シーズン22節で首位に立つも2位に終わったFC東京 「次はシャーレを」

 FC東京は7日、J1最終節で迎えた首位横浜F・マリノスとの直接対決に0-3で敗れ、リーグ初優勝を逃した。頂点には4点差以上の勝利が必要となった一戦で、真っ向勝負を挑んだが、エースFWディエゴ・オリヴェイラを負傷で欠き、ゴールが遠かった。過去最高の2位で終わったが、今季は全34節で22回首位に立っていたFC東京。就任2年目の長谷川健太監督の下、栄冠に届かなかった理由を“証言”とともに紐解いていく。

 あと1歩。あと1勝……。優勝にほんの少しだけ届かなかった。アディショナルタイムの表示は6分。最後の1秒まで諦めずに戦い続けたFC東京イレブンだったが、無情にも試合終了のホイッスルが鳴り響いた。ピッチに倒れ込む選手たち。頂点に立つには4点差以上の勝利が必要だったが、無得点に終わった。長谷川監督は選手を称え、ベンチで温かく出迎えた。

「こういう最高の舞台で、選手たちは最後まで気持ちを出して戦ってくれた。『まずは1点』という話をして試合に臨んだが、まずは1点という1点がなかなか遠い試合になってしまった。ただ、後半難しい状況になっても戦う姿勢を全面的に出してくれた選手たちには、こういう気持ちで戦えば次につながっていくと思いましたし、必ず来シーズンはつなげていかなければいけない。東京もてっぺんを取るために、来シーズンはまたやらなければいけないという気持ちにさせられました。次はシャーレを掲げられるようにみんなで戦っていきたい」

 最後の最後で首位に立てなかった。この日、敵地まで駆け付けたFC東京サポーターは90分間1度も応援歌を途切れさせることはなかった。長谷川監督が「1位の数だと一番だと思う。ただ最後に一番にならないと当然何も得ることができない」と言うように、今季は22度首位に立った。4月19日の第8節サンフレッチェ広島戦(1-0)から9月29日の第27節松本山雅戦(0-0)までは1位を守り続け、10月5日の第28節サガン鳥栖戦に1-2で敗れて首位から陥落した。

 “分岐点”はやはり9月だった。列島が熱狂したラグビーワールドカップ開催の影響で、8月24日の第24節北海道コンサドーレ札幌戦(1-1)からアウェー8連戦が始まった。1位で始まった“地獄ロード”は4勝2分2敗。“地獄ロード”でも成績は良く、結局、首位を守ってホームに帰還したが、この「2敗」が与えるダメージは大きかった。

命運分けた敵地8連戦の「2敗」 長谷川監督「悔しい」

 敵地8連戦が始まる前、長谷川監督は「最初の4試合を我慢しろ。最初の4試合我慢すれば大丈夫」と選手に伝えた。1-1で引き分けた札幌戦、名古屋グランパスには2-1で勝利し、迎えた9月14日の第26節鹿島アントラーズ戦。2位の鹿島との“天王山”で0-2と完封負けを喫した。この一戦で取れなかった「1点」。最終節後、「優勝できなかったのは、鹿島戦が痛かったから」と話す選手もいた。さらに鹿島戦後、長谷川監督も珍しく、「悔しい」と漏らしていたという。それほど重要度の高かった試合だった。

 そして、10月5日の第28節のサガン鳥栖戦。後半4分に先制するも、同41分にFW豊田陽平に同点弾を決められ、さらに同アディショナルタイムに“疑惑”のシーンが生まれた。鳥栖は敵陣左サイドでFKを獲得。キッカーのFW小野裕二が右足でクロスを送ると、ファーサイドに走り込んだDF高橋秀人がヘディングで折り返す。ボールはゴール前に走り込んだ豊田に当たり、最後はこぼれ球をMF金井貢史が押し込み、劇的な決勝ゴールが生まれた。

 だが、映像などで確認すると、高橋秀がヘディングで折り返した時点で豊田も金井もオフサイドポジションにいたように見え、ボールは豊田の腹部付近を直撃した後、伸ばしていた左腕に当たっていた。さらに豊田にボールが当たった時点での金井の位置も、やはりオフサイドポジションだったように見える。この“疑惑”の判定により、逆転負けを喫したFC東京は、勝ち点を逃すこととなってしまった。

来季はシーズン総得点46点から55点以上へ 「得点力を上げていく」

 勝負事に「たられば」は禁物だが、この2試合をせめて引き分けていれば……。乗り越えるために必要なのは得点力。指揮官も「前半戦で26点取っていて、後半戦が20点ぐらい落ちた。そこを55点取れるぐらいにしないとチャンピオンになれない。得点力を上げていくのは来シーズンやっていかなければいけない」と話している。FC東京の今季46点は全体の7番目。シーズン中盤に中核を担うMF久保建英(現マジョルカ)が海外移籍したことも一因となるが、前線の迫力が必要だった。

 それでも、今シーズン、首位の重圧に耐えながら、過酷なアウェー8連戦も耐え切った。長谷川監督は「ただこういうプレッシャーのなかで一年間戦うことができたのは選手の頑張り。アウェー8連戦あったなかで、たくさんのサポーターが応援に来てくれた。クラブのそういう力は見せることができたと思うので、それが実を結ぶような来シーズンにしていければ」とこの経験を糧とする構えだ。

 この「2敗」を忘れず、そして忘れられるような力をつけた時、FC東京は“本当の”強豪となって、まだ見ぬ景色を目に焼き付けることができるだろう。(Football ZONE web編集部・小杉 舞 / Mai Kosugi)

J1制覇まであと一歩届かなかったFC東京の長谷川健太監督【写真:荒川祐史】