国内初陣となった11月17日U-2コロンビア戦で完敗(0-2)を喫したU-2サッカー日本代表。この世代で慣れ親しんだ背番号7をまとった・堂安 律(どうあん・りつ)は、少ないチャンスを生かして決定機を演出するなど存在感を発揮したが、チームを勝利に導くことはできなかった。

「試合後に危機感や焦りがどんどん募ってきた」と語るエースが、『週刊プレイボーイ』で隔週連載中のコラム『堂安律の最深部』で、悩める胸中を告白する――。

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■東京五輪で勝ちたいから本音を言わせてもらう

U-2コロンビア戦の後、メディアに対してはものすごくオブラートに包んだ発言をしました。かなり優しく、ツッコミどころがないように話したけど、試合が終わってから、危機感や焦りがどんどん募ってきて......。

こうなったら誰にどう思われてもいい。東京五輪で勝ちたいから、本音を言わせてもらいますよ。チームのみんなと直接会う機会があまりないからこそ、俺がどんな気持ちで、何を考えているのか知ってほしい。

まず、あの試合に関しては、チケットを買って見に来てくれた人に申し訳ない気持ちしかないですね。盛り上がるシーンが少なかったし、ゴールというサッカーの醍醐味(だいごみ)を見せられなかった。

それができなくても、最低限やらなきゃいけない球際のデュエルもできてなかった。抜かれたらイエローカードをもらってもいいから引っ張って止めるとか、それがいいか悪いかは別として、そういう気持ちを見せたかったですね。

何かカッコつけてサッカーをしているように見えたんですよね。何をそんなにきれいにやろうとしているんやと。勝つために泥をかぶってでもやるという姿勢を見せられなかったのがほんまに残念でならない。

別に上から目線で言ってるんじゃなくて、俺含めた全員に「それでいいのか?」と問いたい。そういう気持ちを持てないやつはこのチームから去ったほうがいい。

もしかしたら東京五輪までに唯一集まれる機会だったかもしれないのに......。そう考えると、もう後悔しかないですね。今それを感じている自分が情けない。

「次集まるときに言おう」と思っても、現実的に考えて大会直前になるかもしれない。「今回もっとちゃんとしておけばよかった。クソッ!」と思って逆算するやつが何人いるのか。俺が合流するかしないかはおいといて、ただでさえ集まる機会は多くないんやから。あと8ヵ月ですよ。「時間がない」と焦ったら、もっと深く深く掘り返して考えていく必要がある。

試合後、みんなには「失敗はしょうがない。上を向いていこう。ポジティブにやろう」と伝えたけど、そうじゃなくて、もっと活を入れるべきやったと思う。

どこかで俺も「嫌われたくない」と思っていたのかもしれない。合流前から「嫌われてもいい」と言ってきたし、実際に合流直後、練習中、試合前、ハーフタイム、試合後にはかなり強めに発言したし、行動にも移したつもりです。

練習中は「俺に話しかけるな」という雰囲気を出して、何か感じ取ってくれることを期待しました。でも中途半端で甘かった。もっと言い切らないと伝わらないんやなと。

もしかしたら試合前日に選手だけでミーティングを開いたほうがよかったかもしれない。もしかしたら0-0のまま前半が終わった段階で怒鳴ったほうがよかったかもしれない。もしかしたら試合後に監督が叫ぶんじゃなくて、誰かと胸ぐらをつかみ合うケンカをしたほうがよかったかもしれない。ほんまに後悔しかない、無駄でもったいない90分でした。

■こんなにチームのことを考えて悩んだのは初めて

飛躍を遂げた2017年のU-20W杯以来、約2年半ぶりの世代別代表選出となった
飛躍を遂げた2017年のU-20W杯以来、約2年半ぶりの世代別代表選出となった

チームの勝利や東京五輪優勝ということを考えて行動したやつが何人いたのか。自分がよければそれでいいのか。メンバーに選ばれるのがゴールじゃないのに。俺らはそこで優勝しなきゃいけないんやから......。もっともっと突き詰めて考えなくちゃいけないと思い知らされました。

こんなにチームのことを考えて悩んだのは初めて。正直、アジア杯で負けたときのほうが落ち込んだけど、あのときは個人の問題だったから自分がなんとかするだけだった。でも、今回はチームの問題やから。周りが変わらなきゃ意味がないというのが難しいところで。

なんで俺がここまで言うかというと、ただただ勝ちたいから。ほんまに東京五輪で優勝したいだけなんですよ。メディアには「リーダーの自覚」とか「自国開催のプレッシャー」とか言われたりするけど、別にそんなんじゃない。

ほんまに優勝したかったら、たとえベンチにいてもこういうことを考えると思う。このままやったら勝てないんやから、必死に考えて行動するしかないでしょ。優勝したかったらやりますよ、普通。

