10月スタートしたテレビ朝日系の金曜ナイトドラマ「時効警察はじめまして」(一部地域をのぞき夜11時15分〜)も今夜、ついに最終回を迎える。先週11月29日に放送された第7話は小ネタ多めで、2006年2007年に放送された旧シリーズテイストを思い起こさせ、ちょっと懐かしさも覚えた。

メガネが重要な鍵を握った第7話
第7話の事件は、いまから25年前、歌手の蝙蝠ユキオ(前野健太)がワンマンライブの開演直前に殺されたというもの。その日、蝙蝠がステージにいつまで経っても現れないので、ライブハウスオーナーの田端(梶原善)が呼びに行くと、蝙蝠は倒れて死んでいた。遺体を検死したところ、蝙蝠の胸には、つなぐと平行四辺形になる4つの穴状の刺し傷が確認される。また現場には、「犯人はメガネ」という血文字のダイイングメッセージも残されていた。蝙蝠はメガネトレードマークで、ライブに集まるファンもみんなメガネをかけており、また妻の桃瀬多恵子(檀れい)は、夫の死後、桃瀬メガネというメガネ店を開き、売り出した「開運メガネ」が大ヒット、いまやカリスマ社長だった。

夫婦の馴れ初めは、桃瀬が高知にライブで滞在中にメガネが壊れ、桃瀬の実家のメガネ屋に駆け込んできたときのこと。まだ学生だった桃瀬(もちろんこのドラマの慣例で若き日の彼女も檀が演じている)は、蝙蝠に似合いのメガネをみつくろったのがきっかけに、つき合い始める。

時効警察」では旧シリーズ以来、主人公の霧山修一朗(オダギリジョー)が日曜日だけはいつもかけているメガネを外していたり(霧山いわく「日曜日メガネをかけるなんて、イギリス人じゃないんだから」)、毎回事件解決シーンでは霧山が説明する前にやはりメガネを必ず外し、三日月しずか(麻生久美子)に預けたりと、メガネアイテムとして使われてきたが、ここへ来てついにメガネが事件の重要な鍵を握ることになった。今回、霧山が事件の捜査に乗り出したのも、そもそもは三日月が誤って彼のメガネを壊してしまったのがきっかけだった。

単なる小ネタがじつはヒントに?
先述のとおり、今回のエピソードでは小ネタが連発された。まず、蝙蝠の唯一のヒットとなった曲のタイトル「今夜、僕は君の腕の中で、君は僕の腕の中で」。この曲名は、現実の25年ほど前にも「愛のままにわがままに 僕は君だけを傷つけない」とか「別れましょう私から消えましょうあなたから」とか、やたらと長いタイトルの曲がヒットしていたのを思い出させ、ついニヤニヤしてしまった。

霧山が2度目に会ったときの桃瀬の言動も何だか怪しかった。ダーツバーでたまたま遭遇した彼女は「霧山さんって、どことなくあの人(蝙蝠)に似てるわね」「霧山さん、あなたともメガネを重ねてもいいのよ」などと口にしたりと、霧山に気があるかのようなそぶりを見せる。本当はダーツは得意なはずなのに、わざと矢を的から外していたのも怪しい。

事件関係者のその後の身の振り方も妙だった。事件への関与が疑われて取り調べを受けた当時の蝙蝠の担当プロデューサーの吉田(芹澤興人)は現在、バーテンダーになっており、霧山たちが話を聞くため来店すると、アイスピックを使って見事なウサギの氷像をつくってみせる。一方、吉田をはじめ被疑者たちを取り調べた刑事の衣(嶋田久作)は、トンカツ屋の店主になっていた。刑事ドラマの取り調べシーンでよくトンカツが出てくるのに憧れて店を始めたと語る衣が、「うちのかみさんからは、『衣(ころも)警部補がトンカツに衣つけてどうすんのよ』と言われてるんですよ」とさもとっておきのジョークのように言うのが、嶋田久作の飄々とした演技もあいまって何だかおかしい。ちなみに霧山の同僚の刑事・十文字(豊原功補)がトレンチコートを愛用するようになったのは、衣の影響だということも明かされた。

このほか、写真週刊誌に撮られた蝙蝠と愛人12人そろっての密会写真や、霧山が今話のなかで2度口にした「がんじ」という謎の言葉も、何とも意味深であった。結局、「がんじ」の意味は最後までわからずじまいだったが、密会写真にはちゃんと理由があったことがあとで判明する。

登場する小道具の凝りように感服
最初から薄々ほのめかされていたとおり、蝙蝠を殺したのは妻の桃瀬だった。凶器となったのが、左右のつるの先端を鋭く尖らせたメガネというのが意表を突く。そのメガネ結婚式で蝙蝠と交換した思い出の品だった。彼女は、蝙蝠の不倫を知ると、もう一度自分に振り向いてもらうべく、かつて二人でよく遊んだダーツの矢のごとくメガネのつるを尖らせ、それを結婚記念日に贈って驚かせようとしたのだ。しかし蝙蝠が家を出ていくと言い出したため、逆上した彼女は思わず夫の胸めがけてメガネを投げたところ、命中してしまう。ちなみに、メガネのツルが的中したのは、蝙蝠の着るTシャツプリントされた丸メガネの中心部だった(細かい!)。ついでにいえば、桃瀬がバーで霧山に会ったとき、ダーツの矢をわざと外して投げていたのは、自分が犯人だと悟られないためだったのだろう。

だが、蝙蝠が12人の女性と密会していたのにはちゃんと理由があった。じつは彼は再起をかけて、妻について歌った新曲を準備しており、12人の女性はその収録のために集められたコーラス隊だったのだ。この事実は、そのときのコーラス隊の一員で蝙蝠の追悼ライブに来ていた女性(福島マリコ)より提供されたビデオテープであきらかになった。……いや、写真週刊誌に載っていた別の写真では、その女性と蝙蝠はしっかり抱き合っていたけど、あれは新曲づくりを隠すため、わざと撮らせたものだったのか? なんて詮索するのは野暮か。

ともあれ、密会写真のくだりといい、今回の伏線回収はなかなか鮮やかだった。なお、犯人に渡す「誰にも言いませんよカード」は、ボタンを押すと「今夜、僕は君の腕の中で、君は僕の腕の中で」のメロディが流れるバージョンが登場。カードや凶器となったメガネだけでなく、劇中に出てきた桃瀬メガネのロゴやポスターも凝っていたし(桃瀬が出演する開運メガネのCMもいかにもありそうだった)、第7話は美術スタッフの奮闘ぶりがうかがえる回でもあった。

ああ、こういうエピソードをもっと見たい! と思うのだが、残念ながら冒頭に書いたとおり「時効警察はじめました」は今夜で最終回。今度のゲストは山崎賢人(崎のつくりは正しくは立に可)、二階堂ふみ松重豊と3人もそろえて何とも豪華だ。あれ? 松重さんは裏の「孤独のグルメ」(テレビ東京系、金曜深夜0時12分〜)と放送時間が微妙にかぶるのでは……。そんなちょっと掟破りなところもあわせ、どんなフィナーレを迎えるのか見届けたい。(近藤正高)

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イラスト/たけだあや