「顔しか取り柄がない私。仕事でほめられたいがどうしたらいいの?」。こんな、美人であることを悩む新入社員の投稿が大炎上している。

ちょっとイヤミな悩みにも思えるが、なぜか女性たちの多くが親身にアドバイスしているのだ。「私も美人すぎて困ったが、美貌を武器に仕事した」という体験談も。働く女性と容姿の問題について、専門家に聞いた。

同期は仕事でほめられるのに、私は「美人だね」だけ

話題になっているのは女性向けサイト「発言小町」(2019年11月20日付)に載った「顔だけが取り柄」というタイトルの次の投稿だ。

「今年から新社会人になった者です。タイトルの通り、どこへ行っても誰に会っても必ず容姿はほめられて生きてきました。逆にいうと、容姿しかほめられないのです。子どもの頃から、自分のことを褒めてくれる人を『皆優しいんだなぁ』と思ってきました。しかし、就職して気づいたのです。いつまでたっても容姿にしか言及されないのは、単に容姿がよいからではなく、他にほめるところがないからだと...」

同期を見ても皆明るく、いろいろなことに気づかいができて、仕事ができる。彼女・彼らが仕事への姿勢や優秀さで評価されているのに対し、自分に向けられる言葉はいつも「可愛いね」「美人だね」という言葉ばかりだった。

「それに気づいてから本当にショックで、容姿に関する話題にも過敏になってきました。『また顔の話か...』と落ち込んでいます。歳を重ねていった時に、仕事もできない、昔はキレイだったただのオバチャンになった自分を想像すると恥ずかしいです。能天気で生きてきた私が、容姿以外でも何か認めてもらえるようになるには、どう頑張ったらよいかアドバイスをいただきたいです」

この投稿には、次のような皮肉っぽい声がいくつかあった。

「一見謙虚に見えますが、あなたの傲慢さがチラリと...。私、おばちゃんですが、美人さん大好物です。ただ、それは心もたおやかで優しい人だけ。傲慢さがある人は顔に出ちゃいますので、お気をつけて」
「仕事ができないというより、頭がよくないのでは? 可愛いだけで本当に何もできない子ね、という意味を込めて、『可愛いね』と言われているのでは? 『天然ですね』を『可愛いですね』に置き換えているのだと思います。もちろん嫌味で言われているのですよ」
「そんなに顔がよければラッキーじゃないの。容姿を利用できる仕事に就いてみたらどうですか。まあ、モデルや女優も『容姿以外の』何かに秀でていなければ稼げるようにはなりませんが、『容姿以外の』何が必要か、多少わかってくるのではないでしょうか」

「自分が容姿だけと気がつけたのはスゴイことです」

ただ、こうしたイヤミな意見はごく少数派で、「美人ということだけも長所なのに、とても謙虚なのね」と好意的に受けとめて、素直にアドバイスする意見が非常に多かった。

「自分が容姿だけと気がつけたのはスゴイことです。バカだとそれにあぐらかいちゃうからね。あの人はできるという人と仲良くなって、実際にどんなことを考えてやっているのか聞いてみるのもいいでしょうね。あなたがきれいなら、お友達になるのも簡単なのでは。こういう時に美貌は活用できる。がんばって!」
「何かに打ち込んで、国家資格を取るのはいかが。美人で資格があると強いと思います。気づかいなどは周りを見て、最初は真似するだけいいですが、繰り返すと身につきますよ。『人に優しく』『知識をつける』のはいかがでしょうか?」

容姿がよいこと自体、立派な取り柄だという意見も多かった。

「容姿がよいことは、交友関係も広がりますし、プラスにつながる武器だと思います。あなたは性格がよさそうです。『可愛い』というのも容姿だけのことではないのでは。そういう女性は、おばちゃんになっても『可愛い』ですよ。40を過ぎても『〇〇ちゃん』って呼ばれるアイドルになれます。お仕事は1年や2年でできるようにはならないので、落ち着いて頑張ってください」
「容姿が取り柄ってすごくよいことですよ。いくつになってもキレイな女性は優しくされます。みんながほめてくれるなら、可愛がられているのです。どんなにキレイでもイヤな人のことはほめません。そのまま素直でいなさい。普通に頑張ればいいのです。『可愛い』を維持してくださいね

