キャンプ行っちゃう?」
「行っちゃう~?」

三浦貴大、夏帆主演のドラマ25「ひとりキャンプで食って寝る」テレビ東京・金曜深夜0時52分~)。ゆるい「ソロキャンプ」をテーマにした、趣味ドラマだ。

先週放送された第7話は、缶詰大好きなソロキャンプ男・健人(三浦貴大)が主役の回。飲み会で知り合ったソロキャンプを趣味とする女性・早希(黒川芽以)とソロキャンプデートに出かけることになる。

ソロキャンプに慣れすぎてしまったため、久々の他人と一緒のキャンプに若干戸惑いつつも、いそいそと缶詰を選んで準備する健人。そりゃそうだ、相手は美人さんだしな。

男のテントで眠ってしまう女
ソロキャンプデートの場所として選んだのは西伊豆。ぶっちゃけ、東京からはかなりの距離だ。車がある健人ならまだしも、電車移動の早希にとってはかなり行きにくい場所だ(修善寺駅からバスで1時間以上かかる)。どちらの発案かはわからないが、健人も帰りは一緒に……という気持ちでいたかもしれない。ちなみに近くには恋人岬なんて名所もある。

現地で落ち合った2人はさっそく食事の準備にとりかかる。袖をめくってあげるときなんか、お互いを意識したりするのだが、インスタ大好きな早希と言われるがままの健人はなんだか噛み合わない。パン生地をこねて焼いてみたり、ホットワインを準備したりする女子力全開の早希と、ガッツリした缶詰レシピ大好きな健人は食べ物の好みもイマイチ合わなさそうだ。

そうこうしているうちにワインで酔った早希は、夕暮れの海岸で石を積み上げながら、8年も付き合って結婚を考えていた相手に手痛くフラれた過去を語り始める。さらに一方的に話を打ち切ると波打ち際に座り、履いていたトレッキングシューズを脱いで健人に放り投げる。しかし、健人は早希との距離を縮められない。

その後もたき火を囲んでワインを飲み続け、とろっとろに酔っ払う早希。ここでも健人は相手との距離を縮めない。一瞬、夕闇迫る波打ち際でただずむ早希の後ろ姿インサートされる。このときの彼女の心象風景だろう。寂しい背中が誰かを待っているように見える。

水汲み場から健人が戻ると、すでに早希はテントの中でぐっすり眠っていた。ただし、自分のテントではなく、健人のテントで。

なぜ早希は「日曜日よりの使者」を歌ったのか
ひとり残された健人は思いっきカップヌードルをすすりこみ、缶詰を使ったコンビーフユッケをつくってウィスキーをあおる。うーん、美味そう……。

健人だって早希のことを思いっきり気にしている。寝具をかけてやったり、トレッキングシューズを脱がせてやったりしつつ、髪をちょっと直してやったりするのだが、結局はそのまま早希のテントで寝てしまった。

翌朝、まぶしそうに戯れるカップルを見つめる早希。早希はパンケーキを焼き、健人は彼女のために初めて果物の缶詰を切って、2人で食べる。そして健人は早希の要望どおり最寄りの駅まで送っていき、一人になった早希はハイロウズの「日曜日よりの使者」を歌う。

このキャンプで何度となく健人が口ずさんでいた歌だ。では、なぜ早希が同じ歌を歌ったのだろうか? 早希が寝た後、健人はテントの外で口ずさんでいた。そのとき、早希は実は起きていて、健人が歌っていたのを聴いていたのだ。髪を撫でられたときも、起きていたということになる。

振り返り、健人の車が去っていくのを見送った早希の歌声は一層大きくなった。

流れ星がたどり着いたのは 悲しみが沈む西の空」

西伊豆は日本一、夕日が美しいと言われている場所だ(だから恋人岬も近くにある)。悲しみが沈む西の空を眺めていた早希は、恋人が去ってやることがなくなった日曜日に自分をどこか遠くへ連れてってくれる存在を強く求めていたのだろう。

しかし、まぁ、面倒くさい。男が「察した」からといって、女性に対して一方的に距離を縮めるのはよろしくない。早希が何も言わない以上、何もしなかった健人の態度は正しかったと言える(髪を撫でるのでギリギリか。いや、アウトかも)。何より健人はそういうことがわからない男だから、ソロキャンプがちょうどいいのだ。「ひとりキャンプで食って寝る」という素っ気ないタイトルがよく似合う男である。

本日放送の第8話は、湿ったこととは無縁の七子(健人)が渓流釣りに挑戦する。今夜0時52分から。
(大山くまお

作品情報
ドラマ25「ひとりキャンプで食って寝る」
監督:横浜聡子(奇数話)、冨永昌敬(偶数話)
脚本:冨永昌敬、保坂大輔、飯塚花笑
音楽:荘子it(Dos Monos)
出演:三浦貴大、夏帆
主題歌:Yogee New Waves「to the moon
プロデューサー:大和健太郎、滝山直史、横山蘭平
制作:テレビ東京、東京テアトル
動画配信サービスひかりTV、Paraviで放送1週間前から先行配信
※放送後にTVerで配信中

イラスト/まつもとりえこ