よく勘違いされるから訂正しておきますけど、俺はカッコつけて「優勝が目標」って言ってるわけじゃない。本気で優勝するチャンスだと思ってるんで、東京五輪は。

その一方で簡単じゃないこともわかってるから、そのためにいろいろ突き詰めようと思ってます。自分が全部正解とは思ってないけど、周りに嫌われてもいいから、自分が考えていることや思っていることははっきり言わないといけないのかなと感じています。

■居残りシュート練習で 感じた「甘さ」

戦術やシステムのことを言う人もいますけど、正直そんなの後づけでもいい。日本には素晴らしい技術と才能を持った選手がほんまに多いので、うまくやれると思う。

今はそれ以前の問題やから。練習の雰囲気とかピッチ外の過ごし方とかを見ても、まだ優勝を狙える集団ではないんで。

いいチームの練習って、めちゃくちゃピリピリしていて集中してるけど、ふと笑いが起きたりするんですよね。いい意味でリラックスというか、緊張の糸がピンと張り詰めた状態から雰囲気が和らぐことがある。でも、このチームは最初からだらだらと練習に入って、ふわっとした感じでふざけて笑う。

個人的には、練習でクオリティを見せようと思って、自分に相当プレッシャーをかけて追い込みました。「おまえは絶対ミスしたらあかんぞ」「おまえが一番パススピード速くないとあかんぞ」と言い聞かせながら。自分との戦いなんで、今までにないくらい充実した練習にはなったけど、チーム全体の雰囲気を変えられなかったら意味がない。

全体練習後の居残りシュート練習もどんなモチベーションでやっているのかわからない。「残り5本打ったほうが次の試合でフィーリングがいいからやろう」と思うのか、「みんな残ってるから俺も打っておこう」と思うのか。

自分の感覚で判断できないのはプロとしておかしいですよ。「もうちょっと打たせてもらっていいですか。絶対によくなるので」となぜ言えへんのか。居残りのシュート練習なんて、自分のフィーリングがよかったら上がっていいと思うんですよ。でも誰かが終わるのを待っていたりする。結局、そういう他人任せなところがこの間の試合でも出たんやと思う。

もっと自分の頭を使って判断したり、行動したりしないと。誰かが自分をつくり上げてくれると思ってるなら甘すぎるし、大間違い。自分で自分をつくらなあかんのに、誰かが自分をのし上げてくれると思うなと言いたい。全員が一選手として自立しないと先はないですよ。

■「4人目のオーバーエイジ」として

欧州組8人を招集するなど、ケガ人を除いてほぼベストメンバーだった
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プロである以上、常にサッカー中心で行動すべきだし、そのためにピッチ外での時間の使い方も頭を使って考えるべきだと俺は思う。

例えば、今回の合宿で「午前休み、午後練習」の日があったけど、午前中をどうやって過ごすかはそれぞれの選手の判断に委ねられている。

俺は去年、(長友)佑都君から「1部練で終わるなんて、俺の人生ではもうないよ」と言われて衝撃を受けた。佑都君は「俊さん(中村俊輔)に教わった」と言ってたけど、たとえ全体練習がなくてもジムで体を動かすことの大切さに気づかされた。だから今回もスタッフに確認して、午前中にジムへ行った。

もちろん、体を休ませることも大事だけど、「試合に向けた準備として何がベストなのか」を状況に応じて判断するべきだと思う。

それぞれの選手が何を考え、どう過ごしたのか。休みと言われてるから、何も考えずに部屋で過ごした人もいたかもしれない。いろいろな選択肢の中から考えた上で選んだならいいけど、そうじゃないなら、もっと意識できることがあると思う。

森保監督から熱い信頼を受ける堂安は「4人目のオーバーエイジ」を自覚する
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自分のプレーに関して言うと、もっと周りに安心感を与えられるような存在にならないといけないなと感じましたね。後半途中からトップ下に入って、そんなことを意識してました。

それこそ、「4人目のオーバーエイジ」のようなメンタルでどしっと構えようと。「律がいるから何をしても大丈夫」と味方をポジティブな気持ちにさせられる存在になれたら最高やし、そうならないといけない。

直接会って話したり、一緒にプレーしたりする機会が本番直前までほとんどないのがもどかしいけど、それでも、今この瞬間から変われるから。

これだけショッキングな負け方をしたんやから、あとは前を向いて堂々と開き直るしかない。メディアに対して、「ここで負けたからといって金メダルを諦めるつもりはない」と言ったけど、卑屈になったらダサいでしょ。もうやるしかないから、ほんまに。そういう気持ちは持っていてほしいな、みんなにも。

●堂安 律(どうあん・りつ) 
1998年6月16日生まれ、兵庫県尼崎市出身。ガンバ大阪、FCフローニンゲンを経て、今夏にPSVアイントホーフェンへ移籍。昨シーズンはリーグ戦32試合に出場して5得点を記録。昨年9月、満を持して日本代表デビューを飾った。PSVでは「25」、日本代表では「21」を背負う

撮影/中島大介 写真/アフロ

東京五輪に向けて本音で語る堂安