「美貌を武器に使いなさい」

ところで、回答者の中には「自分も美人といわれている」、あるいは「若いころは目立った」という人が多くいた。その人たちのアドバイスは、体験に基づいており、「美貌を武器に使いなさい」などと非常に具体的だ。

「私もあなたと同じ。若さという武器がなくなった時に、ほかの何かを持っている人になっていなくては、と焦っていました。仕事で男性相手に契約を取れれば、『そりゃ、あなたはキレイだから』と言われ、私なりに頑張っているのにと不満でしたが、途中から開き直りました。容姿のよさだって立派な才能、使えるものはなんでも使え。私はもう立派なオバチャンですが、いまだに行く先々でチヤホヤされています。思ったより大丈夫みたいですよ。頑張ってください」
「私もかなり目立つほうでした。20代後半にそう言われることに気づき、悔しくて、中身を認められようと資格をとったり、語学をマスターしたり。人の嫌がる仕事もしたことが認められ、ヘッドハンティングされました。なのに、友人でさえ『あなたは見た目がいいから職に困らないのよ』と。アラフィフになった今は『魔性の女』だと...。最初は悔しかったけど、今はラッキーだったと思います。若い頃は人目を引くからと、対外的なイベントに多くかりだされました。それでいろいろな方に出会って勉強できたし経験できました。美人であることに甘えず、利用して成長してください」
「私も、よく『いつまでも見た目で勝負できると思うな』と言われ、人一倍仕事を頑張っていたのに悔しい思いをしてきました。なので、服やメイクを地味にした時期もありましたが、40過ぎても言われるので開き直りました。50過ぎた今は、ちやほやしてくる人にはちやほやさせています。それもコミュニケーションだから。具体的な仕事のアドバイスをするなら、目立たず守りに徹する、かな。何をしても『美人は得』って言われるから、目立つことはせず『ミスがない・欠点がない』ことを目指したほうがいいと思います」

かつては「職場の華」「寿退社」の言葉が女性を追い込んだ

J-CASTニュース会社ウォッチ編集部では、女性の働き方に詳しい、主婦に特化した就労支援サービスを展開するビースタイルの調査機関「しゅふJOB総研」の川上敬太郎所長に、この「顔だけが取り柄の私、仕事で認められるにはどうしたらいい?」論争の意見を求めた。

――今回の投稿と回答者たちのさまざまな意見を読んで、率直にどんな感想を持ちましたか。

川上敬太郎さん「ご自身が美人であることに悩むという、受け取り方によっては嫌味に映る可能性のある内容であるにもかかわらず、その悩みを肯定的に受け止めてアドバイスを送る方がたくさんいるというのは凄いことではないかと感じました。読み手に嫌な印象を与えずに、文章を通して悩みを伝えられるというのは、それ自体が特筆すべき能力だと思います。
一方で、投稿者さんは容姿端麗であることに悩みながら、仕事の頑張り方のアドバイスを求めています。容姿の話と仕事の頑張り方の話は、本来は無関係であるはずです。そこを結び付けてしまっていることで、返って問題がわかりづらくなっているように思いました」

――なるほど。投稿者に対するイヤミの回答が非常に少ないことが不思議でしたが、投稿者自身の素直な人柄を伝える「能力」が影響していたわけですね。そして、本来の問題点は、どうしたら仕事ができるようになるかだったのに、容姿の問題にすり替わってしまったというわけですね。
しかし、女性が仕事をするうえで男性と違う点には、容姿の問題が多少影響を与えることがあるのではないでしょうか。私が最近書いた記事では、男性はOKなのに、女性にメガネの着用を禁じる職場が非常に多いことも問題になっています。こうした働く女性と容姿の問題については、どのように考えますか?
※参考リンク:「マジかぁ~、女性のメガネ禁止の職場がこんなに多いなんて!『見栄えが悪い』『お客に失礼』って......」(J-CAST会社ウォッチ 2019年11月10日付)

