「第2回TSUTAYA CREATORS'PROGRAM」(2019年)で準グランプリを受賞した“新星”ヤング ポール監督の長編デビュー作「ゴーストマスター」が12月6日より公開中。
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本作は、冒頭こそキラキラキュンキュンした青春恋愛映画のバックステージが繰り広げられるが、やがて状況が一変。極限まで映画を愛し、映画に人生を狂わされた者たちの思いが爆発したことをきっかけに予測不能なホラー・コメディーへと姿を変えていく。
WEBサイト「ザテレビジョン」では、黒沢明という完全に名前負け(?)している助監督を演じた三浦貴大と、黒沢が憧れる女優・渡良瀬真菜役の成海璃子によるスペシャル対談を行った。
ホラーをはじめ、青春、恋愛、スプラッター、サイバーパンク、アクション、SFなど、さまざまなジャンルのエッセンスをちりばめた本作の衝(笑?)撃的な撮影秘話や久しぶりの共演となったお互いの印象、それぞれの“○○愛”について語ってもらった。
――まずは、脚本を読んだ感想からお伺いしたいのですが…。
三浦:最初に思ったのは「何だ、これ?」ですよね(笑)。ト書きに“首が飛ぶ”って書いてあるんですけど、全く想像つかない。これは、どうしようかなと。
――これまでの作品では見たことがないト書きだったわけですね。
三浦:(顔半分がカメラになっている作品のチラシを指して)文字でこの状態が書かれていても、よく分からないじゃないですか。確か“カメラ男”っていう表現だったのかな?
成海:そうそう(笑)。
三浦:どうやって演じたらいいのか困りました。
成海:私も同じような感想でした。これは、かなり賭けではあるなと(笑)。ただ、映画が好きなんだという主人公のエネルギーは強く感じました。
自分の役どころも前半はじっとしているけど、後半“覚醒”してからがなかなか面白い。ちょっと乗ってみようかなという気持ちになりました。
三浦:全体的にはホラー。でも、途中で壁ドンがあったりして(笑)。何が何だか分からないんですけど、青春ものとしてストーリーが展開していくところはいいなと思いました。
――三浦さんは助監督の黒沢明、成海さんは女優の渡良瀬真菜。それぞれ、自分の役に対してどのようにアプローチしたのですか?
三浦:僕は比較的やりやすかったです。いろんな現場で、さまざまなタイプの助監督を見ていますから。黒沢のようなと言いますか、撮影中にいなくなることがあるんですよ。
――助監督さんが?
三浦:そうです。1年に1回ぐらいそういう現場を見ているような気がします(笑)。でも、黒沢はそこを何とか踏ん張って生きているような人間なんでしょうね。
――身近にヒントが転がっていたわけですね。
三浦:あとは「スペースバンパイア」(1985年)とか、黒沢が好きだという設定の映画を見ました。普段ホラーは見ないんです。ビビリだから(笑)。見たことがある作品は「リング」(1998年)ぐらい。だから「こういうものがあるんだ」って新鮮な気持ちで見ていました。
■ 三浦「ここにいるよ(笑)」
――成海さんの役は親も俳優という設定。
成海:二世俳優の方って、たくさんいらっしゃるじゃないですか。(と、何気なく隣に座っている三浦を見て)…あ、そうだ! ごめんなさい。
三浦:ここにいるよ(笑)。
成海:そうですよね、すみません(笑)。ということで、あの~、何ていうか…。
三浦:もしかして悪いことを言おうとしていたの?(笑)
成海:いえ、全然違います。ビックリして、ちょっとボーッとしちゃいました(笑)。
三浦:(笑)。
成海:うまく言えないんですけど、心情を丁寧に表現していく…といった作品ではなかったので(笑)。
プロデューサー役の手塚とおるさんから「おまえなんかバーターなんだよ!」って罵倒されるシーンはつらいなって思いましたけど、後半のアクションシーンで気持ちを爆発させようかなと。そこは大事に演じていきたいと思いました。
――ちなみに、成海さんはホラーをご覧になりますか?
成海:そんなに得意ではないですけど「悪魔のいけにえ」(1975年)は繰り返し見るくらい好きです。あの作品は怖いと感じないんです。テンションが高い時によく見ていますね(笑)。
――劇中では、血がたくさん飛び散りますけど平気でしたか?
成海:大丈夫です。今回の作品は日本にあまりないタイプのホラーというか、どこかカラッとしていますよね。ポップな感じがしたので平気でした。
――三浦さんも血は大丈夫ですか?
三浦:スプラッター系は大丈夫なんです。語弊があるかもしれないですけど、血の噴き出し方がコントとかでありそうな感じだったんですよ。だから、怖さや気持ち悪さはなかったです。
――ヤング ポール監督の演出で印象に残っているシーンは?
