ドイツ発コラム】マインツに1-2逆転負けのフランクフルト、退場者を出し鎌田が1トップにシフト

 フランクフルトの日本代表MF鎌田大地は、UEFAヨーロッパリーグ(EL)グループステージ第5節アーセナル戦(2-1)で見事な2ゴールを挙げて、チームの逆転勝利の立役者となった。そして中2日で迎えた現地時間2日のブンデスリーガ第13節マインツ戦(1-2)では、2トップの一角としてスタメン出場を果たしている。

「前半すごい僕自身は良かったと思うし、いい入り方ができて、いい得点の奪い方もできた」と振り返るように、流れは完全にフランクフルトがつかんでいた。鎌田は前線にとどまらず、中盤のスペースに好タイミングで何度も下がってきては味方からボールを引き出し、攻撃のリズムを作り出す。シンプルにサイドにはたいたり、鋭いターンで前に持ち上がったりと起点になるプレーを次々に見せ、好調ぶりを感じさせた。

 特に素晴らしかったのが、前半37分のプレーだ。中盤センターでボールをコントロールすると、すぐにターンをしてドリブルで右サイドに運んでいく。そして相手守備の意識が自分に集中してきた瞬間を見逃さずに、身体は右サイドを向いたまま逆サイドを上がってきていたMFフィリップ・コスティッチにサイドチェンジパスをピタリと送ってみせる。惜しくもシュートチャンスまでは持ち込めなかったが、高難度のプレーにアウェーまで駆け付けていたフランクフルトサポーターからは歓声がひときわ上がっていた。

 前半33分に生まれたDFマルティン・ヒンターエッガーのゴールでリードしていたフランクフルトは、「1-0で勝っていて、チームとしては余裕もあったし、上手くカウンターだったりもハマっていた」が、同44分にこの試合でマインツが初めて見せた鋭いカウンターから流れが変わってしまう。フリーで抜け出そうとしたマインツMFレビン・エズトゥナリをMFドミニク・コールがファウルで止めたが、決定機阻止の判定で一発退場に。

 1人少なくなったことを受けてアディ・ヒュッター監督は、後半から鎌田を1トップの位置で起用。ただ本職ではないポジションだけに、なかなか良い形でボールも入らず、複数の相手選手に囲まれるシーンも多かった。

 後半立ち上がりに連続失点を喫してしまったフランクフルトはその後、数的不利ながら懸命に攻め続けたがスコアは変わらず、もったいない負け方をしてしまった。

スピード感やフィジカルというのが、こっちの選手に比べたらない」

「前半、僕自身フリーマンという形でやっていて、上手くボールを今日は収められていたし、カウンターの起点になったりしていたので、たぶんそのまま監督も僕を使いましたけど。やっぱり僕は1トップをするにあたって、スピード感だったり、フィジカルというのがこっちの選手に比べたらない。カウンターで1人で仕掛けきるだったり、そういうのがなかなかない」

 鎌田は試合後、後半のプレーについてそのように分析していた。確かに得意とするプレーを出すのは、ポジションとしても、試合の流れとしても難しくなっていた。それでも前線で休むことなく守備をし続け、相手守備の隙を突いてパスを呼び込み、タメを作り、味方の攻め上がりを引き出していた点は評価される。だからこそヒュッター監督も、最後まで鎌田をその位置で起用し続けたのだろう。

 悔やまれるのは、終了間際にペナルティーエリア直前でパスを受けたが、シュートまで持ち込めなかった場面だ。右足に持ち直そうと切り返したところで、相手DFの守備に引っかかってしまった。

「ワンタッチであれはシュートを打たなきゃダメだったかなと思います。僕のイメージは、もうちょっとフィリップ(コスティッチ)がね、上手く縦に切り込んでマイナス(のパス)というイメージだったんですけど、思ったより早くボールが来て、ちょっと周りの状況が把握できていなかった」

 リーグ戦ではこれで3連敗。さらに6日のヘルタ・ベルリン戦にも2-2で引き分け、中位に沈んでいる。EL、DFBポカールと3つの大会での過密日程が続いており、前線はFWバス・ドストが負傷でこの日欠場。FWアンドレシウバも負傷明けで、コンディションが良好とは言えない。FWゴンサロ・パシエンシアは開幕から休みなくプレーを続けている。それだけに「今日のプレー自体は、前半はフィーリングがすごく良かった。しっかり引き続き、いいプレーを維持していけたらいいなと思います」と、好コンディションをキープしている鎌田がいることが、チームにとっても再浮上への重要なポイントになるはずだ。(中野吉之伴 / Kichinosuke Nakano)

フランクフルトの日本代表MF鎌田大地【写真:Getty Images】