たまには若い部下を連れて、落ち着いた雰囲気漂う新宿のバーへ。先輩らしいところを見せたいけれど、バーでどうやったらサマになるのかわからない。気づいたらビールとか水割りとか、バーに来てもいつものオーダー。本当は大人の貫禄をさりげなく見せつけたいのに。
ということで、部下を連れてバーに行く際、若い部下から「大人ってかっこいいなぁ」と思わせるカクテルを5杯、こっそり紹介しちゃいます。
今回「先輩が飲むのにオススメのカクテル」を教えてもらったのは、西新宿にある『Bar Ben Fiddich(バー・ベンフィディック)』。「世界のベストレストラン50」などで知られている、イギリスの老舗出版社、ウィリアム・リード・ビジネス・メディア社が選ぶ、「アジア最高のバー50」に2016年から4年連続ランクイン。日本はもちろん、海外からも高く評価されているバーです。
その魅力の一つが、様々な香草・薬草酒。この店では、オーナー自ら作ったリキュール「SUZE(スーズ)」やヨーロッパの香草・薬草酒などを味わうことができます。
香草・薬草酒と言ってもジンやカンパリだって薬草酒の一つ。ジンは大麦麦芽やトウモロコシなどの穀物を発酵・蒸留したのち、ジュニパーベリー(ねずの実)や様々な根や木の皮などを加えて再度蒸留したもの。カンパリにはコリアンダーやリンドウの根など様々な自然由来のものが入っています。
「うちは薬草のお酒に特化したバーです。『アブサン』から始まり、『アマーロ』と呼ばれる苦味酒や、自家製の様々なボタニカル・薬草酒のあるバーですよ」と鹿山さん。ここではハーブ、スパイスを使った「ミクソロジー・カクテル」を楽しむのが一番の醍醐味。しかし、見たことのないお酒ばかりで、どう頼めばいいんですか?
「もちろんマスターに聞いてください」とニッコリ。「バーは嗜好品を楽しむ場所。お酒はもちろんですが、グラスやそのバーの雰囲気など、世界観を楽しめばいいんですよ」と微笑む鹿山さん。それでは、部下にかっこいいと思われるお酒、早速教えてください!
グリーンのシャルトリューズで作る「ラストワード」
1杯目はシャルトリューズにフレッシュライムジュースとマラスキーノのリキュールを1:1:1で合わせた「ラストワード」。「海外で特に人気のあるカクテルですね。“最後の乾杯”という意味で、1920年にアメリカの禁酒法が施行された時に創作されたものです。お酒がもう飲めなくなる、だから最後の乾杯なんですよ」(鹿山さん)。
ハンガリーの国民酒「ウニクム」
続いて出てきたのは、ハンガリーのハーブリキュール「ウニクム」。初めて見るボトルです。「一言でいうなら、ハンガリーの養命酒ですよ」(鹿山さん)。一口飲んでみると、独特の香り、そして強さを感じます。「食前酒でも食後酒でも楽しまれているお酒ですね」(鹿山さん)。ハンガリーの国民酒ともよばれている「ウニクム」。40種以上のハーブやスパイスが入っているリキュールで、1790年にオーストリア・ハンガリー帝国の王室で、消化を助けるために考案されたものだそうです。いわば王室御用達の薬草酒、です。
映画や絵画でも見た、あの「アブサン」
続いて出てきたのは「アブサン」。ゴッホやロートレック、モディリアーニなどの画家が愛したお酒としても有名です。ここでは、アブサンをフレンチ(クラシック)スタイルで提供してくれます。グラスの上に「アブサンスプーン」を渡し、角砂糖を置いて、小さな蛇口のついたアブサン専用の水差しでゆっくり水滴を落とし、白濁した水割りを完成させます。
この飲み方は19世紀のフランスで流行していたもので、おそらく都内でもこの作り方で飲めるところは数少ないのでは? 鹿山さんは、スイス・フランスにあるアブサンの蒸溜所を巡るほか、畑で原料の一つ、ニガヨモギを収穫して製造するほど造詣が深いので、アブサンについて色々聞いてみるのもオススメです。
ボタニカルを感じるなら「キハダジントニック」
「最近は国産のもので、クオリティのいい木肌のトニックウォーターが出るようになったんですよ」と語りなが鹿山さんが作ってくれたのはその名も「キハダジントニック」。トニックウォーターはそもそも、草や根、木の皮といったボタニカルなものから抽出したエキスに糖分を加えたもの。国産の材料にこだわった、日本の樹皮から作るトニックウォーターは、柑橘系の爽やかな香りを感じます。すっきりと味わうのにオススメです。
バー自家製の「SUZE(スーズ)」も外せない
『バー・ベンフィディック』に来たら必ずオーダーしたいカクテルの一つが、「自家製SUZE(スーズ)」。カウンターにある大きな白い壺からお酒が注がれます。「フランス圏における”ゲンチアナ”リキュールです。ゲンチアナとは、リンドウ科の一種で薬用として古くから利用されてきたものなんですよ」と鹿山さん。現代においても、食欲増進や消化不良、胃痛、胸やけ、胃炎、下痢、吐き気などの治療に使い、エキスやチンキ剤としてもよく出回っているとのこと。このゲンチアナの根を高純度のアルコールや柑橘類のピール、スパイスなどを一ヶ月寝かしたものが現在バーで飲むことが可能なんです。
ちなみにスーズは、ピカソが愛したお酒としても有名で、スーズを題材にした静物画も描いています。
日本では薬用酒と聞くと、風邪の時に、とか、体を温めるため、というイメージが強いですが、『バー・ベンフィディック』に来ると、様々な国の、それぞれの薬用酒・香草酒の歴史や成り立ち、そして楽しみ方などに触れることができ、カクテルの世界の奥深さに少し触れたような気持ちになれます。
ちなみにこの5カクテル、オススメのオーダー順を聞いたところ、まずは「ウニクム」、次に「キハダジントニック」、「自家製SUZEトニック」、「ラストワード」、最後に「アブサン」、という流れがオススメとのこと。
会社の部下、後輩、そしてカクテルに興味がある同僚や仲間と飲みにいくなら、『ベンフィディック』はイチオシですよ。
コメント