犬は多くの国でペットとして飼われているが、国が変わればペットとの付き合い方も変わるようだ。

 日本ではあまり見ない光景だが、ドイツでは、犬を散歩に連れていったり、犬と外出する際、リードをつけない。そこには意外な理由が隠されている。

 ドイツで犬にリードをつけていない大きな理由の一つは、「公共の場に出る前に、しっかりとしつけられるから」だという。ドイツではリードをつけないというより、“つける必要がない”と言った方が正しいのかもしれない。ドイツにはドッグスクールというものが各地にあり、飼い主は犬を迎えると、犬とともにドッグスクールに行き、しつけを学ぶ。これは義務ではないが、一般的なものだ。コースはそれぞれのドッグスクールによって異なるが、1回当たり45分から1時間程度、8回にわたって学ぶことが多い。費用は200〜350ユーロ(約2万4000〜4万2000円)ほどである。

 ドッグスクールでは犬はもちろん、飼い主も犬をどのようにしつけるべきか学ぶ。しつけを学んだ犬は、リードをつけずに外出しても、信号があれば止まるし、飼い主から離れてどこかに行ってしまうこともない。他人に吠えることもなければ、他人に噛みつくこともほとんどあり得ないのだ。

 さらに「犬税」の存在も、犬への責任を持たせ、しつけが行き届くようになる要因だろう。ドイツの「犬税」とは、犬を1匹飼うごとにかかる税金のこと。金額は州によって異なるが、1匹目は年間100ユーロ(約1万2000円)程度、2匹目は100〜250ユーロ程度(約1万2000〜3万円)、3匹目以降はさらに値上がりする。犬税は、州が飼われている犬の数を把握するという目的もあるが、飼い主が安易な気持ちで犬を飼わないよう抑制しているともされる。人気の犬種を流行に乗って飼い、しつけができないことを未然に防ぎ、飼い主が責任を持って犬を迎えることができるのだ。

 また、ドイツでは犬も人間にできるだけ近い形で扱われるべきだという意識があり、犬にリードをつけることが「かわいそう」と思う人が多い点も大きいだろう。ドイツでは飼い主が犬とともにバスや電車に乗れるし、周りはそれを当たり前のように受け入れる。犬が入店できるレストランもほとんどで、レストランには犬用の水入れも置いてあるのだ。

 このようにして犬を受け入れる準備があるため、リードを犬につけると飼い主が変な目で見られることも少なくはない。バスや電車、レストランでも犬は静かに行儀良くしている。なお、猫などその他のペットには税金はかからない。

 国によって、犬へ接し方は異なるだろう。ドイツは犬にとって生活しやすい環境が整っている国なのかもしれない。

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