川上さん「男性においてもイケメンという言葉がありますし、芸能人やホストのように、容姿のよさが直接的にプラスに働くと思われる職業があります。ただ、女性の場合は、職務上必ずしも必要でないと考えられる場面でも美しさを求められるケースがあるように感じることも事実です。よく女性に対し、『職場の華』のような表現をほめ言葉として使うことがありますが、それが返って女性を追い込んだり、レッテル貼りのようになったりするケースがあります。
また、ひと昔前までは『寿退社』という言葉があったように、女性に対して仕事能力ではなく、男性社員の結婚相手としての可愛らしさや美しさを求めるような風潮があったことも少なからず尾を引いているように感じます。
容姿と直接関係はありませんが、働く女性に『仕事がきっかけでダイエットに取り組んだことはありますか』と聞いて調査したことがあります。すると、『ある』と回答した人は20%いました。『接客業で周りのみんなが美しかったため、ダイエットしようと思った』と答えた人もいました。仕事シーンにおいて見た目を気にする人もいるとは思いますが、必ずしも見た目を絶対視している人が多数派というわけではないと感じます」

――回答者の中には、「自分も美人で目立った」という人がけっこう多く、「美貌を武器に使って仕事をしなさい」というアドバイスがあります。こうした意見については、どう思いますか。

川上さん「美貌に悩むのではなく、むしろ強みとして活かす道を考えてはどうかという意見だと思います。美貌をどう武器に使うかによっても変わってきますし、あくまで社会通念から逸脱しない範囲という話ですが、投稿者さん自身がそうしたい、と思うのであればそれも一つの考え方なのだと思います。ただ、投稿者さんは容姿しかほめられないことを悩んでいるので、美貌を武器にして何らかの成功を得たとしても、その悩みは解消されないでしょう」

「美人過ぎて悩むより、仕事のプロを目指しなさい」

――自分も美人だといわれたという回答者の中には、仕事で成果を出しても「美人は得」と揶揄されて悔しい思いをした人が多いです。銀座のママや優秀な保険セールスウーマンには美人が少ないという説もあります。また、「美人過ぎる市会議員」などが話題になり、「美人過ぎる」ことが返って仕事面でマイナスになるという見方もあります。ある意味、投稿者の悩みも「美人過ぎる」ことからきているのかもしれませんが、こうした見方についてはどう思いますか。

川上さん「その見方にはまったく同意できません。美人であることが成果に直結する仕事でない限り、『美人過ぎる人』に対する特別なアドバイスなどありません。
芸能界のアイドルのような職業であれば、プロとして歌やダンスの技能と共に美貌も磨くことをアドバイスすることはあると思います。それは、味が自慢の料理店がさらにおいしい料理を作ろうと努力するのと同じです。顧客が求めるものを提供し、さらに磨きをかけることはプロとして当然の姿勢だと考えます。しかし、美貌そのものが顧客に求められる職業はごく一部です」

――なるほど。最後に投稿者に川上さんなら、どうアドバイスしますか。また、今回の「働く女性と容姿の問題」について、とくに強調しておきたいことはありますか。

川上さん「まず、容姿以外に取り柄がないことと、仕事で頑張ることとは、まったく次元の異なる別の問題だと整理することを勧めます。美貌が成果に直結する仕事でない限り、仕事と容姿はまったく関係ありません。
確かに容姿端麗であれば仕事上得することはあるかもしれません。しかし、それは頭の回転が速かったり、愛嬌があったり、たまたま顧客と地元が一緒だったり、といったことと同じで、プラスアルファの要素でしかありません。
仕事で認められたいのであれば、真っ先に行うべきは、今携わっている職務で出すべき成果は何かを確認することです。成果とは、いつまでに何をどのレベルで完成させるかです。成果は仕事におけるゴールです。目指すべき成果が確認出来たら、その成果を出すために何をしなければならないのかを明確にし、それを実行し、やりきることです。要するに仕事のプロを目指せということです。
一方、容姿以外に取り柄がない点については、ご自身にどんな取り柄があるのかを周囲の人に聞いてみてはいかがでしょうか。きっとご自身で気づいていない長所がたくさんあるはずです。少なくとも、今回の投稿で優れた文章力を持っていることを証明しています。容姿は端麗か否かに関わらずその人の個性の一つです。他人からどのように評価されようとも、投稿者さん自身のありのままを大切にしていただきたいと思います」

(福田和郎)

美人過ぎる悩みって……(写真はイメージ)