三浦:“人力スローモーション”というものを経験したんです。
成海:ありましたね! いまだに何だったのか分かりません(笑)。
三浦:全然理解できないんですよ(笑)。
成海:みんな「ん?」ってなっていましたもんね。
三浦:簡単に言うと、自分でゆっくり動くんです(笑)。
――映像をスローにするわけではなく…。
成海:屋上のシーンでした。
三浦:ある変化が表れた勇也(板垣瑞生)を追い掛けるんです。
――みんなで行進しているような感じのシーンですね?
三浦:そうです。
成海:監督からタイミングを合わせて動いてって言われたんですけど、みんな下手過ぎて。どうしてもカクカクしちゃうんです(笑)。あのシーンだけはどういう意味があったのか監督に聞いてみたい。
三浦:監督は楽しそうでしたけどね。結構何テークも撮ったんですよ。
成海:私たちは意味が分からないままやっていました(笑)。
三浦:ものすごくこだわっていましたけど、一番の“ナゾ演出”です(笑)。
――三浦さんはもう一カ所スローモーションのシーンがありましたよね?
三浦:あぁ、なんか話を聞いちゃって廊下に飛び出したシーンですね。あれは、ちゃんとした本物のスローモーションです(笑)。
■ 成海「私のメークは快適でした」
――先ほど“カメラ男”というワードが飛び出したポスターの特殊メークは結構時間がかかったんですか?
三浦:メークの時間は2時間ぐらい。顔の右側に埋まっているカメラのレンズは本物。それが結構重くて、引っ張られるからつらかったですね。頭が痛くなってきたので、このシーンは特に何も考えていなかったと思います。
成海:確かに、つらそうでしたね。
三浦:このシーンは、撮影の最終日だっけ?
成海:最終日です。
三浦:僕は最終日だけだったからいいですけど、板垣くんは毎日朝早く入って一日中メークをしたままの姿。
成海:現場で会う時はいつもメーク後だったから、たまに素顔を見るとドキッとしました。あんなにかわいらしい顔をしているんだって(笑)。
――成海さんの特殊メークは顔の左半分。
成海:私のメークは1時間ぐらい。とても快適でした。
三浦:快適って何?(笑)
成海:特殊メーク担当の百武(朋)さんがこだわってくださったんです。ビューティー要素としてパールが入っているんですよ。すごく楽しかったです。
――なかなか特殊な作品での共演でしたけど、お互いの印象は?
三浦:昔、共演したことあるよね?
成海:結構前ですね。
三浦:妹役だったっけ?
成海:はい、兄妹役です。
三浦:あ、そうだ。僕は、ひきこもりの兄の役でした。
成海:撮影期間は短かったんです。
三浦:あの時は、もう20歳になっていた?
成海:ギリギリ、19歳だったかもしれません。
三浦:今回の作品で久しぶりにお会いしましたけど、大人になったなぁって思いました。現場で一緒にカメラの前に立った時、すごく頼もしかったんです。成海さんがいたから僕は好き勝手できました。
――かなり頼られていたみたいですけど。
成海:三浦さんとはずっと一緒に撮影していたんです。
三浦:同じシーンが多かったもんね。
成海:私の方こそ、すごく三浦さんのことを頼りにしていました。
三浦:ありがとうございます(笑)。
成海:三浦さんがイライラしている姿を見たことがないんです。いつも変わらず穏やか。私はすぐ顔に出ちゃうので(笑)、ものすごく助けていただきました。
――今作では助監督・黒沢の「映画愛」がキーワードになっていますけど、お二人の“○○愛”をそれぞれお伺いしたいのですが。
成海:私は“ジム・キャリー愛”です! 結構いろんな作品を見ていて「ケーブルガイ」(1996年)と「ふたりの男とひとりの女」(2000年)の2本が特に好き。いつもの明るいキャラクターとは違うちょっと怖い一面が見られるんです。
――好きになったきっかけは?
成海:やっぱり「マスク」(1994年)です。子どもの頃に見ていて、大人になってからあらためて見返してみると表現力がすごいなと思って。そこから、どんどん好きになっていきました。
――三浦さんの“○○愛”は?
三浦:僕は“写真愛”ですかね。とにかく人ばっかり撮っているんです。しかも、人間の顔が好きで、気付いたら顔に寄っているカットばかり。全身が入っている写真はほとんどないです。
――好きな表情はあるんですか?
三浦:どんな表情でもいいんですけど、そもそも人間の顔の作りが好き。みんな微妙に違うんですよ。ずーっと見ていられます。
でも、何もせず凝視するわけにはいかないので、ファインダー越しに見ながらいろんな顔の写真を撮って楽しんでいます(笑)。(ザテレビジョン・取材・文=月山武桜)
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