三姉妹(XiXinXing/iStock/Getty Images Plus/写真はイメージです)

3人のか弱い娘たちは、大きな体の父親から長年にわたり虐待を受けていた。しかし末の娘が高校生にもなると、彼女たちにも抵抗する力がわいてきたという。

■母親が追い出された家で…

ロシアモスクワ市のアパートで昨年、ミハイルハチャトゥリアンさんという当時57歳の男性が実の娘であるマリア、アンジェリーナ、クレスティーナという当時17、18、19歳の姉妹に殺された。

長年にわたり父親に罵倒され、監禁されて性的虐待の被害に遭い、それにじっと耐えてきたと主張する姉妹。2015年に母親が家を追い出されるとさらに虐待の頻度が増し、姉妹の間からは次第に「殺したい」という言葉が出るようになったという。

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■積年の恨みと憎しみを晴らす

2018年7月、父親の殺害を決意した姉妹は唐辛子スプレー、刃物とハンマーを手に就寝中のミハイルさんを急襲、惨殺した。

姉妹は警察に自首しており、「父親に対する積年の恨みと憎しみを晴らしたかった。これ以上の被害を受けるのは耐えられなかった」などと供述。近隣住民も「ハチャトゥリアンさんはとても恐ろしい人」と擁護したが、姉妹はいずれも殺人罪で訴追された。

これに人権活動家らが立ち上がり、サンクトペテルブルクで集会を開催。「姉妹の無罪釈放を。それは正当防衛だ」とする36万4,000人以上がオンラインで署名した嘆願書が裁判所に提出された。

■正当防衛と認めるのは困難か

このほどその裁判が大きな注目のなかでスタート。法廷では少なくとも2014年にさかのぼって父親が姉妹を虐待していたことが確認された。

しかし今月3日の最新報道によれば、現在21歳と19歳の姉2人は殺人罪として有罪判決を受ける見通しで、8~10年の服役を命じられる可能性が高いという。また末娘のマリアに関しては精神科受診が義務づけられる模様だ。

■「非常に遺憾」と弁護側

父親の長年の虐待がすべての発端であり、3姉妹は現在も心的外傷後ストレス障害PTSD)に苦しんでいるだけに、弁護側は「非常に遺憾だ」と述べている。

だが裁判においては事件に計画性があったこと、犯行当時の姉妹には確かな判断能力があったこと、そして父親の頭、首、胸など全身の30ヶ所を執拗に攻撃した残虐性などが重要視されているという。

ロシアではDVに対する防衛で起きた死傷事件もほかの事件と同様に扱われ、DV被害者の立場を守るような法律は存在しない。裁判のこの展開に活動家たちは怒りをあらわにしており、新たな抗議の動きが始まっている。

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(文/しらべぇ編集部・浅野 ナオミ

虐待に耐えかね実父を殺した3姉妹 正当防衛と認められない可能性も