- 太陽は表面温度に対して、はるか上空の大気層であるコロナの方が100倍以上も温度が高い
- 熱源から離れるほど逆に熱くなる超高温のコロナは、60年以上に渡って太陽の謎の1つとなっている
- 新しい研究は、コロナ外層で太陽の電磁波が反射し空洞共振を起こしている事実を観測した
太陽の表面温度は約6000℃ですが、これに対して、表面から2000キロメートル上空の大気層コロナは100万℃以上という極端な高温になっています。
通常の認識で言えば熱源に近いほど熱く、熱源から離れれば低温になります。なのに太陽はなぜかそれとは逆のことが起こっているのです。
なんで太陽は離れるほど熱くなってしまうのでしょうか? これは長い間、天文学者たちの謎となっていました。
新たな研究では、太陽大気の元素ごとの挙動を観測し、太陽を取り巻く電磁波の波動がコロナ外層で反射され、音響共振のような状態を形成していることを発見しました。
これが太陽から離れたコロナが、極端に高熱となる原因の可能性があります。
この研究は、北アイルランドのクイーンズ大学ベルファストの科学者を筆頭とした国際研究者チームにより発表され、天文学の科学雑誌『Nature Astronomy』に12月2日付けで掲載されています。
https://www.nature.com/articles/s41550-019-0945-2
太陽のコロナはなぜ熱いのか?
太陽コロナが表面より熱いという理由については、これまで2つの説がありました。
1つは太陽表面の爆発が上空を熱しているというものです。太陽表面では「フレア」と呼ばれる大爆発が起きています。
フレアはそこまで頻繁に発生するものではありませんが、より小規模な「ナノフレア」と呼ばれる爆発はたくさん起きています。これがエネルギー源となってコロナを加熱していると考えられるのです。
2つ目の説は、磁力線が太陽表面の対流によって揺さぶられ、磁力線に波が発生しているというものです。
この磁力線の波がコロナまでエネルギーを伝えることで、離れたコロナが加熱されると考えられるのです。
新しい事実 電磁波の共振
今回の研究チームは、ニューメキシコ州にあるDunn Solar Telescope(DST)という望遠鏡の高解像度の観測を利用して、太陽の波動の研究を行いました。
ここでは、太陽光を基本色に分解し、太陽表面に近くに形成されるシリコン、カルシウム、そして彩層(コロナの内側ある薄いガスの層)のヘリウムなど、太陽大気に含まれる元素の挙動を調べました。
すると元素の違いによって、太陽プラズマの速度の違いが明らかになり、そこから太陽の放つ電磁波の周波数をふるい分けることが可能になったのです。
これはオーケストラのような様々な楽器の合わさった音から、それぞれの楽器の音を選り分け分解する方法に似ています。
こうして得られたデータをスーパーコンピューターを用いたシミュレーションによって解析したところ、電磁波の増幅プロセスが明らかになったのです。
それによると、コロナ外層で部分的に波を反射する境界が形成されていて、それが波を補足し音響共振器のような状態を生み出していることがわかったのです。
この状態はアコースティックギターの原理などを考えると理解しやすくなります。ギターは中が空洞になっていて、そこで音波が共振されることで大きな音色を放ちます。
太陽のコロナ外層では、この様な電磁波が補足される状態が生まれていて、これが波の強度を劇的に増大させていたのでうす。
この新しい研究は、太陽の電磁波に関する新たな理解の扉を開くものだと考えられています。こうした原理が、熱源となる太陽表面からはるかに離れたコロナを高熱にする原因と考えられるのです。
これはコロナ加熱を理解するための重要なステップの1つだと、研究者たちは語っています。
ただ、まだ全ての理由が解明されているわけではありません。なぜそんな状態が生まれるのか、詳細はこれから解明されていくのでしょう。
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