『韓国 行き過ぎた資本主義』というタイトルの新書(金敬哲著、講談社現代新書、11月20日発行)が抜群に面白い。韓国は子供、青年、中年、高齢者と「無限競争社会」に陥っており、そのことが韓国経済を疲弊させ、ダウンさせていると、客観的データや実例から論証している。著者は、ソウル在住の韓国人ジャーナリストだ。

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 この本を読むと、最近の韓国経済の悪化は、戦後の韓国社会を貫く恒常的問題によるものと、文在寅ムン・ジェイン)政権の失政によるものが重なって起こっていることが分かる。文在寅政権の出現は、韓国社会にとって「泣きっ面にハチ」のようなものだったというわけだ。

「悪夢」再来を覚悟すべき経済状況

 この本を読んだ後、ある韓国政府の関係者に、韓国経済に関して話を聞いてみたら、衝撃的なことを告白した。

「まだ文在寅政権は決して口にしないが、今年のわが国のGDP成長率は、2%を切りそうだ。リーマン・ショック後の過去10年ほどで最悪の事態だ。もしもこの状況が来年も続くなら、われわれは20世紀末の悪夢だった『IMF時代』が再現することを覚悟しなくてはならないだろう」

「IMF時代」とは1997年末、アジア通貨危機に伴って、金泳三政権時代の末期に韓国経済が破綻し、IMF(国際通貨基金)の管轄に、国家財政が移管されたことを意味する。当時、韓国を訪問すると、街は閑散とし、北朝鮮とあまり変わらない光景が広がっていて、唖然とさせられたものだ。

 そうした「悪夢」が、20数年ぶりに再来するかもしれないというのだ。そう言えば、左派の文在寅政権は、金大中政権-廬武鉉政権の流れを汲んでいると思われがちだが、いろんな点で、むしろ金大中政権の前の政権、すなわち金泳三政権と似ていると感じる。国内の経済政策はトンチンカンで、外交政策は強硬な反日を貫いているからだ。

 一言で言うなら、「素人政権」なのである。日本で言うなら、2009年から2012年までの民主党政権とソックリだ。

ヤバい経済統計

 今週12月3日、韓国の中央銀行にあたる韓国銀行は、韓国経済の第3四半期(7月~9月)の主要統計を発表した。ちょうど『韓国 行き過ぎた資本主義』を読んで唖然とした直後だったので、この日に韓国銀行が発表した61ページにわたる統計資料に、詳細に目を通してみた。その結果、「これはヤバい」と再認識した。

 2017年5月に発足した文在寅政権は、「所得主導成長」と呼ぶ経済政策に舵を切った。これは、右派の李明博政権が取っていた「落水効果政策」とは、真逆の経済政策と言えるものだ。

「落水効果政策」とは、主に韓国国内の「30大財閥」を、政府が手厚く補助し、富ませていく。そうすることによって、上から下に水が流れ落ちるように、韓国経済全体が活性化していくというものだ。

 それに対し、左派の文在寅政権が取ったのは、下から上に底上げしていく方式だった。すなわち、まずは労働者の最低賃金を大幅にアップさせ、国民の所得を格上げする。そうすると庶民の消費が増えるから、国家の税収も増えて、韓国経済が活性化していくという考え方だ。

 だが文在寅政権は、2年間で約3割も最低賃金を増やした結果、賃金を払いきれない中小企業がバタバタと倒産していった。その結果、韓国経済が不況に陥るという愚を犯してしまったのである。

 その実態が、韓国銀行が公表した61ページの資料に、如実に表れていた。

 まず「実質国内総生産と支出」では、「鉱工業成長率」が示されているが、そこには惨憺たるデータが並んでいた。

 鉱業10.0%減、飲食料品5.6%減、繊維及び皮革製品9.9%減、木材、紙、印刷、複製3.0%減、コークス及び石油精製品5.1%減、化学物質及び化学製品1.0%減、非金属鉱物製品2.3%減、一次金属2.4%減、金属加工製品1.4%減、電気装備8.1%減、運送装備2.1%減、生活関連系5.3%減・・・。

 続いて、「電気、ガス、水道事業の成長率」も、電気19.0%減、ガス0.9%減、水道3.2%減。「建設業」も、建物建設6.3%減、住居用5.7%減、非住居用6.9%減、土木建設7.3%減となっている。

 サービス業の成長率は、宿泊及び飲食店0.3%減、情報通信2.9%減、事業サービス0.1%減、文化その他2.3%減・・・。

「総固定資本形成」の部門は、建設投資6.0%減、建物建設6.4%減、土木建設4.9%減、機械類投資2.6%減・・・。

「内需」は、文在寅政権が発足した2017年は3.9%増、翌2018年は1.2%増だったが、2019年第3四半期は0.7%減となった。農林水産業も第3四半期は、5.2%減まで落ち込んでいる。

 こうした結果、2017年GDP成長率は3.2%だったが、翌2018年は2.7%となり、2019年は2.0%となる見込みだという。

 だが、これだけあらゆる統計が「減、減、減・・・」となっているのだから、統計を操作でもしない限り、2.0%の経済成長率など不可能だろう。前述の韓国政府関係者の発言通りだ。

ASEAN首脳の前で面目丸つぶれの文大統領

 文在寅政権は、こうした危機的な経済状況を打開しようと、11月25日、26日に、文在寅大統領のお膝元である釜山で、韓国ASEAN特別首脳会議を開催した。そこでは、文在寅政権が、ASEANとの緊密な貿易関係をアピールする計43項目からなる共同声明を発表した。

 だが、この一世一代の晴れ舞台のさなかに、韓国検察は、文在寅大統領の側近である柳在洙(ユ・ジェス)元釜山市経済担当副市長の緊急捜査に入り、釜山は騒然となった。そして、韓国ASEAN特別首脳会議が閉幕した翌日の27日、収賄の疑いで、柳在洙元副市長を逮捕してしまった。文在寅大統領の面目は、丸潰れである。

 12月16日には、日本と韓国の輸出管理に関する局長級の政策対話を、東京で行う予定だ。これは韓国側が、11月22日に日韓GSOMIA(軍事秘密包括的保護協定)を破棄しなかったことによる合意事項だ。

 前述のように韓国経済は、相当厳しい。そのため韓国側は日本に対して、早急に7月以前の状態に戻すことを求めてくるに違いない。日本側の対応が注目される。

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11月25日から、釜山で開催された韓国・ASEAN特別首脳会議。韓国の文在寅大統領(右)とミャンマーのアウンサンスーチー氏(写真:YONHAP NEWS/アフロ)