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 イソップの寓話「田舎のネズミと町のネズミ」は、田舎暮らしと都会暮らしのネズミのライフスタイルの違いが、幸せの形の違いにつながることを揶揄したものだ。人間も同様で、生まれ育った場所の違いが、考え方の違いにもつながる。

 罪を犯した人に対して、どの程度の罰が妥当であるのかを判断する基準にも地域差が現れるということが、新たなる研究によって明らかになった。

 地方に住んでいる人のほうが、犯罪に対する寛容さが低く、都市部の人よりも、法や秩序を乱す行為への厳罰を支持する傾向にあることがわかった。

 だがなぜ、こういう状況になるのかは、ほとんどわかっていない。

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犯罪者の処罰に関する一般住民の考え方を研究

 刑罰(法にそむいて罪を犯した者に加える制裁)に対する人々の姿勢は、犯罪学研究における重要な分野だ。犯罪学者は、犯罪者の処罰に対する一般市民の考え方・姿勢に関心をもっている。

 犯罪にどう対処するかを決めるとき、その地域の一般住民の声は強力な圧力になるからだ。

 懲罰姿勢に関する研究は、広範な全国的調査になる傾向があり、性別、年齢、社会的階級、教育などによる違いも検証する。

 都市部と、地方や遠隔地で人口に大きくばらつきがあることを考えると、こうした地理的、文化的な違いが、刑事司法制度における処罰の役割についての人々の考え方に影響を与えるかどうかを考慮に入れるのは当然といえば当然だ。

 これを調べるために、2004年、2008年、2011年、2015年のカナダ選挙研究会のデータを検証し、都市部と地方の在住者に犯罪や刑罰に対する姿勢についていくつかの質問をして、その回答の違いを比較してみた。

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地方の住人の方が厳罰を求める傾向


 まず最初の質問は、「暴力犯罪を犯した若者に対する処遇はどうするのが一番いいか?」というもの。これに対し、地方の人たちは、都市部に住む人たちよりも、暴力的な若い者は厳しく罰するべきと回答する人が多かった。
地方:厳罰に賛成が52%、更生は48%
都市部:厳罰に賛成が43%、更生は55%

 2番目の質問は、「たとえ犯罪者の権利を剥奪することになっても、犯罪に対して断固たる措置をとるか?」

地方:賛成が72%、反対が28%
都市部:賛成が60%、反対が39%

 3番目の質問は、「殺人を犯した人間に対する死刑に賛成か、反対か?」この質問に対し、死刑を支持する声は、地方の人たちのほうが都市部の人たちよりも多かった。

地方:賛成が47%、反対が52%
都市部:賛成が40%、反対が60%

 次に、懲罰的姿勢をより包括的に測定するために、これらの質問と答えをインデックスにまとめた。すべての測定値を一緒にしてみると、地方のコミュニティは"より懲罰的"なカテゴリーに、都市コミュニティは"あまり懲罰的ではない"カテゴリーに分類されることがはっきりわかった。 

地方:より懲罰的が60%、懲罰的ではないが40%
都市部:より懲罰的が49%、懲罰的ではない51%

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なぜ地方に住む人々は都心部に住む人々よりも厳罰を望むのか?

 研究の次の段階は現在進行中だが、「なぜ、地方に住んでいる人たちは、都市部に住む人たちよりも厳罰を求めるのか?」その理由を考えることになるだろう。

 全国的あるいは国際的なレベルの今ある証拠が、たくさんのヒントを与えてくれる。例えば、犯罪への恐怖感、犯罪が増加しているという認識、刑事司法制度に対する信頼の欠如などが、懲罰的な姿勢を高めることが示されている。

 さらに言えば、コミュニティの中の人々が互いに信頼しあい、強い社会的絆がある場合は、懲罰的傾向は少ない。

 特定の価値観が、宗教、所属政党、イデオロギーと結びつくと、懲罰的傾向が形成される傾向にある。

 価値観については、都会と地方の格差が現在の政治における政治的断絶の最大の原因のひとつになっている。

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カナダで顕著な都会と地方の格差


 カナダでは、一部のおもだった都市に人口が集中して増大し、都市コミュニティにおける経済的、政治的、社会的力の統合が、近年のこうした断絶の一因となっている

 この研究はまた、犯罪に対する姿勢とそれをいかに制御するかが、こうした政治的差異の中心的要素である可能性を強調している。

 例えば、カナダでは全体的に懲罰的な姿勢は減少する傾向にある。都市部の人々がこうした減少を推進していて、犯罪の問題に対する地方と都市部の姿勢のギャップは拡大しているようだ。

 広範な政治的断絶の原因の一部として、懲罰的姿勢の違いを考慮するのは理にかなっている。例えば、懲罰的姿勢は、こうした分裂の政治的中心にあった社会的、文化的、経済的といった幅広い問題と密接に関連していて、そこには、経済的不安や移民に対する否定的な見方も含まれている。

 つまりこれは、政治的な価値観が犯罪や処罰に対する姿勢をどのように導き、そうした姿勢が地方と都市部の間の政治的分裂の拡大にどのようにつながるのか、を考えなくてはならないことを暗示している。

References:Crime and punishment: Rural people are more punitive than city-dwellers/ written by konohazuku / edited by parumo

全文をカラパイアで読む:
http://karapaia.com/archives/52285331.html
 

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