれは」と思ってしまう瞬間とが交互にやってくる。

今年5月に上演されたほりぶん『飛鳥山』という舞台で、鎌田は「北区の飛鳥山にブラジルに通じる時空を超えたドアがある」という設定をつくった。そのドアを通ると一瞬でブラジルに着く。そのため、舞台の途中でブラジルからサンバダンサーがやってくる。日本人ばかりの小さな劇場に突如現れる、華やかなブラジル人サンバダンサー。その圧倒的な違和感。そしてサンバダンサーが登場人物の娘として演技しはじめる不思議な感覚。6話はそれに似た不思議さをまとっていた。やはり鎌田脚本は一筋縄ではいかない!
(釣木文恵)

「決してマネしないでください。」

出演:小瀧望(ジャニーズWEST)、馬場ふみかラウール(Snow Man/ジャニーズJr.)、今井悠貴、織田梨沙、マキタスポーツ、石黒賢 ほか
原作:蛇蔵
脚本:土屋亮一、福田晶平、鎌田順也
演出:片桐健滋、榊英雄
制作統括:谷口卓敬、八木亜未
制作:NHK、大映テレビ