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レイ法律事務所・弁護士の森伸恵です。

兵庫県明石市が、性的マイノリティーの人たちへの支援を広げるため、全国で初めて専門的な知識を持つ職員を募集すると発表しました。今回募集するのは、LGBT・性的マイノリティーの人たちに関する専門的な知識や経験を持つ職員2人程度とのことです。

■専門職員はどんなことをやるの?

12月17日から募集を受け付け、5年の任期付きで来年4月に採用するとのことです。泉房穂市長は「体と心の性にズレがあっても、暮らしやすい街にしたい」と言っています。市によると、

・同性のカップルを婚姻に準ずる関係に公認する「パートナーシップ制度」を来年度中に導入する予定で、こうした新規施策で専門職員に中心的な役割を担ってもらう方針。

・性別を問わない公衆トイレの整備や学校での制服のあり方、市営住宅の入居要件の見直しなど、教育や医療分野の担当者とも連携し、幅広い取り組みを進める予定。

とのことです。

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■反対意見も

明石市の取り組みには反対意見もあるようです。

その一例は、「LGBT当事者を特別枠で採用することになる」「単なるアピールに過ぎないのでは」「専門職を採用する必要はない。兼業でできる」「既に勤務している市の職員を対象に応募をかければ良いのでは?」といったものです。

■弁護士が考える専門職員の必要性

森伸恵弁護士

筆者としては、兵庫県明石市の取り組みは喜ばしいことで大賛成です。弁護士として仕事をしていると、日々、LGBT当事者の方から相談を受けますが、その時に感じるのが『行政の閉鎖性』です。

行政の中には「この社会には男性と女性のみが存在し、異性を好きになる」という価値観を持つ方が多いのか、なぜか凄惨なLGBTいじめ・パワハラが行われているケースが民間企業よりも行政のほうが多いのです。

また、真摯にLGBT支援を考えたいという職員の方の中にも、どのように対応したら良いのか分からない、どのような施策がLGBT当事者の意向に沿ったものか知りたいという職員の方もいることでしょう。

そこで、明石市LGBT当事者・専門家の意見を常時聞ける状態にして、LGBT当事者の意向を真に理解し、LGBT当事者が暮らしやすい、楽しく生活できる市にしていこうと取り組まれることは素晴らしいことです。

■他への波及に期待

また、今後の方針を見ますと、「パートナーシップ制度の導入」「性別を問わない公衆トイレの整備」「学校での制服のあり方」「市営住宅の入居要件の見直し」など、LGBT当事者の方がまさに悩んでいることばかり。

専門家によって具体的な改革が行われるのは歓迎すべきことです。兵庫県明石市をきっかけに他の地方自治体にも広がっていったらと願っています。

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(文/レイ法律事務所森伸恵弁護士)

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